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みのりや

2014年3月24日

三河湾に面した碧南市では大磯屋という製麺所の焼きそば麺が定着しているという。地元スーパーなどでも流通しており、店でも家庭でも焼きそばと言えばその麺を使うそうだ。今回はその大磯屋の麺を使った焼きそばを長年提供してきたお店のひとつ、「みのりや」を紹介しよう。

と、本題の前に一言。碧南には市内の高校生たちが中心となって近年企画した「へきなん焼きそば」という開発型のB級グルメがある。そもそもは大磯屋の麺と地元の食材を利用して町興しを、という趣旨だったはずだが麺の指定は無くなるわ、えび煎餅が添えられるわ、何だかちょっとズレた方向に進んでいるようだ。恐らくは地元の大人たちの思惑が混ざったせいで高校生に罪は無かろうが、これまでの食文化へ必要以上に手を加えない方がいいのになあと残念に思う。

閑話休題。

みのりやを訪れたのは2月下旬。金曜の夜7時半頃に最寄駅の名鉄三河線・碧南駅へと降り立った。碧南駅は、その先の吉良吉田駅の区間が平成16年に廃されたためか、いかにも終着駅然とした寂しさで、改札を出ると最果ての雰囲気に満ちていた。暗い裏道をトボトボ歩き、そこはかとなく不安になってきた頃、目的の店、みのりやの明かりがようやく見えてきた。

碧南市 みのりや

外の静けさとは対照的に店内は常連さんで賑わっていた。お好み焼きや焼きそばがメインの店だが、むしろ気安い居酒屋といった雰囲気だ。客席はカウンター6席にテーブル3つ、小上がりひとつ。「いらっしゃいませー」とおばちゃんが明るく出迎え、空いていたテーブル席へと促された。

みのりや メニュー

メニューを眺めて、とりあえず生ビール(中・500円)と、どて煮(たぶん400円)を注文。ビールもどて煮もすぐに出てきた。八丁味噌で甘く煮られたどて煮を食べると名古屋文化圏に来たなあという実感が沸く。

生中ビール500円+どて煮400円

飲んでいると隣のテーブルから常連さんたちのマシンガントークが聞こえてくる。これが妙に面白い。店のおばちゃんに「もー、一見さんもおるんやから!」と窘められながら、徐々に自分も巻き込まれていった。常連さんたちは皆顔見知りで、店のおばちゃんも三河弁で「おっかあ」と呼ばれている。家庭的で居心地の良い店だ。店が混んで来ると奥から旦那さんや息子さんも出てきて手伝い始めた。

お代わりに芋焼酎のお湯割り(たぶん400円)を一杯やっつけてから目的の焼きそば(肉玉・600円)を注文。件のへきなん焼きそばも壁メニューにあったが、例によって開発型より昔ながらの方を優先してしまった。息子さんが鉄板で手際よく焼き炒めて出来上がり。

焼きそば 肉玉 600円

噂の麺は細めで腰が強めだ。格別ではないが小麦粉の旨味や歯切れの良さなど確かに美味しい。具はキャベツと豚肉。キャベツはざく切りで噛み締めると甘みが口に広がった。トッピングはざっと小手で一掻きして焼かれた玉子に紅生姜と刻み海苔。ソースはオリジナルブレンドだろう。甘めの味付けでしみじみと美味い。

「ここはな、お好み焼きもお勧めやねん」と仲良くなった常連さんがそっと教えてくれた。そういえば、その日の注文も焼きそばとお好みは半々ぐらいだったろうか。ホワイトボードの日替わりメニューもバラエティに富んで、飲むのにはとても良い店だ。お会計は合計で1900円だった。交通の便はちょっと悪いが、機会があればまた訪れてみたい。

みのりや 昼にも来てみた

……と舌の根も乾かぬその2日後、この時の食べ歩きの最終日。つい名残惜しくて日曜14時過ぎに再訪してしまった。昼日中というのに店内は飲み客で満席。先日の常連さんも居た。カウンターに着席して、注文したのはお好み焼きの肉玉(600円)。この日はバイクなので酒は無し。

お好み焼 肉玉 600円

フォークで食べるお好み焼は、ふんわりした仕上がりで確かに美味かった。件の常連さんが「うちに泊まってけ」「店に泊まれば良い」と説得しながら酒を勧めてくる。さすがにその日はそのまま東京へ戻ったが、いつかまた必ず訪れたいと思っている。


というわけで7月末から続けてきた西日本のコナモノ屋の焼きそば特集も、今回でようやく終了となりました。やはり西の方にもディープな店が多いですね。さてさて、次回からは焼きそばでなく「焼きうどん」をテーマにお届けします。こちらもディープな店が多いですよ。

みのりや

店舗情報TEL:0566-41-1811
住所:愛知県碧南市源氏町5-60
主なメニューお好み焼、焼きそば
肉玉 600円 肉イカ玉 700円 ミックス 800円
その他酒肴多数