浜銀
じゃがいもが入ったポテト入り焼きそばといえば、栃木や群馬の食文化として認知されている。しかしあまり知られていないが、実は横浜でも食べられてきた。とはいえ横浜で生まれ育った人でも、それを意識している人はわずかだろう。
横浜でポテト入り焼きそばを提供する店は、減少の一途をたどっている。当ブログで紹介したことがある磯村屋ものぐちも閉店してしまった。現存店が他にないか、改めて念入りに探してみたところ、現時点で2つの店を見つけた。そのうちの一つが中区の若葉町にあるお好み焼屋さん、浜銀だ。
浜銀を訪れたのは12月中旬の週末のこと。21時過ぎに2人で訪問した。最寄り駅は日ノ出町だが、伊勢佐木長者町からも似たような距離だ。この辺りを歩くのは初めてだが、タイ料理店が密集しているのが興味深い。あとで調べてみたら、一部ではリトルタイタウンとして認知されてるようだ。
そんな若葉町にある浜銀は、昭和42年創業のお好み焼きともんじゃ焼きの店である。自分で焼くスタイルで、座敷とテーブルには、どれも鉄板台が設えてある。入店したときは2組がテーブルに着席し、奥の座敷では宴会も行われていた。
なにはともあれ、着席したらまずはビールだ。横浜なのでキリンで乾杯。生もあるが、あえて瓶を選択した。妻は烏龍茶。
メニューはお好み焼き・もんじゃ・焼きそばが中心だ。自分で焼く店にしては値段が高めに感じるが、そもそも標準が安すぎると思っておこう。価格は「円」と「縁」の表記があるが、使い分けの法則が皆目わからない。肉やイカやエビなど、具を組み合わせることが可能なのだが、値付けの法則もわからない。たぶん、値段だけならいか入りえび天がお得な気がする。
一品目はサラダ(495縁)。ざく切りキャベツと人参を、塩昆布と和えたシンプルな品だ。ポン酢醤油のようなドレッシングが掛かっていて、さっぱりとした口当たりである。
お好み焼きは肉天(935縁)を注文。神戸の長田では、お好み焼きが戦前から普及していて、「にくてん」と呼ばれてきた。お好み焼き発祥の地、東京でも「肉天」(肉テン)という品名は戦前から例があるのだが、現代ではあまり見かけない。それが浜銀にはあったので注文してみた。
長田で肉といえば牛肉を指すが、こちらの肉天に使われているのは豚肉だ。注文すると小麦粉の生地とキャベツ、豚肉細切れと卵が入った容器を渡される。それをよく混ぜ、油を引いた鉄板に丸く広げて焼く。鉄板の上に容器を掲げてかき混ぜると、材料がこぼれても問題ない。
頃合いを見てひっくり返し、しっかり火が通るまで両面を焼く。大丈夫そうだなと思ったら、ソースを塗って、青海苔を掛けて出来上がりだ。食べてみると生地の出汁の風味が良い。隣のテーブルではマヨネーズを使っていたけど、無いほうが特徴を掴めそうに思う。
ちなみに卓上のソースはオタフクの容器に入っているが、中身はシャバシャバでウスターっぽい。同グループのユニオンソースだろうか。お好み焼きを注文すると、別にお好み用のソースも持ってきてくれたが、そちらも割とさっぱり目の味わいだった。
続いて今日の本命、ポテト焼きそば(990円)だ。麺は縮れた中細の蒸し麺。寿町にあった新井屋で使われていた麺と似ている。位置的に近いから、同じ製麺所に発注していたのかもしれない。その麺の上に蒸かしたじゃがいもが置かれ、湯気を立てている。麺の下にはモヤシとキャベツが敷かれている。
食材ごとに区分けして鉄板に広げ、野菜とポテトに塩コショウして、しっかり焼く。麺はなるべく動かさず。ポテトは適度に転がしながら断面に焼き目をつける。あらかた火が通ったところで混ぜ炒め。味付けは卓上のウスターソースだ。お好み用ソースも少し混ぜ、青海苔を掛けてできあがり。
作り手が自分自身なので味の評価しづらいが、ほどよい塩梅で悪くはない。ホクホクのじゃがいもとソースの酸味がマッチしている。麺もジャンクな食味なのがむしろ面白い。貴重な横浜の食文化が残されていることを確認して安心できた。
まだ少し物足りないので、えび天(935縁)も最後に注文してみた。渡された材料は、豚肉が剥きエビに変わっただけ。これも全体を混ぜ、鉄板で両面を焼いて完成だ。期待通りの乙な味である。焼き上がってしまうと、肉天もえび天も見分けがつかないな。
途中でドリンクもお代わりして、お会計は5275円。深夜までやっているので、はしご酒に使える店として覚えておこう。なお店内喫煙可なので、気になる人はご注意を。もう1つの横浜ポテト焼きそば現存店も、そのうち訪問してみたいと思う。
店舗情報 | 住所: 神奈川県横浜市中区若葉町2-37-2 浜銀パークビル 営業時間: 16:00~翌4:00(土日祝: 14:00~) 定休日: 不定休 → ホームページ |
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主なメニュー | ポテト焼きそば 990円 |
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