新和楼

2018年12月15日

※長崎皿うどんに興味のある方は、長文コラム『長崎皿うどんの歴史的考察』もぜひご一読ください。


夜の長崎新地中華街も趣がある。ライトアップされた玄武門。川面に光を落とす銅座川。路上の人通りは減って昼より静かになったが、飲食店のガラスの向こうは夕食を楽しむ人達で賑わっている。

長崎新地中華街 夜の風景

新地中華街はちょうど田んぼの「田」の字のような区画になっている。その中央の辻に店を構えるのが、昭和3年(1928年)創業の新和楼だ。前回紹介した会楽園を訪れたのと同じ日、日曜の夜19時半くらいに訪れてみた。

昭和3年創業 新和楼

入り口に立てられた衝立の向こうにはテーブルが並んでいた。二階には団体客がいるようだが、一階は自分ひとりだ。手近な席へと促されて着席し、メニューを開く。

新和楼 メニュー

皿うどんは細麺しか載っていない。Rettyの2015年の口コミ投稿だと、メニュー写真に太麺(表記は「大麺」)もあるのだが載せるのを止めたのだろうか。漢字表記は「長崎炸麺」。そして英語表記が「Chop Suey Fried Noodles」。おまけにチャンポンも「Chop Suey Soup Noodles」。どちらも「Chop Suey」(チャプスイ)だ。興味深い。

ソースのボトルにも英語表記

おっと、2品のメニューを眺めて考え込んでもいられない。皿うどん(細麺/830円)と生ビールを注文。生ビールはすぐに運ばれてきた。サッポロのジョッキを傾け、グビリと一口。テーブルのソースのボトルにも「Worcestershire Sauce」の英語表記。海外からの来日客が多いんだろう。

ソースのボトルにも英語表記

この日の午後は長崎市立図書館に籠もって、郷土関連本の書棚をずっと漁っていた。成果は『長崎皿うどんの歴史的考察』にまとめたが、その中でアメリカ式中華料理「チャプスイ」も取り上げている。その辺を考えての旅だったのでメニューの漢字表記・英語表記にもいちいち考え込んでしまうのだ。

皿うどん(細麺) 830円

ビールから3分ほどで皿うどんが運ばれてきた。大きなお皿にたっぷり餡。具は豚肉・エビ・イカ・アサリ・紅白はんぺん・竹輪・キャベツ・モヤシ・玉ねぎ・キクラゲ。味付けは……おー、甘い。昼に食べた会楽園よりも甘いぞ。なるほど、これが本場長崎の皿うどんか。出汁はあっさり。豚骨を使わず鶏だけなのかな。

ストレート気味の極細揚げ麺

麺は極細の揚げ麺。こちらは真っ直ぐなストレート気味の状態を保って揚げられていた。揚げる時間も短めなのか色が明るい。パキパキ折れる前に少し粘るくらいの微妙な弾性がある。ストレートな点を除けば、葛西の宝来軒で食べた皿うどんの麺にちょっと似ている。

ウスターソースが調和をもたらす

そして定番のウスターソース。あの突出した甘さがすーっと顔を引っ込めて、皿の上に調和がもたらされる。

あとで調べてみたら、とあるTV番組でバナナマンの日村さんがこの店を訪れたらしい。皿うどんにソースを掛けて食べたところ、「すっごい美味いもんじゃ食ってる感じ」という感想を述べたとか。なるほど、トロみとソースと麺で「そばもんじゃっ」ぽくもある。

客が好みで掛けるソースで完成するってのが本場流の長崎皿うどん。前後して新地で創業したはずの会楽園と比べると、あっさり加減や甘さ、麺の揚げ方も異なる。こうして食べ比べてみると店ごとに個性もあり、色々発見があって面白い。

店舗情報TEL: 095-822-3016
住所: 長崎県長崎市新地町11-18
営業時間: 11:00~15:00, 17:00~21:00
定休日: 不定休
ホームページ
主なメニューちゃんぽん 830円
皿うどん(細麺) 830円