今井屋
秩父鉄道影森駅を降りて旧道を三峰方向にしばらく進むと、右手に「お好みやき やきそば いまい」と白く染め抜かれた緑色の看板が現れる。入るのをちょっとためらってしまうほど鄙びたその店が今井屋だ。
訪れたのは六月初めの土曜日の昼過ぎ。向かって左がテイクアウトのカウンター、右側がイートインスペースだ。それにしてもこれほど横文字が馴染まない店も少ないだろう。主力商品は秩父名物と謳う「みそポテト」と焼きそば。どちらも200円という価格で、作り置きがパックに詰められ並べられている。人の良さそうな店主のおばちゃんにそれぞれ一つずつ注文。「焼きそばはここで食べて行きたい」と伝えたら、「じゃ、あっためたげるな。あっちで座って待っててな」とのこと。失礼だが電子レンジがあるとは思わなかった。
イートインスペースには先客が3名いた。いずれもジジババで焼きそばとみそポテトを摘みながらお茶を飲んで雑談してる。テーブル上には蕗の煮物やおしんこもある。店主のおばちゃんが冷蔵庫からペットボトルを出して封を切り、湯呑を出して冷えたお茶を注いでくれた。「よかったらそれも食べてな」とおしんこなどを指す。何とも落ち着く店だ。おしんこも煮物もしみじみと美味い。
お茶を飲みながら待っていると、おばちゃんが温まった焼きそばを持ってきてくれた。パックを手に持つと意外に重い。200円と思えないボリュームである。麺は細めで柔らかめ。具はキャベツのみで青海苔と紅生姜がトッピングされている。基本的に具はほとんどなくて麺が主体だが、これで200円は安い。焼きそば自体にこれといった特徴は無いが、このお店そのものが他に類を見ないオンリーワンなので、ある意味バランスが取れている気がする。
帰りがけに東京から来たことを告げると「東京からかね、そりゃ遠いところを……」と言ってみそポテトを1パックおまけしてくれた。ジャパネットたかた顔負けのホスピタリティだ。ペットボトルのお茶といい、おしんこや煮物といい、採算がとれてるのか少し心配になる。
ちなみにみそポテトはジャガイモに薄い衣を付けて揚げ、甘い味噌で和えたものだ。その夜食べたが素朴な甘さでなかなか乙な味だった。焼きそばにジャガイモというと栃木のポテト焼きそばを思い出すが、この店の組み合わせも興味深い。
時代から取り残されたようなお店だが、ここだけ時間の流れがのんびりしているように思えた。あのおばちゃんもきっと長生きしてくれるに違いない。
2014.10.11再訪
三年ぶりにみそポテト(200円)をいただきました。おばちゃんも元気そうでなにより。
店舗情報 | 住所:埼玉県秩父市下影森173 |
---|---|
主なメニュー | 焼きそば200円 みそポテト200円 |
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません