白井食堂

埼玉の「大宮」という地名は、武蔵国一宮・氷川神社に由来する。その氷川神社を擁する大宮公園は、競輪場や野球場・サッカー場、博物館などの施設もあり、市民の憩いの場として、長年親しまれてきた。園内にある舟遊池は、かつて貸しボートがあったそうで、通称でボート池とも呼ばれている。

大宮公園 白井食堂

ボート池の畔には遊歩道があり、売店が何軒か営業している。その一つが白井食堂だ。2月下旬の土曜日、公園内にある埼玉県立歴史と民俗の博物館を見学したあと、休憩がてら入ってみた。

白井食堂 店内の様子

店内にはテーブルが6~7卓並べられ、半分ほどが先客で埋まっていた。角のテーブルや椅子、厨房のカウンター前にはいろんな物が置かれ、壁には千社札がびっしりと貼られている。生活感あるなー。

瓶ビール 650円

手近なテーブルに腰掛けて、瓶ビール(650円)と焼きそば(450円)を注文した。ビールはアサヒとキリンがあり、キリンを選択。お通しにキュウリの糠漬けを添えてくれた。この小皿だけで「ここは良い店」と認定してしまう私。厨房から調理の音が聞こえ始める。

競輪中継に見入る常連の皆様

この日はたまたま大宮競輪の開催日だった。客は常連ばかりで顔なじみらしく、グラスを片手にテレビ中継を眺め、終わったばかりのレースについて各自の見解を述べていた。公営ギャンブル場周辺の酒場ではおなじみの光景だ。公園の売店というよりは、そういう位置づけの店なのね。

梅に鶯、竹に虎、ビールに焼きそば

厨房の音がやみ、焼きそばが運ばれてきた。小ぶりの皿にちんまりと丸みを帯びた茶色い山が盛り付けられ、湯気を立てている。これぞソース焼きそば!というビジュアルだ。

焼きそば 450円

麺は柔らかめの中太蒸し麺。具はキャベツのみで肉はない。青のりがたっぷり掛けられて、紅生姜が添えてある。食べてみるとしっとりとした仕上がりで、やや濃い目の味付けだ。ビールによく合う。

お酒に合う濃いめの味付け

卓上にはブルドック中濃ソースが置かれていたので、焼きそばもそれベースなのかな。東日本の例にもれず埼玉はブルドックのシェア率が高い。2016年の「好きなソース」調査では、埼玉県でのブルドック支持は55%を得票している。川口市鳩ヶ谷にブルドックソースの工場がある点が、影響しているかもしれない。

入り口脇の冷蔵庫は宝箱

ビールと焼きそばを平らげたが、まだちょっと足りない気分だ。入り口の脇にある冷蔵庫には、瓶ビールのほかに発泡酒の類が入っている。ふむふむと考えて氷結レモン(400円)と玉子焼き(450円)という組み合わせをお願いした。氷結は氷入りのジョッキで提供された。嬉しい。

玉子焼き 450円

玉子焼きはパリッコさんがここ白井食堂を紹介した記事で取り上げていた品でもある。ほんのり甘く家庭的な味わいで、懐かしさを感じる美味しさだ。今どきの言葉で表現するなら「エモい」玉子焼きか。パリッコさんの「天国酒場」と名付けた概念が言い得て妙で面白い。

玉子焼きを食べ終わってお会計。30分あまりの滞在で1950円也。

大宮公園 舟遊池(ボート池)

なお、ここ「白井食堂」の他にも、大宮公園には焼きそばを販売する売店が点在している。白井食堂に隣接する「須之内売店」。ボート池南岸の「三浦売店」。氷川神社の裏手にある「岡田売店(第1売店)」と「おぐま(第2売店)」。すでに閉業したようだが、青木昆陽の碑の横に「押田売店」という店もあった。

さらに埼玉県立博物館にある「カフェパティオ」や大宮競輪場の「組合売店」でも焼きそばが売られている。それら施設も数えると、大宮公園内で現在7店舗がソース焼きそばを提供している。こんなに焼きそばを販売する店が密集している場所は、日本でここだけだと思う。取り上げようによっては、名所になるんじゃなかろうか。とりあえず気長にコンプリートを目指してみたい。

店舗情報住所: 埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4 大宮公園
営業時間: 11:00~18:00
定休日: 不定休(悪天候は休み)
主なメニュー焼きそば 450円
玉子焼き 450円