お好み焼 さか井
「静岡の焼きそばは富士宮だけじゃない」
そう自分で散々言っておきながら何だが、やはり富士宮の影響力は予想以上に広範囲だったりする。
今回紹介するお好み焼き・さか井は、仕事でお世話になっているRetty社の高橋さん(沼津のご出身)から教えていただいた店だ。先週、伊豆長岡の「あいざわ」という店を紹介したが、こちらでも昔からマルモ食品の麺を使っているそうだ。
訪れたのは今年の8月下旬。土曜日の昼下がり。店舗は沼津の市街地中心部からちょっと離れた第一小学校の脇にある。ちなみに隣はお茶屋さん。
「昔ながら」のという形容がピッタリの渋い外観。店頭脇の窓枠をみると、マルモ製麺の小さな幟が飾られていた。この地で富士宮の麺を使い続けてきたことへのこだわりを感じる。
店内は奥に長い造りで、女将さんが一人で切り盛りしている。客席は中央の通路を挟んでテーブルが3卓、小上がり2卓。先客は1組。お好み焼をつまみに昼ビールか。うーん、羨ましい。
メニューはお好み焼きと焼きそばが中心。お好み焼きを「○○焼」「○○玉」と呼ぶ店は多いが、「○○天」と呼ぶのは珍しい。浅草の老舗「染太郎」以外で自分が知っているのは、東陽町の「いいもん倶楽部」や西富士宮の「ふみ」、那珂湊の「馬場先」など東日本に集中している。この辺も突っ込んで調べたら面白そうだな。
今回注文したのは五目焼きそば(750円)。食材一式が盛り付けられたお皿が運ばれてきた。自分で焼かなきゃならないのかと覚悟を決めたが、ちゃんと女将さんが焼いてくれるようだ。ほっ。
イカ、エビ、貝柱、豚肉スライス、モヤシ、青ネギを鉄板に順次広げ、バターで炒める。麺を加えて混ぜ炒め、しばらく置き。最後にキャベツを投入し、味の素・コショウ・ソースで味を調えた。
「鉄板で食べます? それともお皿に取ります?」
「あ、お皿でお願いします」
基本的にお好み焼きは鉄板で食べる派なのだが、富士宮系の麺で焦げ付くのもちょっとどうかと思い、今回は敢えて皿に盛っていただいた。卓上からだし粉と青のりを適量掛ける。紅生姜は見当たらず。
麺は前述の通り、富士宮が誇るマルモ食品の蒸し麺だ。富士宮では麺を炒める際に水(富士山の伏流水)を加えるのが一般的だ。それによって麺の強いコシがいくらか和らぎ、ふっくら仕上がる。しかし、こちらでは水を加えずに炒めているので、独特の個性的なコシはそのままだ。麺の歯応えを最大限活かすための調理法なのだろう。
「沼津で富士宮の麺って珍しいですね」
そう女将さんに訊いたところ、30年前からマルモ食品の麺を使っているとのこと。吉原までしか流通していないので、わざわざ宅急便で送ってもらっているそうだ。私は静岡でも西寄りの出身なので、富士宮の焼きそば文化を全く意識せずに育ってきた。しかし県東部ではその独特な焼きそばが着実に広まっていたことをこの店で実感できた。富士宮やきそば、侮りがたし!
具の方も漁港の町だけあって、魚介類が美味しかった。ソースはシンプルなウスターソースだが、かえって麺や具の長所をダイレクトに味わえる。バターの風味もマッチしているし、五目にして正解だった。いつかお好み焼きも食べてみたいな。
店舗情報 | TEL: 055-951-3054 住所: 静岡県沼津市八幡町75 |
---|---|
主なメニュー | 五目焼きそば 750円 いか焼きそば 650円 肉やきそば 650円 お好み焼 650円~ |
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません