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中山屋

茨城県の県西&県南エリアの焼きそばを食べ歩いてみました。この地域は北関東コナモン文化圏に属していて、焼きそば専門店も数多くあり、とても全部は回り切れません。今週・来週で6軒をご紹介しますが、これでもほんのごく一部と思ってください。


焼きそばだけを取り上げた本は少ない。特に全国の焼きそば店をまとめているのは、dancyuの『ソース焼きそばの本』と旭屋出版の『全国縦断 – 名物焼そばの本』、2冊のムックくらいだ。その後者、旭屋出版のムックに茨城県筑西市にある中山屋という焼きそば店が紹介されている。昭和40年創業という老舗で、ブログ開設当初からずっと訪問したかったのだが、今年の5月下旬にようやく訪れることができた。

筑西市下館 中山屋 焼きそば店

中山屋焼きそば店は下館駅から1㎞ほど北東へ歩いた場所にある。以前は少し離れた用水路の脇にあったが、2010年頃に現在の店舗へ移転したそうだ。余談になるが、移転前は用水路に絡めて「どぶそば」なんていう綽名が付いていたという。成田にある鉄板焼きそば鈴木の「げりそば」と双璧の酷いニックネームだと思う。

現在の新店舗は外も内も小奇麗な造りだ。客席は長いテーブル2卓と丸テーブルが1卓。土曜の昼下がりで先客はいなかったが、年配の女将さんによると、ついさっきまで電話なりっぱなしで、40分待ちだったとのこと。やはり地元の人気店なんだなー。

中山屋 メニュー

メニューは焼きそばのみで玉子や肉などのオプションは一切なし。100円刻みでサイズを指定できる。昔、いろいろ緩い時代は50円単位である程度目分量だったらしい。しかし地元の学生たちが50円刻みで注文して量の違いを確認しようとして以来、麺100g=100円で量もちゃんと測るようにしたそうだ。それはさておき注文だ。

「焼きそば、300円で」
「男性はだいたい500円を食べますよ」
「んー、じゃ間を取って400円で」

食べ歩きなので少な目にしたかったが、目論みが崩れてちょっと多くなってしまった。暑い日だったので、冷たいお茶のペットボトル(150円)も購入した。調理中に女将さんの息子さんらしい若店主も奥から現れたので、ご挨拶。

焼きそば 400円

しばらくして運ばれてきたのはパッと見はごく地味なソース焼きそばだ。麺は細麺で具はキャベツのみ。とてもシンプルなのだが、この店の1番の特徴は麺にある。食べてみるとゴワゴワ、噛み応えがある独特な蒸し麺に驚かされることだろう。

独特な蒸し麺のシンプルな焼きそば

味付けは酸味がちのソースで、超ドライな仕上げ。ボリュームもなかなかあって、水分が無いと辛い。さっきドリンクを購入しておいて助かった。地元の方々はこれをモリモリ食べて育ったんだろうなあ。

麺は3段階の手間暇を掛けて仕込まれてます

食後、若店主にお願いしたら調理前の麺を見せてくださった。左端の棒麺は隣の桜川市にある、創業百年を超えるという柿沼製粉のもの。この乾麺を茹でて扇風機で冷まし、蒸し上げてまた扇風機で冷ます。この扇風機を使った急速冷却が肝らしい。こうした三段階を経て、茶色く細く腰のある蒸し麺に変わるのだ。乾麺を使った焼きそばというと、千葉県の木更津君津、静岡の中西屋食堂などが思い出される。一般的な蒸し麺と異なる食味なのが面白い。

扇風機を使った急速冷却が肝だとか

手間暇かけた二度蒸し麺はこの店独自の味として定着している。以前紹介した名古屋の焼きそば専門店・紀ノ川の女将さんもこちらの麺にヒントを得て現在の仕込み方に辿り着いたと仰っていた。名店というのは知らず知らず他の店に影響を与えているものなのだなあ。

早川食品・ニッポンソース

ついでに使っているソースのボトルも見せてくださった。佐野市にある早川食品というメーカーのニッポンソースというブランドだ。爽やかな酸味で、量を食べても食べ飽きないであろう味わいだった。佐野より西だとスーパーで小売りもされているそうだ。なお、同社には栃木市の大豆生田商店で見かけたミツハソースというブランドもある。食べ比べてみると面白いかも知れない。

関東平野に聳える筑波山

若店主と女将さんにいろいろと教えてくださったお礼のご挨拶をして店をでる。シンプル・イズ・ベスト。期待通り、老舗の風格を感じさせる美味しい焼きそばだった。筑波山に見守られてきた歴史ある店、変わらぬ味。下館の名物として、これからも末永く食べ続けられることだろう。

中山焼そば店

店舗情報TEL: 0296-24-1629
住所: 茨城県筑西市下中山730
営業時間: 11:00~19:00
定休日: 水曜
主なメニュー焼きそば 200円~