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烏山飯店

千歳烏山には大衆的な中華料理屋が何軒かある。とりわけ時代を感じさせる外観なのが、駅の北側にある烏山飯店だ。

千歳烏山 烏山飯店

7月下旬、平日の仕事帰りに一人で訪問。時刻は20時過ぎだった。今回が二度目の訪問である。

烏山飯店 店内の様子

客席は丸テーブルが2卓に、6人掛けのテーブルが6卓、4人掛けが1卓。先客1名、後客2名。みんなおひとり様だ。お店は年配の店主と奥様で切り盛りされている。

烏山飯店 メインメニュー1

メインメニューには料理名が中国語と日本語で併記されている。品ぞろえが昭和初期を感じさせる構成で、個人的に興味深い。例えばラーメンの漢字表記は「陽春麺」、ギョウザは「鍋貼」。

烏山飯店 メインメニュー2

一品料理は値段がちょっと張るが、あわび・ふかひれ・なまこなども並んでいる。下拵えが面倒なので予約必須とは思うが、外観とギャップのある品揃えで面白い。

瓶ビール(中) 550円

とりあえずビールとシューマイを注文。生は今やっていないとのことで、中瓶(550円)にした。一番搾りにキムチがついてきた。テレビから流れる「天城越え」の歌を眺めながら、手酌でチビチビ飲る。

シューマイ 620円

やがてシューマイ(620円)が運ばれてきた。薄皮で包まれた、やや縦長の塊だ。大きなサイズで、中には豚肉がギュッと詰まってる。咀嚼するとほんのり甘い。カラシ醤油をちょっと付ければ、ビールのつまみに最適だ。

烏山飯店 麺類メニューの一部

さて、メインは焼きそばなのだが、初回訪問時に気になる品があった。エビとマメヤキソバ(980円)。漢字表記は「蝦腰炒麺」。「マメ」と書かれているが、「腰」という漢字なので、植物の「豆」の方ではなさそうだ。念のため、店員さんに確認してみた。

「このマメってのは、腎臓のことですか?」
「はい、そうです」
「じゃ、それをひとつ」
「あんかけですけど」
「はい、それで」
「はい、マメヤキソバー」
「あと、ハイサワーも」

エビとマメヤキソバ 980円

10分弱で出来上がり。麺はカリっと焼き上げられ、そこに餡が掛かっている。餡は、まろやかな味わいの醤油餡だ。具は、豚の腎臓=マメ、蝦、筍、ピーマン。ピーマンは細切りだが、筍は大振りに切られている。

マメ=腎臓は臭みなし

エビはプリプリ。豚の腎臓=マメは焼きとんで何度か食べたことがあり、レバーに似た食感と、尿を想起させるニオイが印象に残っている。しかし、ここのマメはそこまでニオイがキツくない。きっと下処理が丁寧なのだろう。

ハイサワーの肴に

とはいえ正直、マメ自体は取り立てて美味しいという食材ではないと自分は思っている。食感こそレバーに似ているが、食味はレバーほど濃厚ではない。イギリス料理のキドニーパイにも使われる食材だが、あれと同様に苦手な人は多そうだ。もっと下味をしっかり付ければいけるのかなあ。

赤坂の中華料理店などで修業

壁に貼られた雑誌記事によると、「赤坂の中華料理店などで修業を積んだご主人」という記述がある。烏山飯店という屋号からすると、恐らく赤坂飯店ではないかと思う。その赤坂飯店のメニューには「蝦腰炒麺」ならぬ、「蝦腰拌麺」、焼きそばではなく和え麺がある。

日本語表記は「海老・レバー入りばん麺」なので、「腰」の字は「レバー」を指すように見える。しかし英語名には「Kidney(腎臓)」の単語がある。やはり「腰」は「腎臓」「マメ」のことなのだ。「蝦腰炒麺」も「蝦腰拌麺」も珍しいメニューなので、やはりルーツは赤坂飯店ではないかと思う。

烏山飯店のメニューには、ほかにも興味深い品々がある。特に気になったのが「八宝菓飯」だ。戦前の支那料理のレシピ本を読むと、甘い「八宝飯」が時々紹介されているのだが、それがメニューに載っている。しかし店員さんに確認すると、残念ながら今は提供していないとのこと。

「需要がないからね。もっと美味しいものがたくさんあるから」

確かに昔はご馳走だったものも、時代を経れば競争力が失われる。お赤飯やバナナを、今時ご馳走と捉える人はいないだろう。古い味が失われるのは実に寂しいのだが、飲食店が商売である以上は仕方ないことなのだろう。どこかに甘い「八宝飯」、残っていないかな。

この日のお会計は2650円。ラーメン(陽春麺)やカレーライスなどの定番も未食なので、またそのうちお邪魔しよう。

店舗情報住所: 東京都世田谷区南烏山6-5-13‎
営業時間: 11:30~22:00
定休日: 水曜日
主なメニューエビとマメヤキソバ(蝦腰炒麺) 980円
シューマイ(焼売) 620円
瓶ビール(大) 650円
瓶ビール(中) 550円
ハイサワー 500円