珍々軒
上野アメ横のガード下も闇市の雰囲気を今に残す貴重なエリアだ。もつ焼きで有名な大統領など、この一角には昼から呑める店も多い。タンメンが人気の珍々軒も食事客に混じって赤ら顔の先輩方がチラホラ見える。一昨年のある日、その珍々軒を通りすがった際にレバニラ炒麺(レバニラヤキソバ)というメニューを見かけて興味がわいた。
日を改めて訪れたのは2011年、師走の日曜の御昼時。普段以上に混み合うアメ横を抜け、高架下の店を目指す。路上にまでせり出したテーブル席を避けてカウンターに着席。ホール担当の姐さんが注文をさっと訊いてくる。メニューは渡されてないが注文する品は決めてあったので問題ない。
「兄さん、何を?」
「瓶ビール(中瓶・500円)とレバニラヤキソバ(800円)」
「はい、レバヤキ一丁!」
目の前の厨房では男性スタッフが二人でてきぱきと調理をしている。麺を茹で、中華鍋を振るい、器に盛り付け、次々入る注文をあれよあれよと言う間にこなして行く。アサヒスーパードライで喉を潤しながら、その手さばきに見とれてしまった。中でもチャーハン用に中華鍋に卵を割り入れ、その殻をスープを煮込んでいる寸胴に放り込んだのには少し驚いた。卵の殻はスープの灰汁取りによく使われるらしいが、その手馴れた動作にさえこの店の歴史を感じる。
ラーメン屋としての珍々軒の創業は昭和37年らしいが、正確な来歴はよく分からない。ネット上には「1948年創業」「当時は飴屋」などの情報も散見され、店内には屋台時代の昭和35年の写真が飾られていた。ま、どちらにしろ、この地で60年以上もラーメンを提供してきた老舗であることは間違いない。
いくつかのタンメンやチャーハンが作られ、ようやく自分のレバヤキの番が来た。中華鍋に油を引いてレバーに火を通し、野菜を投入。ガシガシと炒めながら各種調味料で手際よく味を調えてゆく。さらに茹でてザルに上げておいた麺やタンメン用のスープを加え、さらに炒めて出来上がり。
「はい、レバヤキおまちどう」
スープとお新香、そしてレバニラヤキソバが配膳された。うーん、見るからに旨そうだ。
麺はタンメンと同じ中細のストレート麺。具はレバーとニラ、モヤシ、キャベツ、人参、玉葱と盛り沢山。化学調味料も含めて絶妙な加減で味付けされ、ジャンクながらも深いコクの美味しさに仕上がっている。ボリュームは十分で野菜もたっぷり使われており、かなりお買得感のある焼きそばだ。勿論、酒肴としても文句なし。付け合せの胡瓜の浅漬けはさっぱりした箸休めに丁度良い。スープは酸味の強いタイプでこれも良い口直しになった。
食後は満たされたお腹を抱えて師走のアメ横をフラフラと散策。活気にあふれたこの界隈は、呼び込みの掛け声を聞きながら歩くだけでも面白い。あのレバニラヤキソバも、このエネルギッシュな街だからこそ生まれた品なのかも知れない。
店舗情報 | TEL:03-3832-3988 住所:東京都台東区上野6-12-2 営業時間:9:30~22:00 定休日:月曜日 |
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主なメニュー | レバニラ炒麺 800円 湯麺 600円 餃子 450円 ビール(中瓶) 500円 |
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