天天楽
今週は中国東北料理店を3軒ご紹介します! 珍品揃いですよー。
中国の東北地域で食べられている「焼き冷麺」を御存じだろうか? 簡体字表記だと「烤冷面(カオレンミョン)」。焼いているのに冷たい麺というややこしい料理である。調べたところ、1990年代に黒竜江の辺りで生まれたストリートフードらしい。
その「焼き冷麺(烤冷面)」だが、実は上野アメ横の天天楽という中華屋台で食べられる。見つけた時には「東京は本当に何でもあるなあ」と驚いた。
天天楽を訪れたのは今年の1月上旬、雨の日曜の夜19時半ごろのこと。さすがにこの時間帯になると人通りは少ない。海鮮丼やケバブなどを商っているどの屋台も空いている。ま、こんな雨が降る真冬の夜にわざわざ野外で食事する人間も限られているわなあ。
天天楽は通りの両側に店舗があり、どちらの客席でも同じメニューを頼むことができる。麻辣鍋や干し豆腐、豚モツや鴨の各部位など東北の定番に始まり、かなりマニアックな品々が並ぶ。凉皮(リャンピー)に至っては、東北凉皮と狭西凉皮の2種類もある。なんともディープな店だ。
「ご注文は?」
「生ビールと焼き冷麺、あと肉夹馍(ロージャーモー)もください」
350円という値段に釣られ生ビールを注文したが完全に失敗だった。こんな寒い夜に冷たいビールを煽るのは辛い。
っと、焼き冷麺(烤冷面/500円)が早速運ばれてきた。私は未食だが盛岡のとある店でも焼き冷麺を提供している。しかしこの店の焼き冷麺(烤冷面)は、それとは全く異なるスタイル・味付けなのだ。普通の冷麺と同じくジャガイモや緑豆などのでんぷんが原材料のはずだが、そもそも麺がまるで違う。
この料理で「冷麺」とされているのは、麺をくっつけた、あるいは切り離していないシート状の生地である。その生地を広げ、玉子やソーセージなどを乗せて焼きあげ、丸めたものが焼き冷麺(烤冷面)なのだ。味付けはスパイシーな甘辛ソース。ひと口大に切り分け、ゴマと香菜もトッピングしてある。基本的な調理手順は、この動画が分かりやすい。
食べてみると、これが不思議にちゃんと冷麺ぽい。ツルツル啜るわけにはいかないが、モチモチというかムニュムニュした独特の食感なのだ。歯応えあるデンプンを使ったどんどん焼とでも呼ぶべきか。焦げた部分は固く、ウインナーや玉子などの具と、ピリ辛な味付けが相まってジャンクな味わい深さがある。こんな品が食べられるなんて、アメ横侮りがたし。
肉夹馍(ロージャーモー/500円)は、狭西省のハンバーガーとして最近少しずつ知られてきた料理だ。この店の肉夹馍は肉だけでなく野菜もゴロゴロ入っていた。馍(モー)≒バンズも厚みがあり、煮汁が滲みてなかなか美味しい。
ビールも飲み終わり、料理もあらかた片付いて、もう一品欲しくなった。寒さを吹き飛ばすべく、土鍋マーラー燙(土锅麻辣烫/600円)と白酒(300円)を追加注文した。
土鍋マーラー燙は熱々の旨辛鍋だ。注文時に辛さを聞かれ、辛いの大丈夫ですと伝えたので、ほどよい辛さに味付けされている。野菜に春雨、ウインナー。カニカマ・竹輪・ナルトなど、日本的な食材もふんだんに使われている。無国籍なこの街らしくて面白い。
白酒は「しろざけ」ではなく、もちろんアルコール度数の高い「パイチュウ」の方。有機溶剤を思い出させる香りが妙に癖になるあれだ。プラ製コップ一杯でいい感じで酔うことができた。お会計は2250円。台北の夜市にも似た雰囲気で楽しい店だなあ。また来ようっと。
ちなみに「焼き冷麺(烤冷面)」は韓国にも伝播し、釜山の冨平缶詰市場や明洞の屋台通りで「冷麺焼き(냉면구이/ネンミョングイ)」という名前で売られているらしい。1月の訪韓時に探した際には見つけることができなかったが、そちらもいつか食べ比べてみたい。
店舗情報 | TEL: 080-4797-5211 住所: 東京都台東区上野4-7-8 アメ横センタービル1F 営業時間: 9:00~21:00 定休日: 無休 |
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主なメニュー | 焼き冷麺(烤冷面) 500円 肉夹馍(ロージャーモー) 500円 土鍋マーラー燙(土锅麻辣烫) 600円 |
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