桃園(調布)
調布に「桃園」(とうえん)という長崎ちゃんぽんの店がある。かつて有楽町にあった同名の店・桃園がルーツで、こちらは昭和37年に創業されたそうだ。
有楽町の桃園は当ブログでも紹介したことがある。そちらの創業は昭和25年。「焼きそば」はパリパリ揚げ麺、「皿うどん」は柔らか太麺という長崎のオールドスタイルのメニュー体系だった(詳しくは拙著『あんかけ焼きそばの謎』を参照)。
歴史ある貴重な店だったが、有楽町の桃園は残念ながら2016年に閉店してしまった。私は焼きそばしか食べておらず、ちゃんぽんも皿うどんも食べず終いだ。それが最近になって調布の桃園の存在を知った。「江戸の敵を長崎で討つ」なんて慣用句があるが、「有楽町の敵を調布で討つ」とでもいおうか。食べそこねたちゃんぽんと皿うどんを狙って訪問してみた。
初めて訪れたのは9月上旬、土曜の昼下がり。京王線調布駅の東口から北側に出て少し新宿方面に歩くと、「調布百店街」の看板がある。桃園はその商店街の、旧甲州街道寄りにある。黄色のフードと「長崎チャンポン」の文字が目印だ。
店頭のショーケースには食品サンプルが飾られている。長崎チャンポンと皿うどんのほか、チャーハンや餃子、タンメンに五目そばなど、大衆中華の定番が並ぶ。
店内は左側が厨房になっている。厨房とホールを隔てるカウンターが8席。テーブルが3卓。ランチタイムが一段落した時間帯で先客はいなかった。
メニューはカウンターの頭上にずらりと並んでいる。BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」で取材されたこともあり、店内には記念のお皿やポスターも飾られていた。
この日、私が注文したのは皿うどん(860円)と餃子(580円)。連れの嫁さんはチャーハンセット(チャーハン+半ラーメン/920円)を注文した。
皿うどんは少し深みのある丸皿で提供された。モヤシを主体とした具で覆われていて、麺はその下から引っ張り出さねばならない。
前述した通り、この店の皿うどんはチャンポン麺を使った長崎のオールドスタイルだ。麺はもちろん揚げておらず、かなりの太さの角麺でゴワゴワした硬さがある。
具は鶏肉、アサリ、モヤシ、キャベツ、ニラ。錦糸玉子にうずらの玉子のトッピング。さらにモヤシの下から、揚げ肉だんご・カマボコ・エビ・干し椎茸が発掘された。
食べてみるとシズル感があって、ちゃんぽんスープがよくしみている。卓上のソースを掛けても、めっちゃウメーン!
餃子は、表面がしっかり焼かれていた。野菜が主体の餡を使っていて、ちょっと変わった味付けだった。表現にこまる。
連れの頼んだ品も一口ずついただいた。チャーハンはしっとり系。半ラーメンもノスタルジックな期待どおりの味わい。どちらもオーソドックスな品で美味しかった。
そして後日、長崎チャンポン(770円)を食べに再訪してみた。透明感のあるスープに、皿うどんでも使われていた具材が乗っている。ゴワっとした太角麺と、主張しすぎない味わいのスープに、この店の歴史を感じた。
ちゃんぽんというと、四海楼やリンガーハットの印象が強いため、濃厚な味わいのスープが求められがちだ。ただ歴史的にはこの店のも、ちゃんぽんのひとつの形なのは間違いない。むしろぜひこの味をそのまま残してほしいなーと思う。
有楽町・桃園の流れを汲む、貴重な長崎ちゃんぽんと皿うどん。令和の嗜好にはマッチしていないかもしれないが、味わえるうちに味わっておくことをオススメしたい。
店舗情報 | 住所: 東京都調布市布田1-49-26 営業時間: 11:00~21:00 (日祝: ~20:30) 定休日: 水曜 |
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主なメニュー | 長崎チャンポン 770円 皿うどん 860円 |
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