富士屋
横浜市保土ヶ谷区の相鉄線天王町駅から旧東海道を5分ほど北東に歩くと、「ハマのアメ横」と呼ばれる松原商店街に辿りつく。屋号も判らぬ格安の食品店が並び、年末になると狭い通りは人混みに溢れるそうな。
その松原商店街の入口近くの脇道にあるのが今回紹介する富士屋さん。店主のおばあちゃんは大正9年生まれというから今年で満92歳か。焼きそばが看板メニューのお店と知って興味が沸いた。
訪れたのは12月中旬、日曜日。事前に調べた営業時間を当てにして12時過ぎに来てみるもシャッターが半開き。んー、まだ早かったかと東海道保土ヶ谷宿を散策して時間つぶし。
1時間ほど経って再度来てみたら今度は暖簾が出ていた。しかし店に入っても誰も居ない。「こんにちはー、ごめんくださーい」と呼びかけても返事が無い。普通なら何だこの店となるところだが、こういうお店では短気は禁物。カウンターに腰掛けて2・3分ほど待つと、勝手口から「あらあら、すみません」と店主のおばあちゃんが現れた。
「お待たせしちゃってごめんなさい」
「いえいえ」
メニューを改めて眺めてから注文。
「とりあえず瓶ビール(500円)と……おでんは無いですよね?」
「今はやってなくてね、白菜のお漬物くらいなら」
「じゃ、その御新香(200円)ください」
よく漬かった白菜をつまみにキリンラガーをチビチビやる。他にお客さんは来なかったので自然とおばあちゃんから話を伺うことに。このお店は昭和33年に始めたそうで、元々は浅草・松屋の子供服売場で働かれていたらしい。接客の端々にもそこはかとない品がある。出身地が私の実家と近かったこともあってか、50分ほど会話して随分と打ち解けた。随分とご苦労もあったようだ。
お代わりするつもりはなかったのだが日本酒(350円)の常温、それと〆に焼きそばの並(450円)を注文した。冷蔵庫から出したのが見慣れたマルちゃんの3玉入りチルド麺だったのは拍子抜けしてしまった。昔からの業者が次々とつぶれ、今はこれにと落ち着いたらしい。具と混ぜつつ鉄板で丁寧に炒める。
「はい、お待たせ」
普段家でも食べている麺だが、食べやすいよう小手で適度な長さに刻まれていてふんわりと仕上がっている。具はたっぷりキャベツにピーマンと桜海老、カリッとした揚げ玉。そして青海苔と紅生姜。味付けは液体ソースであっさりめ。
「油は特注品をインターネットで取り寄せててね、さっぱりしてるでしょう」
確かにしつこくなくて食べやすい。おばあちゃん同様、品のある優しい味だ。桜海老の風味も懐かしい。
焼きそばを食べ終わってお会計は1300円。後で検算してみたら1500円のはずだが、最初の白菜はサービスだったのかな?
「ご馳走様でした、いつまでもお元気で」
「ありがとうございます、お気をつけて」
店を去るのが名残惜しい。細く長くで構わないので本当にずっとお元気でいて欲しいものだ。
店舗情報 | TEL:045-331-4895 住所:神奈川県横浜市保土ケ谷区天王町1-2-1 営業時間:12:00~15:30、17:00~21:00 定休日:木曜日 |
---|---|
主なメニュー | 焼きそば 並 450円 大 550円 焼きそば玉子入 並 550円 大 650円 焼きそば肉入 並 550円 大 650円 日本酒 350円 ビール 450円 御新香 200円 |
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません