カラチの空
埼玉県八潮市は中古車ビジネスが盛んな影響でパキスタン人が多いらしい。とくに八潮市役所周辺にはパキスタン人向けの料理店が幾つかあり、『ヤシオスタン』なんて呼び方もあるそうだ。今回紹介するのはその一軒、「カラチの空」というお店。
3月下旬、土曜日の昼時に訪問。バイクで訪れたのだが、ひとつ離れたブロックにまでスパイスの香りが漂っていた。道端に幟がはためき、看板も分かりやすいが、スパイスの香りを頼りに探すと確実に分かりそうだ。
店内はテーブル多数で照明はちょっと暗い。先客は日本人の家族連れが何組かいて、パキスタン人らしき客もちらほらいた。
内装は流麗に描かれたアラビア文字のカリグラフィーがあちこちに飾られ、イスラム美術を堪能できる。ちなみに後から調べたところ、パキスタンで使われているのは正確にはウルドゥー文字らしい。アラビア文字からペルシア文字が、ペルシア文字からウルドゥー文字が作られたとか。ただ読めない自分にはさっぱり区別がつかない。
厨房に面したカウンターの上には英語とウルドゥー語で日替わりメニューが書かれている。もちろん全てムスリム向けのハラールフードだ。目当てはチョウミンなのだが、ランチメニューや日替わりメニューには見当たらず。店員さんに「チョウミンあります？」と訊いてみると、「ありますよ」と別のメニューをくれた。
メニューを開くと1ページ目にたべあるキングのカレー担当、はぴいさんの紹介記事が綴じられていて、ちょっと笑ってしまった。これまでの記事もメシコレで親しくさせていただいているカレー細胞（H.Matsu）さんの記事も散々参考にしたし、南アジアの焼きそば特集はどうも自分の周りのカレーマニアの掌の上で食べ歩いている気がするなあ。
何ページか捲ると目的のページがあった。チキンチョウミン(1000円)には括弧書きで「スパゲティ」と書かれている。注文すると「はい、チキンチョウミンひとつー」と(たぶん)ウルドゥー語で厨房に通していた。
壁のメニューの横には、英語で「注文してから15分待ってね」という注意書きがある。この店内は、日本とは違うゆっくりした時間が流れているのだ。ちなみに周りは日本人もそれ以外もナンとカレーのセットを食べている人が多かった。
20分ほど待ってようやくサラダが出てきた。ランチタイムのサービスらしい。ゴマのドレッシングが掛かった普通のサラダで、味は特筆することなし。日本の普通の食堂で出てきてもおかしくない品だ。
続いてチョウミンも登場。割り箸を出してくれたけど、現地でも箸で食べているのかな？ そんな疑問を胸に早速いただこう。
麺は細めで柔らかいスパゲティ。太さからするとフェデリーニと呼ばれるパスタだろうか？ 新大久保のナングロガルで食べた麺と似てる気がする。具はチキン、キャベツ、人参、ピーマン、玉葱。味付けはチリとペッパーがメインで、ターメリックやクミンも使われている。割りとスパイシーだが、過剰ではない適度な辛さだ。素直に美味しいカレースパゲティという印象だ。
イスラム文化圏の料理というと、初台のシルクロード・タリムやさいたま市のシルクロード・ムラトで食べたウイグル料理を思い出す。あちらは手で伸ばすラグメン(拉麺)を細かく刻んだり手で千切っていたが、このパキスタン料理店ではスパゲティを使っている点が興味深い。ウイグルとパキスタンはカラコルム山脈を挟んで一応隣接しているが、山脈が障壁になって手伸べ麺の食文化はパキスタンにまで伝わらなかったのかな。
食後にホットチャイ(216円)を注文。溢れんばかりに並々と注がれたマグカップをテーブルに置かれた。気をつけて持ち上げたが、重いのと熱いのとで手がぶれてしまい少しこぼしてしまった。ミルクたっぷりで美味い。落ち着く。
店主らしき男性が機嫌よさげに鼻歌を歌っている。独特な節回しだったので、もしかしたらコーランの詠唱かも知れない。日本にいながらにして現地を体験できる貴重な店。お会計は1216円。首都高経由だと中野の自宅からバイクで50分足らず。パキスタンは意外に近かった。
というわけで南アジアの焼きそば系料理の特集は今回で締めとなります。ネパール、ブータン、インド、スリランカ、パキスタンなどなど、調べてみると色々と知らない麺料理が出てきて、私も新たな発見の連続でした。よかったらインド料理店に行ったら、インド中華のページがあるかどうか、探してみてください。
| 店舗情報 | TEL:048-933-9888 住所:埼玉県八潮市中央1-7-11 三木ビル 営業時間:11:30～23:30 定休日:無休 → ホームページ |
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| 主なメニュー | チキンチョウミン 1000円 チキンマンチュリアン 1000円 チキンフライドライス 900円 エッグフライドライス 900円 |
