よろづや
荒川区の東尾久に「よろづや」というお好み焼屋さんがある。とあるメニューがこの店にあるのを口コミサイトで発見し、それを食べてみたくて訪問してみた。
最寄り駅は日暮里舎人ライナーの熊野前駅。徒歩で5分ほどの住宅街に店舗はある。店内は鉄板台が8卓ほど。玄関先で靴を脱ぎ、板間の椅子に腰掛ける。先客が2組ほどいて、賑わっていた。
この日はこの店の常連である、メシコレ仲間のbraxさんに予約をお願いした。実は件の口コミを投稿したのがbraxさんだったのだ。他にも塩見なゆさん、ぼさのばさんという懐かしい方々も呼んでみた。
さらに先日、足利ツアーへ参加してくださったシュウマイ潤さんもお越しくださった。みんな揃ったところで乾杯。写真は最後の方に撮ったやつ。
メニューはもんじゃやお好み焼きが中心。いろいろ個性的な品もあるが、まずは無難な前菜をつまんで挨拶を済ます。
ちなみにお店はご夫妻二人で営んでいる。明るいキャラのママと、誠実そうな旦那さん。お店を始めたのはママのお母さんとのこと。
うずら醤油漬け(500円)やえのきバター(250円)に続けていただいたのはスタミナポテト(600円)。にんにくバターでポテトを焼いたもの。いくらでもいけそう。
上ホルモン(800円)。こちらはお店の方で焼いてくれた。ぷりぷり・コリコリ。焦げた脂身が旨い。
続いてソース焼きそば(600円)。メニューでは締めに分類されているが、酔う前に食べて置きたいので、早めに注文してみた。これも調理はお店の方にお願いした。
麺は細めの蒸し麺。あらかじめ調理された豚ひき肉の他、キャベツ・モヤシ・人参・ピーマンを炒めてある。紅生姜と鰹節はテーブル脇から足してみた。
食べてみると見た目の通り、万人受けする、王道的な味わいのソース焼きそばだ。熱で酸味を飛ばしたソースがストレート気味の麺に馴染んで、素直に美味い。
そして目的の品、もちチーズしゅうまい(600円)。細長く切った餅を使った「シウマイ」「シュウマイ」は、戦前のお好み焼き屋では定番メニューだった。この店では今のママさんのお母さん=先代・創業者が、チーズ入りのアレンジ版を考案したそうだ。
まずひき肉と玉ねぎを塩コショウで炒める。どちらも中華料理の「焼売(シュウマイ)」で使われる食材だ。火が通ったら、細長い餅を四角く並べ、その中心に肉・玉ねぎを置く。
生地を少しだけ残して注ぎ、チーズで覆い、残った生地を垂らす。このまましばらく待ち、火が通った頃合いを見てひっくり返す。生地がしっかり焼けたところで醤油を掛けて出来上がり。コテで4つに切り分けていただいた。チーズと餅、醤油が相まって、なかなか乙な味だ。
「これのどこがシュウマイなの?」と思われるだろうが、これがお好み焼きの「シュウマイ」なのだ。拙著『焼きそばの歴史』で詳述したが、ソース焼きそばも餅を使った「シュウマイ」も、お好み焼きの一種であり、ともに中華料理のパロディだった。ソース焼きそばから見れば、生き別れの兄弟のようなものだ。
浅草・染太郎や野毛・みかさなどには「しゅうまい」が現存しているが、生きた化石とも呼ぶべき幻の品である。それが東尾久の「よろづや」にも存在した。既知の2店を紹介したシュウマイ潤さんにお越しいただいたのは、これが理由である。曳舟・美好本店に残る「かに玉」と同様、令和まで伝えてくださったお店に感謝したい。
宴はさらに続く。せっかくの大人数なので高いものをと、この店で最も高価な仙台牛ステーキ(2,000円)を注文。霜降りで分厚いお肉を見せてから調理してくださった。
レア気味な赤い芯を残して、両面をカリッと焼き上げたステーキは、お値段以上の美味しさだ。安いのは嬉しいけど、ちゃんと利益が出ているのか、心配になってしまう。
続いて、カマンベールもんじゃ(1,300円)。実はこちらへは2017年にもbraxさんに連れられて訪れたことがあった。荒川都電バルという企画で、3件目なのでほとんど記憶にないのだが、その時の写真にもカマンベールもんじゃが残っていた。
ぼさのばさんがもんじゃを作ってくださり、その真中にカマンベールチーズの塊を置く。この先にどう焼いて食べるかは好みだが、今回は刻んでもんじゃに混ぜ込むことにした。
チーズ混じりのもんじゃが良い感じで焦げてくれる。ハガシでその濃厚な味を楽しんだ。言い忘れたが、酒は都度都度お代わりし、焼酎のボトルも一本空けている。
ここでちょっとデザートめいたものが食べたくなり、あんチーズ巻(600円)を注文。これはママさんに焼いてもらった。お好み焼きの生地を四角く伸ばし、ピザ用のチーズを散りばめて、端にあんこを一列に並べる。
あんこ側からコテでくるくると巻き、一口大に切り分ける。適当に鉄板で焼いたら出来上がりだ。
あんこの甘さとチーズの塩っぱさのバランスが良い。個人的には大当たり。ここで気がついたが、今日はチーズが多いな。
もう少し飲みたいという人もいたので、いぶりがっこチーズ(400円)を追加。先日、東武練馬の焼麺・六三本店でも食べた定番おつまみ。チーズ三昧の夜を締めくくるに相応しい一品だ。
最後に旦那さんがミルで挽いたばかりの豆で、アイスコーヒーを淹れてくださった。アルコールで疲れた胃に滲みる美味しさだ。
19時から23時まで飲んで、お会計は一人4000円ちょっと。個性的で飲食の知識に溢れたメンバーの、とても楽しい会だった。それにしてもあれだけ飲んで食べて、このお値段は安いなあ。大きなお世話かもしれませんけど、幻のメニューを次世代に残すためにも、ちゃんと儲けてくださいね。
店舗情報 | 住所: 東京都荒川区東尾久3-19-1 営業時間: 17:00~23:00 定休日: 水曜(不定休)・木曜(定休) → ホームページ |
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主なメニュー | ソース焼きそば 600円 もちチーズしゅうまい 600円 |
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