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新宿中村屋 Manna

前回インド式中華料理のお店を紹介したが、インドと言えば、昨年公開されたインド映画『RRR』が、今年3月にアカデミー賞歌曲賞を受賞して話題になった。1920年代=英国植民地時代のインドを舞台に、実在した独立運動の革命家2人を主人公に据えての、超弩級アクション・エンターテイメント作品である。

新宿中村屋 地下二階 レストラン Manna

インドの革命家と聞いて私が思い出すのは、新宿中村屋の純インド式カリーだ。日本に亡命していたインド独立運動家のラス・ビハリ・ボースが、中村屋の創業者家族との関係を深めたのが奇縁となり、1927年(昭和2年)の喫茶部(レストラン)開設時に純インド式カリーが発売された。

新宿中村屋 Manna 店内の様子

それ以来百年近く経た現在も、新宿中村屋の看板メニューのひとつとして、地下にあるレストランMannaや8階のGrannaで、純インド式カリーが提供されている。3月下旬に私が『RRR』を観に行った際は、自分のテンションを上げるため、鑑賞直前に訪れて食べたりもした。

純インド式カレー 1870円

芳醇なスパイスの香りが立ち上るグレイビーポットには、柔らかく煮込まれた骨付きの鶏肉がゴロゴロ入っている。ライスと一緒に一口頬張ると、香辛料の芳香が口腔と鼻腔にあふれる。まるで煌めく万華鏡だ。昭和初期にこれほどの本格的なインド式カリーは相当なインパクトをもたらしたことだろう。

新宿中村屋Mann メニューの一部

ところで地下2階のレストラン、新宿中村屋Mannaでは「伊府麺」を使ったメニューも提供されている。これまでこのブログでも何度か触れたが、伊府麺は中華麺の一種で、水を使わず小麦粉と玉子だけを使い(全蛋麺)、打ってからカリカリに揚げるのが特徴だ。

伊府麺

この揚げ麺は最初に熱湯に入れて、茹で戻してから使うのが基本スタイルだ。スープに浸った汁そばにするほか、広東料理では「乾焼伊麺」という混ぜ焼きそば的な食べ方もある。ただ、日本で小売されているのをこれまでみたことがない。それがなんと新宿中村屋では、地下一階にある売店でカレーや中華まんに混じってお土産用に販売されている。なんとなんと、ありがたや。

ナポリターノ 1408円

Mannaではこの伊府麺を使った、ナポリターノ(1408円)というオリジナルの品も提供している。メニューの説明文には「伊府麺のイタリア風トマト煮込み」とある。出てきた品もそのまんま。伊府麺をトマトスープで煮込んだ土鍋が運ばれてきた。箸とレンゲで食べるのかと思いきや、渡されたのはフォークとスプーンである。なるほど、イタリアーノ。

麺は全く違うけどボンゴレ・ロッソ風

麺の上には、カットされたトマトとアサリがトッピングされている。味わいも魚介の出汁が効いていて、ボンゴレ・ロッソ風だ。しかし麺のテクスチャも風味も、イタリアのパスタとは全く異なる。美味しいけれども、舌と頭が混乱しそうだ。

さらに個人的に最も興味を持ったのが鳳絲麺(ホンスーメン、1353円)だ。説明書きには「伊府麺の北京風あんかけかた焼きそば」とある。要は伊府麺を茹で戻さず、揚げ麺のままで使ったあんかけ焼きそばなのだ。この品を食べた日は、焼売(693円)と一緒に注文してみた。

鳳絲麺と焼売

「かた焼きそばはアメリカで生まれた」というのが私の持論で、伊府麺をそのまま提供したのがきっかけになった可能性もある。ただ実際どんな味わいになるのかは確認していない。まさか新宿でそのスタイルを実食できるとは思っていなかった。

鳳絲麺(ホンスーメン) 1230円

出てきた料理を観察したところ、伊府麺をバキバキに割って使っていた。そこにごくあっさりした味付けの餡が掛かっている。麺が短いのでスプーンですくうと食べやすい。NYで食べたOld StyleのChow Meinを思い出す。なるほど、これなら箸に慣れていなくても普及しそうだ。柔らかい麺では、そばめしのように短く切らないとできない食べ方だ。

麺が砕かれているのでスプーンが食べやすい

餡の具は鶏肉・筍・玉ネギ・人参・トマト・椎茸。トマトが良いアクセントになっている。餡の粘度は低く、提供された時点で伊府麺はあらかた柔らかくなっていた。パリパリ食感はほとんどないのが残念だが、全く癖がなく万人受けしそうな味だった。カラシを酢に溶いたカラシ酢もいい塩梅でなじんで、めっちゃウメーン! 焼売も肉肉しくて美味しかった。

ちなみに一度、伊府麺をお土産に購入したことがある。自宅で乾燒伊麵(干烧伊面)を作ってみたところ、なかなかいい感じでできた。そのうち、この伊府麺でアメリカ風のChow Meinを作ってみたいと思っている。

店舗情報住所: 東京都新宿区新宿3-26-13 新宿中村屋ビル B2F
営業時間: 11:00~22:00 (金・土・祝前日: ~22:30)
定休日: 元日
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主なメニュー鳳絲麺 1353円
ナポリターノ 1408円
純インド式カレー 1870円
焼売 693円