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お好み焼 ひかり

ご存知の方は少ないだろうが、関西のお好み焼き店のいくつかで「のり巻き」という品が提供されている。代表的なお店が神戸の稲荷商店街にある、昭和20年創業のお好み焼・ひかりだ。11月に大阪へ行ったついでに、神戸まで足を伸ばしてみた。

神戸・稲荷商店街 お好み焼ひかり

春先に訪問した長田のお好み焼ハルナに続いて、今回もヤギセイヤーさんにご案内していただいた。土曜の朝に神戸駅で待ち合わせ、徒歩で約10分。昔ながらの店が集まる一角に目的のひかりがあった。

お好み焼ひかり 店内の様子

店内は奥に長く、入って右手が鉄板と厨房。客席はそれに面したカウンター席のほか、テーブルが三卓ある。今回は口開けを狙って入店したが、時間が経つと混み合って行列ができることも多いようだ。

まずは瓶ビールで乾杯

鉄板前のカウンターに腰掛けて、まずは瓶ビールで乾杯。ヤギセイヤーさんはお店の方々とは顔なじみなので、その会話を聞くのも楽しい。

お好み焼ひかり メニュー

メニューはもちろん、お好み焼きと焼きそば・焼きうどんのコナモンばかり。大貝そば(1000円)とのり巻き(700円)を注文した。

ソースで味付けししつつ混ぜ炒め

熱した鉄板に切り分けた貝の身肉とモヤシを乗せ、中華麺で覆って蓋を被せる。しばらく蒸し焼きにしたあと、短冊切りのキャベツを加え、ソースで味付けししつつ混ぜ炒める。仕上げに別のソースを掛け、青ネギを散らして出来上がりだ。

大貝そば 1000円

ヤギセイヤーさんによると、このあたりで「大貝」と呼ばれているのはウチムラサキという貝らしい。三河湾でよく採れ、「大あさり」とも呼ばれるそうだ。

大貝の旨味と歯ごたえがウマい

これまであちこちで大貝そばを注文したが、品切ればかりで食べるのは今回が初めてだ。ツルッ、モチッ、シコッとした中細麺に、大貝の旨味と歯ごたえ、ソースの香ばしさが相まってめっちゃウメーン!

どろソースもあう

どろソースで辛味を加えても美味しい。ビールが進む。この大貝の味を次世代に伝えるには、生物多様性に配慮した環境整備や、持続的な水産資源の管理が必要なんだよなぁ……

のり巻きは豚玉がベースになる

そして、目的ののり巻きだ。まずはベースとなる混ぜ焼きの豚玉を鉄板で焼く。焼き上がったらソースを塗り、一枚海苔に乗せる。

のりを巻き込みつつ折りたたむ

お好み焼きへ縦に切れ目を入れ、のりを巻き込みつつ「の」の字になるよう折りたたむ。のりを巻き終わったらまな板に乗せ、包丁で切り分けて出来上がりだ。

包丁で切り分けて出来上がり

見た目はお寿司ののり巻きそのもの。しかし味は豚玉という、なんとも面白いお好み焼きだ。ふわっとした生地で、乙な味。ヤギセイヤーさんの調査によると、ひかりを含めて現時点で七軒の店舗で同様の品が確認されているそうだ。

のり巻き 700円

拙著『ソース焼きそばの謎』で紹介した大正七年のお好み焼き屋台の品書きには、「お寿司」というお好み焼きがあった。この「のり巻き」がそれなのでは、と私は考えている。ただし証拠はない。

ふわっとした生地で、乙な味

のり巻きを食べ終え、もう少し食べたかったので、特製すじ焼(700円)を追加注文。あえて玉子抜きでお願いした。

すじ焼きは重ね焼き

すじ焼きは混ぜ焼きではなく重ね焼きだ。刻んだキャベツを混ぜた小麦粉の生地を、熱した鉄板に丸く広げて、青ネギと魚粉を散らし、あらかじめ煮込んだすじコンを乗せる。

特製すじ焼 700円

さらに天かすと生地少量を垂らしてひっくり返す。火が通ったらソースを自分で塗り、青のりを掛けて出来上がり。

すじコンの歯応えと生地のトロ味がウマい

コリコリしたすじコンと、煮汁の水分でとろっとなった生地のコントラストが楽しい。東京ではなかなか食べられない味なので、遠慮なくバクバクと食べてしまった。

神戸下町マップ

ひかりさんでお会計を済ませ、右隣の中畑商店でもう二~三杯飲んだ。串を打った牛ホルモンを鉄板で焼く独特なスタイルの店で、こちらもここでしか味わえない逸品だ。ほんと、奇跡的に良い店ばかりが集まっているなあ。

そのあともヤギセイヤーさんに神戸のディープスポットをあちこちご案内していただいた。ヤギセイヤーさんが探究心旺盛な方なので、解説にもついつい引き込まれる。どのスポットも興味深く、神戸に一ヶ月くらい滞在して、じっくり食べ歩きたくなってしまった。今回もご案内くださり、本当にありがとうございました!

店舗情報住所: 兵庫県神戸市兵庫区東出町3-21-2
営業時間: 10:30~20:00
定休日: 水曜日、木曜日
ホームページ
主なメニュー大貝そば 1000円
のり巻き 700円
特製すじ焼 700円