武正米店
桐生のB級グルメと言えば、ソースカツ丼にひもかわうどんが有名だ。市としてもそれらを観光資源として強く押している。しかし、ここは両毛地域。例のポテト入り焼きそばという食文化もちゃんと根付いていた。
武正米店を訪れたのは三月の中旬、平日の正午過ぎ。昼時なので混雑してるかと思ったら先客は一人。しかもクリーニングの引き取りの客だった。そもそもが米店でクリーニングもやっていて、さらに焼きそばまで売っている、何とも複雑な業態である。
奥の方から出てきた店主に注文したのはポテト入り330円。温かいお茶を出し、ストーブに火を点してから、入り口右手の厨房で調理を始めた。奥さんは左手のクリーニングの受付で先客とやり取りしてる。
基本は持ち帰り専門のため、テーブルは4人掛けの一つだけ。薬味の類は見当たらない。マスコミで何度か紹介されているらしく、芸能人の色紙などが飾ってある。「このお店、だいぶ古いんですか?」と店主に尋ねてみると、地元紙の切り抜きを渡され、調理しながら来歴を話してくれた。
「店を始めたのは13~14年前だけど、味は60年の歴史だね」
この店は焼きそばだけでなく、子供洋食(=ふかしたジャガイモをソースでいため、青のりを振った食べ物)でも知られている。その記事によると、子供洋食は終戦直後に桐生界隈で屋台を引いてた人から、焼きそばは専門店をやっていた実父からレシピを引き継いでいるらしい。
「昔はあちこちイベントに呼ばれて一日に300~400食も作ったが、仕込みと調理で疲れるのでもう行かない。娘婿が継いでくれれば嬉しいが、まあ、今の仕事を定年退職してからでも構わない。年をとってからでもできるし、自分の口を塞げる程度が稼げれば良い。マスコミのお陰で結構お客さんも来てくれるしさ(笑)」
話をしてる間に焼きそばが出来上がった。具はモヤシとキャベツ、そしてゴロゴロとポテトが埋もれている。麺は細めで、固さは普通。値段の割りには量はなかなか多い。トッピングは青海苔と紅しょうがで、どちらもたっぷり掛かってる。ソースもダバダバと多めだが食べてみると以外にさっぱりしている。焼きそば専用ソースと市販ソースをブレンドして味を調えているそうだ。ポテトで嵩が増えてるはずなのに軽々と胃におさまってしまった。
調理を終えた店主に奥さんを交え、食後もしばらくなんのかんの話を続けてしまった。こういうお店の常連さんがうらやましくなる。出掛けに、今から太田市に移動して、また焼きそばを食べると告げると、店主はこう言った。
「食べ比べてみてよ、絶対うちが勝つから(笑)」
引き継いだ味の為せる、店主の自信が頼もしい。桐生の戦後の味は、まだまだ生き延びてくれそうだ。
店舗情報 | TEL:0277-44-7919 住所:群馬県桐生市浜松町1-6-35 営業時間:10:00~18:30 定休日:日曜日 → ホームページ |
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主なメニュー | ポテト入りやきそば 330円 ポテト入りやきそば大盛 430円 ポテト入りやきそば超大盛 530円 コーン入りポテトやきそば 380円 肉入りポテトやきそば 430円 玉子入りポテトやきそば 380円 ミックス(ポテト・肉・卵・コーン)やきそば 530円 野菜(キャベツ・モヤシ・ポテト)肉コーンやきそば 530円 子供洋食 300円 400円 500円 |
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