じゅん
愛媛の松山と言えば道後温泉。私が松山を訪れたのは3回目だが、この日も夕方から道後温泉本館へとお邪魔した。『坊ちゃん』に想いを馳せつつ入浴した後は、これまた松山名物の路面電車を使って繁華街・大街道へと移動。目的の店、じゅんに到着したのは19時半のことだった。詳しくは後述するが、「かめそば」と呼ばれる焼きそばが看板メニューの居酒屋である。
季節は四月中旬で、この日は金曜日。先客数組。カウンターに腰掛けて、店主ご夫妻に生ビールを注文。その直後、壁に貼られていた「得々セット」1000円の存在に気付いた。飲み物+豆腐(ハーフ)+おでん+かめそば(ハーフよりちょっと多め)のセットで、飲み物によっておでんの点数が変わるという。お得だ。改めてそのセットを注文しなおした。
出されたおでんは豆腐と大根。生ビールをぐびりとやりつつ、それらをつついていると、カウンター右手奥の方で店主が中華鍋を振るって、かめそばを作り始めた。
ここで、店主に教えて貰ったかめそばの由来を紹介しよう。
「昭和20年代中頃から松山に『かめ』という飲み屋というか飯屋というか、そういう店があった。そこの焼きそばが美味くて、みな『おい、かめの焼きそば食いに行こう』『かめのそば食いに行こう』『かめそば食おう』と、いつしか略称で呼ばれるようになった。そこの店主が亡くなって平成5年に閉店。その後、ただのお客さんだった自分が、かめのオーナーの家に通ってかめそばの作り方を教わった」
じゅん店主は元警察官で、定年退職後、3年前にお店を始めたそうだ。聞けばかめのオーナーから貰った認定証もあるらしい。「かめ風焼きそば」を出す店は他にもあるらしいが、お墨付きを貰ってるのはこの店だけだとか。
さて、そのかめそば。麺は固く、富士宮焼きそばに似た食感だが、味付けはまるで違う。醤油煎餅のような風味を感じたが何とも不思議な味だ。店主に言わせると下ごしらえが本当に複雑とのこと。具はキャベツが僅かに紛れている程度で、さらに表には出ないが玉ねぎも使われているらしい。たっぷりのアジ節と干しジャコがトッピングされているのも大きな特徴だ。
おかみさんからは「端っこに少しソースを掛けると、また違った味わいになりますよ」とのアドバイス。いやあ、これは美味い。本当に美味い。他の地域には全く無い味だ。地元民に愛されている味をそのまま継承していることは、本当に喜ばしい。
飲んでる間にも引っ切り無しに客が来て、電話で注文しておいたかめそばを持ち帰る。「普通の焼きそばは冷めると味が落ちちゃうけど、うちのは冷めても美味しいんだよ」とは店主の弁。あまりに美味しくて、締めにもう一杯お代わりをいただいてしまった。
隣に座っていた駄洒落好きの常連さんとも仲良くなって、ビールを一杯ご馳走してもらった。「ここのスープかめそばは俺が最初に試食したんだよー」と薦められたので、今度はそれも食べてみたい。この日のお会計は2600円也。
ちなみにこの訪問から一月半ほど後、全国ネットのTV番組でこのお店とかめそばが紹介されたようだ。それを観た方も多いかも知れないが、松山へ赴く際は一度賞味して欲しい。
2015年7月下旬に再訪。やっぱり美味しい。これまでに700軒あまり焼きそばを食べて来たが、個人的な味の好みではこの店のかめそばが一番好きだ。また食べたいなー。
2015.10.08 「かめ」の営業期間に関する記述や、「花鰹」→「アジ節」などの記述を訂正しました。
店舗情報 | TEL:089-921-0332 住所:愛媛県松山市二番町1-4-11 営業時間:18:00~23:00 定休日:日曜・祝日 → ホームページ |
---|---|
主なメニュー | かめそば 600円 おでん 1品 100円~ 豆腐おでん 300円 得々セット(飲み物+かめそばハーフ+豆腐おでんハーフ+おでんおまかせ) 1000円 |
ディスカッション
ピンバック & トラックバック一覧
[…] http://yakitan.info/archives/jun […]