ふじ
京都の福知山に「ゴムそば」と呼ばれる焼きそばがある。この地独特の茶色い深蒸し麺で歯応えがあるため、そう呼ばれるようになったそうだ。今回紹介する「ふじ」は、その麺を使った焼きそばを出すお店の一つで、雑誌などでも紹介された。また、「薄焼き」というお好み焼きでも知られている店だ。
訪れたのは5月下旬、平日の昼下がり。通りから一本入った静かな街並みにあった。店内にはL字型の鉄板に面した形で8席ほどの椅子が置かれている。先客は3人で皆飲んでた。羨ましい。
「いらっしゃい!」
店主はふくよかな女性で話してて楽しくなるタイプだ。明るくて、よく笑う。入ってすぐの席に腰掛けてメニューを確認。
お好み焼きは薄焼きと厚焼きに分かれていて、焼きそばは一品料理に含まれている。厚焼きは大阪風の混ぜ焼きだ。この店独特の薄焼きにも興味はあるが、目的は焼きそば食べ歩きなので自重しておこう。
「焼きそば(500円)ください」
「はーい」
早速、油を引いて具を焼き、例の麺を準備し始めた。確かに茶色い。
「昨日も東京から電車で食べに来られた人がおられましてん」
その人は焼きそばと一緒に薄焼きも注文して、そっちを気に入って帰ったそうだ。そう言われると食べたくなる。
「ほんま薄いんで、一番基本の野菜焼き(280円)でしたら軽うく食べられますよ」
「じゃ、薄焼きもください」
「はーい」
と、商売上手の女将さんに薦められるまま頼んでしまった。己の意志の弱さをどうにかしたい。
薄焼きは土佐清水で食べた「ぺら焼き」と同じく一銭洋食がルーツのコナモノだ。生地を薄く鉄板に広げ、削り粉と天カス、謎の肉っぽいのを乗せ、葱をドサっと大量に盛る。後で訊いたところ、謎の肉っぽいのはスジ肉と竹輪を煮たものらしい。その葱の上に生地を垂らし、火が通ったところでひっくり返す。最初の大量の葱はやがてペタンと平たくなる。焼きあがったら手前に寄せてくれた。
味付けは各自の好みだが、ソースと青海苔で味付けして、マヨネーズは遣わなかった。ふんわりとした口当たりで葱の風味と生地の素朴な香ばしさが美味しい。一口食べて私も気に入った。焼きそばに手をつける前に一気にペロッと食べてしまった。これで280円は安い。
薄焼きを食べている間に焼きそばも出来上がった。
麺は前述した通り、福知山独特の深蒸し麺。色が茶色く、中細でコシがある。石巻の麺を思い出させるが、それよりは細い。具はキャベツ、モヤシ、豚肉。トッピングは青海苔に紅生姜。マイルドなソースにラードのコクが加わって、程よい味わいだ。モヤシは最後の方で投入しているため、シャキシャキした歯応えが残っている。麺のコシと相まってこちらも美味しい。
冷たいお茶のお代わりや福知山の様々な話題など、とにかく明るく好印象のお店だ。薄焼きと焼きそば、どちらも食べて結果的に良かった。自分の意志の弱さも捨てたものではないな。
ちなみに那須烏山や静岡の三島にも「ゴムそば」と呼ばれる歯応えのある焼きそばがある。いつか紹介したい。
店舗情報 | TEL:0773-22-6063 住所:京都府福知山市天田154 営業時間:12:00~14:00 17:00~22:00 定休日:日曜日 |
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主なメニュー | 焼そば 中 500円 大600円 うす焼 野菜焼 280円 玉子焼 350円 イカ焼 380円 豚焼 380円 豚玉焼 430円 イカ玉焼 430円 モダン焼 430円 ふじ焼 680円 あつ焼 豚玉焼 530円 イカ玉焼 530円 モダン焼 580円 ふじ焼 800円 |
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