ロムアロイ

今週から4週に渡ってタイの焼きそばを特集いたします。タイ料理に詳しいクンプーさんのブログなどを参考に、時間を掛けて名店を食べ歩いてみました。タイの焼きそばもいろいろ種類がありますが、まずはやはり「パッタイ」ですよね。今週は3つのタイ料理店のパッタイをご紹介します。


タイ風焼きそばとして知られるパッタイ(ผัดไทย/Pad Thai)は、米粉が原料のライスヌードル(クイッティオ/ก๋วยเตี๋ยว)を炒めた焼きそばだ。「パッ(Pad)」はタイ語で「炒める」を意味する。タイの国民食とも呼ばれているが、国民食と呼ばれるのは理由がある。

時は1940年代、第二次大戦の頃。小麦の輸入を抑え、米の増産と消費を促すために国としてメニューを考案し、首相自らがキャンペーンを行ったのがそもそもの始まりだ。当時、国名が「タイ王国」に変わって間もなかったこともあり、国名「タイ(Thai)」を含んだ「パッタイ(Pad Thai)」という名前を付けたそう。その後全土に普及して、名実ともにタイ王国を代表する料理となった。焼きそば好きとしては感無量のエピソードである。

東中野 タイ料理 ロムアロイ

さて、そのパッタイを食べに訪れたのは東中野にあるタイ料理店、ロムアロイ。タイ人のママが一人で切り盛りする、カウンター10席程度のこじんまりした店だ。屋号はタイ語で「おいしい風」を意味する。営業しているのか分からないような目立たない外観だが、実は食べログのタイ料理部門で全国2位という超人気店。タイから直輸入したフレッシュなハーブを惜しげもなく使うことに定評がある。

ロムアロイ とある日のメニュー

コース以外に提供しているメニューは日替わりで2〜3品のみ。水やビールはセルフサービス。その日、何があるかは運次第なので、何か食べたい料理があるなら気長に通うか、コースを予約する際に希望を伝えるしかない。しかも後述するがこの店の予約はとても難しい。パッタイが食べたい私は気長に通う方を選択した。ようやく念願が適ったのは5回目の訪問だが、たぶんこれでも早い方だと思う。

ロムアロイ 店内の様子

麺はもちろんライスヌードル。タイのライスヌードル=クイッティオは太さで区分されていて、きしめんくらい幅広いセンヤイ(เส้นใหญ่)、2~3ミリの太さのセンレック(เส้นเล็ก)、ビーフン並みに細いセンミー(เส้นหมี่)の3種がある。一般的なパッタイに使われるのはセンレックだ。タイでは生麺を使うそうだが、日本では入手困難なのでロムアロイでも乾麺を水で戻したものを使用している。

パッタイ(Pad Thai) 1200円

センレックと一緒に炒められている具は、剥きエビと玉子。ピーナッツや干しエビ、ニラも入ってる。トッピングにたっぷり干しエビ、シャキシャキのモヤシ、砕いたピーナッツ(トゥアリソン/ถั่วลิสง)。そして生のニラ。串切りのレモンと乾燥させた唐辛子(プリックポン/พริกป่น)が添えてある。

干しエビや唐辛子、レモンを添えて

味付けは自家製の調味料を使用。乾燥させたタマリンド(マカーム/มะขาม)を水で戻し、ココナッツ(マプラーオ/มะพร้าว)と魚醤(ナムプラー/น้ำปลา)を加えて長時間煮込んだものだそうだ。これに随分と手間が掛かるため、予約などでリクエストがあった時だけパッタイを作るらしい。ロムアロイでパッタイが食べたいときはその直後を狙わねばならぬのだ。

モチモチのセンレックが美味しい

その自家製調味料に加え、炒める際に砂糖(ナムターン/น้ำตาล)で甘味を付けている。さらにロムアロイでは唐辛子で辛味も加えていた。実はこの辛さに驚いた。パッタイは辛くないのが一般的で、激辛で有名なイサーン地方のパッタイなどはむしろ甘すぎるほどだ(後日紹介予定)。しかし、こちらでは唐辛子でかなりしっかり辛くしている。ママはバンコク出身だが「辛くする方が美味しいから」とのこと。イサーンと対照的で興味深い。干しエビの旨味やピーナッツの香ばしさがそれに重なり、モチモチの米麺に様々な食材の味が滲みて、まるで万華鏡のようだ。とても美味しいパッタイだった。

シンハービール1本(600円)と合わせて、この日のお会計は1940円。暑い季節には辛口のパッキー・マオもやるらしいので、それも食べに来なきゃだな。この店に通う間にパッタイ以外のメニューもあれこれ食べたが、どの料理もみな格別に美味しかった。その一部を紹介しておこう。

ラープ 1500円

こちらは初訪問でいただいたラープ(ลาบ/Larb)=挽肉のサラダ。タイの東北地域イサーンの名物料理で、以前ラオスでも食べたことがある。ロムアロイでは豚肉をママが自らミンチにしているそうだ。かなりの辛さなのだが辛いだけではなく、きらびやかな味と香りが素晴らしい。パクチー(ผักชี)にコブミカンの葉(バイ・マックルート/ใบมะกรูด)、ミント(サラネー/สะระแหน่)などのフレッシュハーブをふんだんに使用。さらにスパイスの風味も加わり、それぞれの香りが結晶のようにキラキラ煌めいている。初訪問だけに鮮烈な味わいだった。

ガパオライス 1500円

直近で食べたガパオライス(Ka-Prao Rice)も素晴らしかった。肉はやはり自家製ミンチ。ザル一杯のホーリーバジル(ガパオ/กะเพรา)の葉を挽肉と一緒に炒めてある。トッピングに生の葉もたっぷり添えてあり、爽やかな香りと刺激的な辛さは未体験の美味しさだ。付け合せのジャスミンライスも香りが素晴らしく、タイ料理で求めている美味しさの到達点はこういうことなのかと唸らされた次第である。

最後に予約について。この店の予約はかなりハードルが高い。一見さんは不可で何度か来た人に限られ、電話やメールではなく来店して予約しないとダメ。もちろんキャンセル厳禁。過去に心無いドタキャンが重なったそうで、仕方なくこのようなシステムになったらしい。席数も限られているため、飛び込みで入店するのもなかなか難しい。もし訪れる際は代わりのお店の候補も考えておくことをオススメしたい。

ロムアロイ

店舗情報住所: 東京都中野区東中野1-55-5 土田ビル 1F
営業時間: 19:00~23:00
定休日: 不定休
主なメニュー※メニューは日替わりで2~3品のみ
Pad Thai 1200円
Singha Beer 600円