タシデレ

市ヶ谷の防衛省の近く、靖国通り沿いに「タシデレ」というチベット料理店がある。創業は2015年。日本全国でもチベット料理の専門店は珍しい。公式サイトによると「関東で唯一のチベット人によるチベット料理店」だそうだ。

曙橋 チベット料理 タシデレ

タシデレを訪れたのは、3月下旬の平日夜、19時半過ぎ。3月22日から新型コロナのまん延防止措置が解除され、多くの飲食店が20時以降の営業を再開した。タイムリミットに急かされながら夕食を食べる日々も、これでようやく一段落したわけだ。いつまた発令されるかわからないが、とりあえずはのんびり外食を堪能しよう。

タシデレ 店内の様子

店内にはチベットの旗「雪山獅子旗」が掲げられ、五色の祈祷旗=「タルチョー」(དར་ལྕོག་)が天井から吊るされている。フロアには大小のテーブルが7卓ほど置かれ、2組の先客が食事をしていた。

タシデレ 飲み物メニューの一部

ホールを担当している男性はオーナーだろうか。奥の隅のテーブルへと促され着席。飲み物はチベット酒3種飲み比べセット(900円)というのをいただいた。パパドを添えて、小さなグラスが3つ運ばれてきた。

チベット酒3種飲み比べセット 900円

右端の「デ・チャン」は米ベースのマッコリ風。微かなえぐみがある。中央の「チュルク・チャン」は乳清ベース。少し酸味を感じるが、あまり癖がなくさっぱりしている。左端の「ショ・チャン」ヨーグルトベース。ラッシー風の甘さで飲みやすい。全体的に度数は低めだ。

精進モモ(3個) 650円

つまみで注文したのは「精進モモ」(3個/650円)。ご存知の方も多いだろうが、モモはネパールやインドで食べられている餃子に似た料理だ。ここの精進モモは具にジャガイモと豆腐が使われている。ジャガイモの味わいが主体で、あとは何かのハーブが香る程度。素朴な味だ。

シャ・ジンゼ 1100円

もう一品の注文は、「シャ・ジンゼ」(1100円)。セロリと鶏肉の炒めものだ。ノーマルと辛口が選べて、辛口を指定。鶏肉は皮や脂身が少ない部位で、ギュッとした歯応えと強い旨味を感じる。かなりの辛さで、セロリの風味も刺激的で楽しい。刻んだニンニクを大量に入れて炒める点は、中華料理らしくもある。味が濃いので蒸しパンも頼めば良かったかな。

キング・フィッシャー 650円

お酒がなくなったので、インドのビール、キング・フィッシャー(650円)を追加。あえてグラスは断って、瓶から直に飲む。小瓶のビールをラッパ飲みすると、現地感が出て気分がちょっと盛り上がるのだ。

さて、締めだ。チベットの焼きそばというと、恵比寿のクンビラというネパール料理店で、「チベット焼きそば」と訳された「チャウチャウ(Chau chau)」という料理を食べたことがある。平打ち麺と具を混ぜ炒めた焼きそばで、ほんのりスパイシーな品だった。

一方、ここタシデレには、2種類の焼きそばがメニューに掲載されている。

タシデレ メニューの一部

一つは「トゥクパ・ングマ」(1300円)。混ぜ炒めのチベット風焼きそばで、「トゥクパ」は麺、「ングマ」は「炒める」という意味だろう。ネパール風の「チョーメン」という呼び方も附されている。もう一つは「トゥクパ・カンポ」(1300円)。「カンポ」は「固い」を意味するそうで、メニューでは「あんかけ風かたやきそば」と説明されている。

トゥクパ・カンポ 1300円

私が今回注文したのは「トゥクパ・カンポ」(ཐུག་པ་ སྐམ་པོ)。辛口も選べるが、あえてノーマルを指定した。しばらくして、大きな皿にトマトスライスと麺を敷き、炒めた具を乗せた品が運ばれてきた。

太麺は揚げ焼き、そとカリカリ、中ふわふわ

麺は太めで、加水率が高い麺を揚げ焼きにしているのか、エアリーな食感だ。かた焼きそばと説明されていたが、中心部は柔らかい。また揚げ油が特殊なのか、とても風味が良い。

細切りのラム肉がうまい

具はラム肉、人参、ピーマン、玉ねぎ。すべて細く切り揃えられている。ラムは干し肉なのか、歯応えがある。ネパールのスクティっぽくて旨い。全体的には酸味の効いた味付けで、トマト系の味わいがする。やはりにんにくが大量に使われていた。

実際はどんな品かを確かめたくて来たわけだが、パリパリに揚げられた麺ではなく、外側カリカリ内側フワフワの揚げ焼き麺だった。これはこれで美味しいのだが、かた焼きそばとは呼びづらい。maruosaさん的には守備範囲外なのが、ちょっと気の毒である。

バター茶 550円

食後にバター茶(550円)を飲みつつ、店員さんにいろいろ質問してみた。「このかた焼きそばは現地でも食べられているんですか?」と確認したところ、日本人の奥さんが考案したメニューで、実はチベットにはないそうだ。そもそもチベット人は食に保守的で、食べ慣れない食材や創作料理はあまり受けないらしい。なるほど、ルーツをいろいろ想像していたけど、現地にはない、この店のオリジナルメニューだったのか。

あれこれ飲み食いして、お会計は5150円。他にもいろいろ食べたいメニューもあったので、複数人で来てみたいなあ。このお店については、メシ通の記事で詳しく解説されている。オーナー奥さんへのインタビューも掲載されているので、ご興味ある方はそちらもチェックされたし。

店舗情報住所: 東京都新宿区四谷坂町12-18 四谷坂町永谷マンション 1F
営業時間: 月〜金: 11:00~15:00, 17:00~22:00
土日祝: 11:00~22:00
定休日: 定休日なし
ホームページ
主なメニュートゥクパ・ングマ 1300円
トゥクパ・カンポ 1300円