花の家
東京下町の谷中・根津・千駄木、いわゆる『谷根千(やねせん)』と呼ばれるエリアには奥深い魅力がある。のんびりと散歩しながら裏路地の隠れ家の様な風情の店を見出すのは、さながら宝探しのようだ。
その根津と千駄木の間、みずほ銀行から見て不忍通りを挟んだ向かいの小路に「花の家(花乃家/はなのや)」という店がある。焼きそばを売りにしている店で夜は居酒屋メニューも扱っている。なお、前回の花家と名前が似ているが恐らく無関係。
訪れたのは今年一月下旬の金曜の夜。店内は奥に長く、カウンター席が6脚ほど並び、どん詰まりに小上がりがある。常連のおっちゃんが一人カウンターの一番手前に腰掛け、厨房の店主とやり取りしてる。「一人ね」と真ん中辺りのカウンターに腰掛けて瓶ビールを一つ注文。「はい、どうぞ」とサッポロの黒ラベルとお通しの胡瓜竹輪が出された。
肴は焼きそばやおでんの他、薄い経木にしたためられたメニューもある。まずはタコ刺身(500円)を注文。そいつを啄ばみながら、TVのニュースをネタに常連さんや店主と駄弁る。実はこの日が二度目なので少し気安い。
聞けば戦前に創業して、もう七十年とか。当初は焼きそばとおでんだけだったが、四十年ほど前から酒肴も揃え始めたそうだ。
二品目は赤魚鯛粕漬(500円)。ついでに日本酒も御燗で頼んだ。奥さんも奥から現れて厨房を手伝い始める。日本酒は正月向けの菊正宗か、金箔入りだ。
赤魚鯛は予想以上の大きさで、すっきりした呑み口の燗酒に良くあう。お銚子を掲げて「もう一本、お代わり」と伝える。
最初の常連さんが気持ち良さそうな千鳥足で帰ると、入れ違いに別の常連さんと和服姿の御姐さんが連れ立って登場。そろそろこちらも程良い心持になってきた。適当な頃合を見て〆に焼きそばを頼もうと壁のメニューを眺める。
壁に貼られた焼きそばメニューは随分と年季が入ってる。ノーマルの小が350円からで、肉や玉子、大盛りなどのオプションで50円刻みに上がっていく。酒肴も手ごろな価格なのだが、それ以上に安い。前回も注文した肉玉子入りの小(500円)を今回もオーダー。焼きそばは店主が調理してくれた。
鉄板に油を引いて肉片を置き、その上にキャベツ・麺と乗せて行く。塩コショウとソースで味を調えながら混ぜ炒めて焼きそばは完成。それを一旦脇に寄せ、中央に油を引きなおして玉子を割り落とす。黄身を軽く崩してから、先ほどの焼きそばを玉子の上に乗せ、全体を「よっ」とひっくり返して出来上がり。
麺は中太の角麺。この麺が独特で、二度蒸しされているのか地色が黒っぽい。腰が強い点も含めて石巻焼きそばの麺に似ている。ソースはやや甘めで割と薄味だ。具はキャベツと肉なのだが、豚肉ではなく鶏肉が使われていた。「かおりよき」でお馴染み、カメセ水産の青海苔が卓上には置かれていたので、それも適量掛けてみた。
食べてみるとシコシコした麺に玉子が良い感じで絡んで実に美味い。キャベツ・鶏肉の配分も申し分ない。なんとも下町らしい味わい深い焼きそばだ。常連はこれにおでんのつゆを掛けていただくらしい。後日訪れた際に一度試したが、それもなかなか乙な味だった。
ビールと日本酒2本、お通しに注文した三品でお会計は丁度3,000円。ランチタイムは11時から13時半まで。夜の営業は17時くらいから21時頃までで定休日は日曜日。お昼も一度試してみたい。
店舗情報 | 住所:東京都文京区千駄木2-44-19 営業時間:17:00~21:00 定休日:日曜 |
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主なメニュー | 焼きそば 小350円 大400円 玉子入り 小450円 大500円 肉入り 小450円 大500円 肉玉子入り 小500円 大550円 酒肴 400円~800円前後 |
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