はまちゃん
南紀・田辺市の江川という漁師町にも「江川のチャンポン」と呼ばれる品がある。姫路と同じく焼きそばとうどん玉を一緒に炒めたもので、昔からこの地のお好み焼き屋で供されてきたそうだ。その昔ながらのお好み焼き屋のひとつ、はまちゃんに行ってみた。
訪れたのは5月上旬の平日、午後5時。江川という地域はかなり入り組んだ下町で、バイクでも躊躇するほど狭い路地が縦横斜めに走っている。スマホのナビ機能がなかったら、きっと辿りつけなかったろう。
ちょうど夜の営業が始まるタイミングで、店主のおばちゃんが暖簾を出しているところだった。
「チャンポン食べたいんですけど、もう入れます?」
「ええ、どうぞー」
左手に大きな鉄板台があり、それに面したカウンターが三席、右手に四人掛けのテーブルが2卓。10人も入れば一杯になる規模だ。「鉄板前は暑いやろから」とテーブルへと促された。
メニューは壁に貼られている。ブタ玉が400円とかなり安い。100円増しでダブルにもできる。ブタ玉とは別に肉玉があるが、こちらは牛肉だろう。
「チャンポン(500円)でええんやね?」
「はい、お願いします」
麺を準備して鉄板で具を炒め始めた。と、地元の常連さんが二人相次いで入ってきた。片方は焼きそばを、もう一人のおっちゃんは何と刺身を食べている。さすが地元密着型の店。
「どこからきたん? えー、東京から?」
「ネットで調べて? へー、この店出てるんや」
「私の顔も出てるん? え、出てない?」
「出した方が人来るんちゃうか」
「出しときましょか?」
「やめてー(笑)」
とかなんとか、楽しくやりとりしてる間にチャンポンが作られてゆく。
麺と具を鉄板で混ぜ炒めてソースで味付け。小口切りの万能ネギと天カス、花鰹を散らしてさらに炒める。その横で黄身を崩した目玉焼きを作り、炒めた麺をのせ、ひっくり返してどろっとしたソースを塗って皿に盛り付け。脇に紅しょうがを添えて出来上がり。
そば玉は中細の中華麺。やや腰があり。うどん玉はやや太めでちょっと柔らか目。まあ、どちらもごく普通の麺である。具はざく切りキャベツと豚小間肉。ソースは酸味の効いたウスターと甘口のお好み焼き用。2種類の麺を2種類のソースで味付けした変則タッグマッチである。
麺の太さの違いからくる不思議な食感が美味しい。当たり前だが焼きそばのようでも焼きうどんのようでもある。正直、常連さんに話しかけられっぱなしでよく味わえなかった。本当に花ガツオが使われていたかも自信がない。
「ところで江川のチャンポン、の江川ってなんです?」
「場所や、ここの地名」
「へー、なるほど(※この時初めて地名と知った)」
「ちなみに『え』がわやのうて、え『が』わやからな」
「『え』がわやと阪神ファンにとってにっくき耳のでかいやつになるから」
「あー、わかりました。俺もアンチ巨人なんで」
「あはは、そっか、それならええなー」
安くて美味しく、そして明るいおばちゃんと常連さんの楽しい店だった。次回はできれば呑みがてら訪れてみたい。
ちなみに駅の観光案内所で地図を貰おうとしたが置いてなくて店を探すのに少々手間取った。地元有志の方が作られた地図がネットで公開されているので、「江川のチャンポン」を食べ歩く方はそれを事前に印刷しておくと幸せになれるかも知れない。
店舗情報 | TEL:0739-25-5230 住所:和歌山県田辺市江川6-47 営業時間:11:00~14:00、17:00~20:00 定休日:火曜日 |
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主なメニュー | チャンポン 500円 やきそば S400円 W500円 やきうどん S400円 W500円 ブタ玉、イカ玉、肉玉 400円 おこのみW 500円 おこのみミックス 500円 モダン 500円 W650円 あんまき 100円 |
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