ペナンレストラン

前回、荻窪の馬来風光美食で食べたクアラルンプール式ホッケンミーに続いて、同じくマレーシアのチャー・クイ・ティアオとペナン式ホッケンミーを紹介しよう。

マレーシア北部、マラッカ海峡に浮かぶペナン島。大航海時代から海路の要衝として栄えてきた町だ。そのペナンの料理を提供する店が東京の芝にある。店名はペナン・レストラン。うん、そのまんまの屋号でとてもわかりやすい。

芝 マレーシア料理 ペナンレストラン

5月下旬、平日の11時半くらいに訪問。どの駅からも微妙に遠いオフィス街に目的の店舗はあった。南国っぽい手作り感溢れるファサードだ。フロアは半地下になっている。4人掛けのテーブルが3卓、2人掛けが2卓。小上がりも2卓ある。厨房はシェフと奥さんの男女2人体制。まだランチには早い時間帯で先客は一人しかいなかった。

ペナンレストラン 店内の様子

ランチメニューは6種類ある。今回の目的は、その筆頭に掲げられているチャー・クイ・ティアオ(炒粿條/Char Kway Teow)だ。平たいライスヌードルを使った焼きそばで、頭文字を取って「CKT」と略されることもあるらしい。レギュラーメニューは870円だが、ランチだとスープとデザートがついて840円とお得なのだ。メニューにはペナン式のホッケンミーもあり、それも後日食べたので最後に紹介しよう。

ペナンレストラン ランチメニュー

チャー・クイ・ティアオはマレーシアだけでなくシンガポールやインドネシアでも食べられている品だが、ここのメニューには「ペナン島発祥の麺料理」と書いてある。注文する際、「ペナン島発祥なんですか?」と店主に訊いたら、「はい、そうです」と深く頷いていた。実際、ここここなどWEBで調べてみてもペナンが発祥というのはかなり確かなようだ。一度現地で食べてみたいなあ。

注文からたっぷり20分ほど経って、ようやくチャー・クイ・ティアオとスープ・デザートの乗ったお盆が運ばれてきた。麺を茹でてから炒めるために時間が掛かるのだろう。現地ならごく普通のペースなんだろうけど、東京でのランチタイムのピーク時が心配になってしまった。あとから来た客三人は手間が一度で済むようにまとめて同じものを頼んでたけど、その辺は見習いたいな。

チャークイティアオ(ランチ) 840円

さて、チャー・クイ・ティアオ。前述の通り、麺はクイティアオ(粿條)と呼ばれる平たいライスヌードル。感じだと「炒粿條」と書く。当ブログでも何度か登場したが、広東の河粉やベトナムのフォーと同じ由来の食材だ。具はエビ、玉子、モヤシが使われていた。クイティアオは念入りに炒められて、ほどよく水分が飛んでいる。一本一本がとても短く、他の麺や具とくっついてダマになっており、普通の麺のようにすすることはできない。自分も最初はフォークで食べたが、後からスプーンに切り替えた。

クイティアオ(粿條)と呼ばれる平たいライスヌードル

味付けは醤油(ソイソース)がベースでチリも使われている。発酵エビペースト=ブラチャンか、オイスターソースか、旨味も十分。本来はラードを使うらしく動物性由来のコクを感じる。なかなかスパイシーで、クイティアオのモッサリした食感ともあいまって、スリランカ料理のコット・ロティを思い出した。アフリカ方面からスリランカを経てマラッカ海峡に至る航路を、この料理もきっと行き来したに違いない。

ダマになっているのもまた味わい深い

それと玉子の旨味がとても良い仕事をしている。東南アジア系の店でスクランブルエッグの入った焼きそばを食べるたびに、玉子の使い方に感心させられる。プリッと弾けるような肉質のエビも、シャキシャキもモヤシも欠かせない要素だ。構成要素はかなりシンプルなはずなのに、最後まで食べ飽きない完成度の高さに唸ってしまった。

デザートのミカンゼリーも美味

付け合せのスープは何の出汁だろう。ごくあっさりで、もしかしたら野菜と塩しか使っていないかも知れない。デザートはミカンのゼリー。ミカン自体は缶詰を使っているんだろうけど、器がこの店のものなので自家製なんだろうなあ。冷たくて美味しい。

ボリュームは割と軽めだが、油脂分が多いのでカロリーは足りてそうだ。メニューの裏に『「セダップ!(Sedap)」はマレー語で「おいしい!」という意味』と書いてあった。お会計の際に伝えてみる。

「おいしかったです、セダップ!」
「テレマカシー(terima kasih)、ありがとうございます(ニコニコ)」

そして後日、夜に再訪。タウゲ・イカンビリス(煮干しと干しエビを使った辛口のもやし炒め)やカレーパフ(マレーシア風揚げ餃子)で飲んだあと、〆にペナン式ホッケンミーをいただいた。

ペナンスタイルホッケンミー 850円

前回の馬来風光美食で食べたクアラルンプール式のホッケンミーとは全く別物のスープ麺だ。麺は柔らかめの中太中華麺を使用。具は鶏肉と玉子と野菜に揚玉ねぎのトッピング。エビガラを使ったスープはとても良い出汁が出ている。程よい辛さも加えてあって期待以上の美味しさだった。同じマレーシアのホッケンミーでも、違う地域でこれほどまでに異なるとは。東京と大阪と京都の「たぬき」の違いは有名だが、それ以上だな、これは。興味のある方は食べ比べてくださいませ。

ペナンレストラン

店舗情報TEL: 03-3456-3239
住所: 東京都港区芝2-4-16 加藤ビル 1F
営業時間: 11:00~14:30 17:00~23:00
定休日: 日曜
ホームページ
主なメニューチャークイティアオ 870円 (ランチ 840円)
ペナンスタイルホッケンミー 850円 (ランチ 720円)