キッチンきらく

神保町にキッチンきらくという店がある。開業は1年ちょっと前の2023年1月。後述する稲庭中華めんを使用した中華そばや、黄色が特徴的なカレーライス、西日本に点在しているローカル食・カレー焼きなどを提供している食事処だ。

神保町 キッチンきらく

キッチンきらくを運営するのは、人気ラーメン店・麺や七彩の阪田博昭さん。ラーメン通の間でよく知られている方で、私が仲良くしている日本コナモン協会・東京事務所のドルフィンさんとも、懇意にされているそうだ。

そのキッチンきらくのメニューに、ソース焼きそばが加わったという。ドルフィンさんが間に入ってくださり、1月末の平日昼間に訪れることになった。定休日なのにわざわざ対応してくださり、感謝に絶えない。(ドルフィンさんのブログ記事はこちら

神保町 キッチンきらく 焼きそばメニュー

着いてみたら、かつて東京焼き麺スタンドが入っていた物件でちょっと驚いた。一階が厨房と注文カウンターになっていて、二階が食事スペースだ。カウンター4席とテーブル6席、合計10人ほどのキャパである。目的の「稲中やきそば」は、中盛・大盛とも同じ値段で600円。基本的に会計は現金不可のため、電子マネーを準備していこう。

佐藤養悦本舗が開発した稲庭中華めん

「稲中やきそば」に使われている「稲庭中華めん」は、稲庭うどんの製造業者・佐藤養悦本舗が開発した手延べの乾麺だ。阪田さんも深く関わっているそうで、西武新宿線・都立家政駅の麺や七彩でも、ある時期に平打ち手打ち麺からこの乾麺に切り替えたという。

焼く前に麺とソースを混ぜるメソッド

その稲庭中華めんを茹で上げ、流水で洗って水切りし、ボウルでブレンドソースと混ぜる。焼く前に合えることで、麺にソースが滲み込むことを狙っているそうだ。その麺を深めのフライパンでしっかり焼く。

豚の背脂を煮出してラードを取った自家製肉カス

一緒に炒めるのはキャベツと肉カス。肉カスは、富士宮やきそばでは食材だ。この店では、豚の背脂を煮出してラードを取った、自家製の肉カスを使っている。野菜もいろいろ試したが、ソース焼きそばの戦前レシピなどを尊重して、キャベツのみに落ち着いたとのこと。

あらかじめ焼き置いて炒め直す

できあがった焼きそばはホーローのバットに広げて置く。あらかじめ、ある程度を作り置いて麺に味をなじませ、注文ごとに炒め直す。そんなオペレーションを想定している。

稲中やきそば(中盛) 600円

二階でドルフィンさんと待っていると、焼きそばを乗せたトレイが運ばれてきた。青海苔がトッピングされ、脇に紅生姜が添えられている。ぱっと見は、どこにでもありそうなソース焼きそばだが、ルーツや本質への探究心がヒシヒシと伝わってくる一皿だ。

ルーツや本質への探究心が感じられる一皿

そのまま食べて見ると、色合いから受ける印象より味付けはかなり薄め。実はソース後がけスタイルのため、提供時点での味付けは下味程度だ。卓上に置かれているキッコーマンのデリシャス中濃ソースを適量掛けると、味わいの輪郭が強調される。

デリシャス中濃ソースを後がけ

麺は前述した稲庭中華めん。稲庭うどんを始めとする手延べ干しうどんに共通する、ツルツルした喉越しが特徴的だ。麺の長さもちょうどよく食べやすい。肉カスのコクや後がけソースと相まってめっちゃウメーン!

ツルツルした喉越しが特徴的

ボリュームも、中盛で出来上がり350グラムとかなり食べごたえがある。しかも大盛無料。阪田さんによると、単価をいかに抑えるかという観点で食材を選び、オペレーションを構築した商品だそうだ。

阪田さん、ドルフィンさんとの3ショット

阪田氏のソース後がけ焼きそばを私が食べるのは、実は今回が初めてではない。西武新宿線・都立家政駅の麺や七彩が、2011年12月頃に裏メニューとして後掛けソース焼きそばを提供した。当時、隣の野方駅に住んでいた私はそれを食べた経験がある(当時は平打ち手打ち麺)。また、ラーメンを乾麺に切り替えたのを食べた記憶も、今回の訪問で思い出した。品は違えど、10年以上を経て改めて食べることになるとは感慨深い。

神保町 キッチンきらく 中華そばメニュー

焼きそばだけでなくラーメン(稲庭中華そば)も食べてみたくなったので、後日、妻を伴って再訪してみた。”炙り焼き”肉そば(1500円)と、チキンライス(770円)をそれぞれ注文。

炙り焼き肉そば 1500円

“炙り焼き”肉そばは、分厚い肉が何切れも入っていて満足度満点。深みのある醬油スープをまとった稲庭中華めんは、いくらでも啜れてしまいそう。長ネギのソリッドな味わいも良いアクセントになった。

チキンライス 770円

チキンライスも妻が絶賛していた。肉カス入りの味噌汁もめちゃ旨。つい最近、塩焼きそばもメニューに加わったそうだし、阪田氏の探究心の赴くままに、様々な試みがなされていくのだろう。焼きそば好きに限らず、注目したいお店である。

店舗情報住所: 東京都千代田区神田神保町1-5 M2神保町 1F
営業時間: 月: 11:00~16:00 18:00~20:00
水~日: 11:00~16:00
定休日: 火曜日
ホームページ
主なメニュー稲中やきそば 600円
稲庭中華そば 1000円~
チキンライス 770円