ゼノビアカフェ
麺を使ったスイーツというと、ユダヤ料理の麺入りプディング、ロクシェン・クーゲル(Lokshen Kugel/קוגל אטריות)や、大分の郷土料理・やせうまなどをこれまで紹介してきた。
ウラニワ 千歳船橋店
ウラニワという、大分の郷土料理を提供している居酒屋チェーンがある。現在営業しているのは、千歳船橋 ...
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中国の潮州には揚げ麺を砂糖と酢で食べる料理があるし、山梨にはあずきぼうとうがある。そういったバリエーションを知ると、麺料理の世界を本当に広く感じる。そして実は中近東にも、麺を使ったスイーツがある。
麻布十番でアラビア料理とシーシャ(水タバコ)を提供している、ゼノビアカフェという店がある。広尾にあるアラビア料理店・ゼノビアの系列店で、オーナーはシリア出身のアルクード・イブラヒムさん。
会社から近いこともあって、ランチで何度か訪れた。シシケバブとカプサ(ピラフ)、ホンムス(フムス)とナンのセットなど、手頃な値段で中近東の味を楽しめる貴重なお店だ。
そのゼノビアカフェに一度試してみたいメニューがあった。前回、十番右京ナチュールスタンドでご一緒した面々=Jaffaさん、はぴいさん、金成姫さんをそのままお連れし、麻布十番での2軒めに訪れてみた。
ゼノビアカフェは狭い階段を登った2階にある。アラビアン・ナイトの世界を思わせるフロアにはテーブルが何卓かおかれ、シーシャや料理を楽しむ先客たちがちらほら見受けられた。
オーナーがムスリムなので、料理はすべてハラルに対応しており、アルコール類も置いていない。料金を払ってお酒を持ち込むのは可能だが、せっかくの機会なので皆、ソフトドリンクにした。
はぴいさんはマサラチャイ、金成姫さんはハーブティだったかな。私とJaffaさんは、アラビア・コーヒー(600円)をお願いした。キメの細かい粉を専用の容器に入れ、アルコールバーナーで温める。
温めたコーヒーは、小ぶりのカップに粉ごと淹れる。カップの底に粉を沈殿させ、上澄みをいただく。カルダモンで香り付けされたほんのり甘いコーヒーは、まさに異文化の味わい。新鮮な体験だ。
ちなみにJaffaさんは、本業の関係でイスラエルを何度も訪問している。イスラエルはユダヤ教の国だが、食に関しては周辺のイスラム教国との共通点も多い。このコーヒーの飲み方にも慣れてらっしゃるそうだ。
さて、私の目的の品だが、デザートのページに載っている「クナファ」(Kunafa/ كُنَافَةٌ )というアラビアのスイーツ(1200円)である。メニューに「2~3人様用」と書かれていたので、ランチのついでに一人で注文するのが躊躇われていた。
「クナファ」は本来、イスラム世界で食べられている極細の小麦粉麺を指す。「クナーファ」と表記されることも多く、「カダイフ」「天使の髪」とも呼ばれる。
フランス料理などでも使われる食材で、エビに巻き付けて揚げた「エビのカダイフ揚げ」は、見覚えある方も多いだろう。Youtubeを探すと、食材としての「クナーファ」=「カダイフ」の作り方を紹介する動画がいくつかヒットする。
熱した鉄板を回転させ、小麦粉とスターチを水に溶いた生地を垂らして作る、独特な製麺方法だ。日本で一般的なローラーカット式(切り出し式)でもなければ、手打ちでも手延べでもない。スパゲティやビーフンで使われる押し出し式とも全く異なる、麺線があまりに細く脆いため茹でることはできず、焼くか揚げるしかないという点も面白い。
そして、その極細麺「クナーファ」「カダイフ」を使ったスイーツも、「クナーファ」と呼ばれる。イスラム諸国で広く食べられていて、『千夜一夜物語』にも登場する歴史あるデザートだ。生地をカダイフで包んで焼くというレシピは大体共通しているが、地域のよっていろいろなバリエーションがあるらしい。
ゼノビアカフェのクナファは、フレッシュチーズで作られた生地をカダイフで覆って焼き上げ、ピスタチオをトッピングしたものだ。「麺=主食」という固定概念があると「なぜこれを取り上げた?」と思われるかも知れないが、「焼いた麺」なのは間違いない。生地のチーズの伸び具合にワイワイ言いながら、4つの小皿に取り分ける。
華やかな香りのシロップが滲みた極細麺の、サクサクした歯応えが楽しい。チーズの弾力と風味が特徴的な生地に、ピスタチオの香ばしさが相まって、期待以上に美味しい。2~3人様用とのことだが、2人でちょうど良いくらいかも。
注文時に、Jaffaさんがデザートメニューの「オスマリーヤ」( عصملية )という品(600円)が、英語で「Cold Kunafa」と表記されているのを見つけた。冷たいクナーファもあるのか、とそれも注文。温かいクナファとは生地が違うのか、よりさっぱりした味わいだった。
前述した通り、Jaffaさんはイスラエルを何度も訪問しているので、クナーファは体験済みだった。金成姫さんもドバイでクナーファを味わったことがあるそうだ。はぴいさんもパキスタン料理を中心にイスラムの食文化には造形があるし、お三方をお誘いして良かったなあとつくづく思う。
最後にサービスで出された焼き菓子をつまみ、この日は2軒で解散した。今回は食べなかったが、デザート以外の食事メニューも充実しているので、シリア料理・アラビア料理に興味がある方は訪問してみてほしい。
店舗情報 | 住所: 東京都港区麻布十番2-1-11 松尾ビル 2F 営業時間: 11:30~翌2:00 定休日: 無休 → ホームページ |
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主なメニュー | クナファ 1200円 オスマリーヤ 600円 アラビアコーヒー 600円 |
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