お好焼 のぐち
じゃがいも入り焼きそばは、一般的には栃木県南部の名物として知られている。栃木市のじゃがいも入り焼きそば。足利市のポテト入り焼きそば。栃木県だけでなく群馬県桐生市や埼玉県深谷市など、周辺地域にも同様にじゃがいも入の焼きそばは存在する。
じゃがいも入り焼きそばの発祥には諸説あるが、実は戦前の東京には既に存在していた。私もKindle本『お好み焼きの戦前史』で初めて知ったのだが、証言しているのは「リンゴの唄」の作詞家として知られるサトウハチロー。昭和11年(1936年)に朝日新聞で連載していた『僕の東京地図』に、向島のお好み焼き屋台で「キャベツのみじん切りと、ジャガ薯のサイノメとが混じっている」ソース焼きそばを食べた話を残している。
風呂屋の前に、毎日オコノミヤキの屋台が出るのだ。メニューに曰く、ポテトフライ、ロールキャベツ、カツレツともに5銭とおいでなすったね。ヤキソバ同じく5銭なるものがうまい。ソバを鉄板で、いため焼きにして、キャベツのみじん切りと、ジャガ薯のサイノメとが混じっているのだ。ソースの香りにむせびながら食うとよろしい。
※『お好み焼きの戦前史』は1/19に物理的な書籍『お好み焼きの物語』として発売される。個人的に超オススメの一冊だ。買うべし。
じゃがいも入り焼きそばの食文化は東京だけでなく横浜にも及んでいて、かつては横浜エリアの多くの店で提供されていた。しかし時代が下るに連れて次々と姿を消し、当ブログでも紹介した昭和25年創業の磯村屋が唯一の現存店とされている。ところがつい最近、ブログ「全国イイ味ハマル味」のA-changさんがもう一軒、現役の店を見つけた。それが今回紹介する「お好焼 のぐち」だ。
とても貴重な現存店ということで、この三連休に早速訪問してみた。「お好焼 のぐち」は山元町の商店街に店を構えている。件の磯村屋から徒歩で約1kmほどの位置だ。どの駅からも遠いので、バスを使って山元町一丁目バス停で下車するのが良いだろう。
鄙びた店構えに「お好み焼・焼そば」の看板。店頭のメニューには定食なども載っているが、メインはお好み焼きと焼きそばだ。
お好み焼きも焼きそばも、それぞれに「いも入」がある。写真は撮りそびれたが、店内メニューではお好み焼きの方は「いも天」という表記だった。いも天。半分以上の人はサツマイモの天ぷらと勘違いするのではなかろうか。
店内はカウンターのみで6人ほどで満杯になる。店主さんは昭和26年生まれの67歳。お店を初めて45年くらいだとか。「いも入焼きそば(470円)」といも入のお好み焼き「いも天(300円)」を注文。先客の常連さんに倣って瓶ビールもお願いし、高校サッカー準決勝のテレビ中継を眺めて待つ。
しばらくして焼きそばが出来上がり。続いてお好み焼きも焼き上がった。ソース味の粉もん2品。早速いただこう。
焼きそばの麺は、磯村屋より一回り太い扁平気味の角麺を使用。しっかり蒸されていてゴワッとした歯ごたえがある。わざと切ってあるのか、一本一本がかなり短い。
具はキャベツ・モヤシ・ジャガイモ。青のりがトッピングされ、脇に紅生姜が添えてある。味付けはウスターソースだが、炒める際に魚粉・アミエビ・天カスも加えられている。
ジャガイモはあらかじめ茹でおいたやつの皮を剥き、厚さ1cm縦横2～3cmほどにカットしたのを投入していた。魚粉やアミエビの旨味とソースの風味をまとったホクホクのポテト。ビールにも合う美味しい焼きそばだ。思った以上のボリュームで食べごたえがあった。
お好み焼きは薄い重ね焼きで、モチっとした小麦粉生地の重たい系。具はキャベツとジャガイモなど。玉子は入っていない。まあ300円という値段ならこれで十分だろう。
じゃがいも入りのお好み焼きは関西だと何軒か見つかったが、関東風の薄焼きでは珍しい。いも入り焼きそばも横浜エリアではとても貴重な存在だ。しかし残念なことに、諸事情で3ヶ月とか半年とか近い内にここを閉じてしまう予定らしい。興味を持たれた方は急ぐべし。
サッカーのPK戦を見終えてお会計。1320円。実はこの日の朝にとんかつ焼きそばを食べ、のぐちの後に磯村屋でもじゃがいも入り焼きそばを食べた。朝と昼で焼きそば3杯、お好み焼き1枚。粉もん続きで胸焼け気味の一日だった。
| 店舗情報 | TEL: 045-662-3693 住所: 神奈川県横浜市中区山元町2-94 定休日: 日曜日 |
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| 主なメニュー | 焼そば 420円 いも入 470円 玉子 470円 肉入 470円 肉玉子入 520円 いか入 520円 えび入 520円 五目 520円 お好み焼 いも天 300円 野菜入 270円 玉子入 300円 肉入 300円 肉卵入 350円 いか天 350円 えび天 350円 いか玉天 400円 えび玉天 400円 五目天 400円 |
