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Universal Bakery

2018年6月9日

アメリカ西海岸の焼きそば特集。先週は中華系のあれこれをご紹介しましたが、今週はラテンアメリカ系の飲食店で食べた品々をご紹介します。今回訪れたサンフランシスコ・ロサンゼルスの属するカリフォルニア州は、ヒスパニック系の住民が多いため、それらの料理店も充実しているのです。日本ではまず提供されていない変わったスタイルばかり。「あの国では、こんな焼きそばの食べ方をしてるのか!?」なんて驚いていただけたら幸いです。


日本ではほとんど知られていないが、中米のグアテマラやエルサルバドルでは「チャオミン(Chow Mein)」と呼ばれる焼きそばが日常的に食べられている。19世紀、コーヒー・砂糖・綿花・バナナなどプランテーション農業の労働力として、両国とも世界各地から移民を受け入れた。その中にもちろん中国人もいて、中華料理、なかでも「チャオミン(Chow Mein)」が現地に根付いたらしい。距離的にはだいぶ離れているが、以前紹介した南米ペルーのチーファと同じような流れだ。

Universal Bakery, SF

グアテマラ式のチャオミン(Chow Mein)を食べに訪れたのは、サンフランシスコの南寄り、バーナルハイツ(Bernal Heights)という区域にある Universal Bakery というお店。「みんなのパン屋さん」的な名前の、カフェスタイルのグアテマラ式ベーカリーだ。看板にはスペイン語で同じ意味の「Panaderia La Universal」とも書いてあり、窓ガラスには「Since 1983」の文字も見える。

Universal Bakery 店内の様子

訪れたのは6/21(水)の朝10時半過ぎ。「BART(バート)」という地下鉄の24th St駅から歩いて訪問。どうもこの辺はヒスパニック系が多いエリアらしい。落書きがあちこちにあって、治安はあまり良くなさそうだ。Universal Bakery の店員も客も、やはりヒスパニック系が主体だ。店内にはスペイン語が飛び交い、英語はほとんど聞こえない。

Universal Bakery メニュー

注文カウンターの後ろの壁にメニューが掲示されている。ざーっと眺めて、「Chow Mein ($8) / Guatemalan Style Chow Mein」は見つけたが目的の品は書いてなかった。あらかじめ公式サイトメニューをチェックしておいてよかったなあ。

Universal Bakery メニュー拡大

注文したのは「チャオミン・コン・フリホレス・イ・ケソ(Chow Mein con Frijoles y Queso/$9.00)」。舌を噛みそうなメニュー名だが、詳細は後ほど。それと飲み物、「アロス・コン・レチェ(Arroz con Leche/$2.00)」。後者はお米をミルクで煮たライス・プディングの一種だ。「アロス(Arroz)」は「お米」、「レチェ(Leche)」は「ミルク」。名前をうっかり忘れたので、「ライス・ミルク(Rice Milk)」と注文したが、無事に通った。

アロス・コン・レチェ & パン

支払いを済ませると「パンもどうぞ」とサービスで渡してくれた。「食べ歩きなのに、ありがた迷惑だなー」なんて思いつつ受け取る。が、これがあとで活用されることになろうとは! アロス・コン・レチェ(Arroz con leche)は温かくて、お粥か白酒のよう。ドロドロして甘く、沖縄の「玄米」や「ミキ」にも似ている。優しい味わいでなかなか美味しい。

チャオミン(Chow Mein)はタッパーに入れて冷やしてあるのを、レンジで温めて盛り付ける方式だ。意外に時間が掛かる。自分の分が出来上がったと思ったら、自分より前に注文した地元の若者の分だった。「わー、やはり焼きそばを日常的に食べているんだなー」とちょっと感動。自分の分も10分余りで出来上がり。カウンターで受け取ってテーブルへと運ぶ。

Chow Mein con Frijoles y Queso $9.00

まずは「チャオミン・コン・フリホレス・イ・ケソ」(Chow Mein con Frijoles y Queso」の名前から解説しよう。「チャオミン(Chow Mein)」はもちろん「焼きそば」。「コン(con)」は英語の「with」に近い前置詞。「フリホレス(Frijoles)」は本来「インゲン豆」を意味するが、ここでは「豆の煮もの」を指す。「イ(y)」は英語の「and」に相当する接続詞。「ケソ(Queso)」はチーズ。てなわけで、「豆煮込みとチーズを添えた焼きそば」となる。

グアテマラ式 チャオミン

この店のチャオミン(Chow Mein)は中細の中華麺を使用していた。柔らかくて麺は短め。ペルーのタヤリン・サルタードだとスパゲティが定番だが、その違いが興味深い。具は、よーく火が通った鶏肉に、人参・ピーマン・赤ピーマン・セロリ。鶏肉を使っているから「チャオミン・コン・ポヨ(Chow Mein con Pollo)」になるのかな。味付けは醤油風味で、拍子抜けするほど癖が無い。素朴な中華風の味わいだ。

豆の煮込み、フリホレス

フリホレス(Frijoles)はラテンアメリカ全般で食べられている超定番の料理だ。インゲン豆を塩味で煮た品で、ブラジルではフェイジャン(Feijão)と呼ばれている。この店は黒い色だったが、赤や白もあるらしい。チョコレートや餡子に似ているが甘くはなく、また辛くもない。塩気と豆のコクがじんわり美味しく、ネパールのダルスープっぽさも感じる。もちろんチャオミン(Chow Mein)に絡めてもいける。

チーズとサワークリームも

皿の反対側には白いチーズ(ケソ/Queso)と白いサワークリーム(クリーマ・グァテマラテカ/Crema Guatemalteca)が添えてあった。チーズは恐らくグアテマラの標準的なチーズで、ボソボソしたタイプ。味わいはあっさりしている。発酵具合が浅いのかな。白いサワークリームは酸味が爽やか。マヨネーズをごくさっぱりとさせた感じ。どちらも中米の定番の品らしい。

ところでこの店には焼きそばパンも売られている。スペイン語で「パン・コン・チャオミン(Pan con Chow Mein)」。値段は$4.00。それも食べてみたかったのだが、ちょうどパンが付いてきたので、ええいっと自作してみた。

パンと焼きそばで自作の焼きそばパンを

パンに切れ目を入れ、チャオミンとフリホレスとチーズ、サワークリームを挟む。うむうむ、なかなか美味い。きっと地元民もこういう食べ方をするに違いない。そう思うとなんだかグアテマラが遠い国に思えなくなってきた。しかし断面図だけ見ると、フリホレスとチーズ・サワークリームが餡バターにしか見えないな。

チャオミンもアロス・コン・レチェもパンも平らげて、すっかり満腹。なかなか食べ応えのある朝食だった。ただ焼きそばを食べるのではなく、伝統的な他の食材・料理と組み合わせるというのが、とても興味深い。ラテンアメリカの焼きそば文化の一端を垣間見ることができて、実に有意義なひと時を過ごせた。日本で食べられないのが惜しいなー。

店舗情報住所: 3458 Mission St, San Francisco, CA 94110
TEL: +1 (415) 821-4971
営業時間: 6:00~19:30(日: 7:00~13:00)
定休日: 無休
ホームページ
主なメニューChow mein con frijoles y queso $9.00
Pan con chow mein $4.00
Arroz con leche $2.00