生麺パッタイ専門店 新宿ディパッタイ

今年7月に「日本初!生麺パッタイ専門店」を謳う「ディパッタイ」という店が、新宿・銀座で立て続けにオープンした。PR会社へ委託したのか、新宿店の口コミやブログ・SNSへの投稿を、オープン直後の時期に多く目にした。

運営はオペレーションファクトリーという会社で9/19(土)には大阪心斎橋にもオープンしている。新型コロナ下での生き残りを掛けた、新業態展開のようだ。

生麺を使ったパッタイ専門店というと、2017年に東京駅のグランスタ丸の内でオープンした「マンゴツリーキッチン・パッタイ」が存在する。なので厳密には「日本初」と呼べないように思うが、まあ、それも定義によるのだろう。

個人的にはこういう店が増えるのは大歓迎だ。どんなお店でどんなパッタイを提供しているのか、9月上旬に新宿を訪れたついでに確かめてみた。

新宿中村屋ビル

新宿ディパッタイは中村屋ビルにある。エレベーターで7階へ上り、受付カウンターへ。このフロアは同じ会社が経営するイタリアン・レストランとタイ料理店があり、パッタイ専門店はそのタイ料理店の昼業態という位置づけだ。

新宿ディパッタイ カウンター

店員さんにイタリアンかパッタイか、目的を訊かれ、パッタイと応える。ランチタイムは客席の区分がないようだ。タイ料理店のテーブルは埋まっていたので、イタリアンの方の席へと案内された。

新宿ディパッタイ 店内の様子

オシャレな雰囲気のスペースにテーブルが多数配置されている。土曜の昼過ぎで、客は席に対して6割ほどの入りだった。

新宿ディパッタイ メニュー

メニューにはパッタイのバリエーションが並んでいる。私はスタンダードな自家製生麺パッタイランチ(890円)、連れはホルモンガーリックパッタイランチ(1250円)を注文した。

自家製生麺パッタイランチ 890円

しばらくしてパッタイが登場。トレイにはパッタイの他に、特製生姜スープ、ミニサラダ、小皿が付いている。パッタイは太めの麺を玉子、豚バラスライス、剥き身のエビと炒めてある。トッピングに干しエビ、砕いたピーナツ、生のニラが散らされ、茹でもやしとレモンが脇に散らされていた。

具沢山のパッタイ風焼きそば

味付けは濃い目だ。醤油と甘さを強く感じ、酸味は少なめ。添えられたレモンを絞ると爽やかな味わいになる。麺と一緒に炒められた玉子が、コクがあって自分の好みだ。エスニック系の焼きそばは、玉子の使い方が上手なんだよなあ。

ホルモンガーリックパッタイランチ 1250円

連れの注文したホルモンガーリックパッタイは、マルチョウやハチノスなどの牛ホルモンを使った品だった。モツの旨味が滲みて、濃厚な味わいのパッタイソースに合う。

ラー油はかなりの辛さ

一緒の出されたラー油は辛いので分量に気を付けるよう、事前に注意があった。どんな程度かと小匙一杯分を掛けて軽く混ぜ、一口すすってみる。むむむ。なるほどこれは辛い。ほどよい辛さを求めるなら、一滴ずつ様子見した方が良いだろう。

モチモチの生麺

さて、肝心の生麺だ。謳い文句の通りのモチモチ食感だが、ライスヌードルっぽくないのが気になった。これが「真空製麺機」による新製法なのかなと疑問を口にしたら、連れが「小麦粉って書いてあるよ」と教えてくれた。なるほど、メニューに「自家製小麦粉生麺」と明記されている。

「自家製小麦粉生麺」と明記

使われているのが米粉麺ではなく小麦粉麺と知って、私は「うーん」と考え込んでしまった。果たしてこれを「パッタイ」と呼んで良いのだろうか?

パッタイはもともと、第二次世界大戦の頃に、タイ国政府が国策として普及させた麺料理だ。中国からの小麦粉輸入を減らし、国内の米作を促進させるのがその目的だった。「シャム王国」から「タイ」という国名に変わった直後ということもあり、国名を含んだ「パッタイ」(タイ炒め)という名前をその麺料理に付けた。まさにタイの公的に認められた国民食で、米を原料に使うことが大前提なのだ。

そんな経緯を知っている私としては、どんなに美味しくてもパッタイに小麦粉を使われることに違和感がある。「これはあくまでもパッタイ風の焼きそばではないか」と、どうにもモヤモヤしてしまう。

この夏、セブンイレブンも生麺を売りにしたパッタイを販売した。しかし、そちらも「米粉入り中華麺」で、小麦粉が使われている麺だった。また、小麦粉アレルギーの方がグルテンフリーを期待して、パッタイを購入・注文するケースもあるだろう。それも含めて、パッタイ=ライスヌードルという前提を崩さないことが、提供者側には求められるように思う。

パッタイが日本に普及するのはとても嬉しいのだが、できれば本来あるべき形、ライスヌードルで作ってほしいし、小麦を使う場合は「パッタイ風」のような商品名にされることを願っている。

パッタイ専門店の看板

とまあ、あれこれ述べたが、味は美味しいし、価格もお手頃だ。パッタイ専門店で話題性もある。新宿駅周辺でランチタイムに悩んだら、ここを選んでハズレはないだろう。

ところで同じ運営会社が、8月に原宿で牛すじカレー焼きそば専門店をオープンした。お好み焼き屋の昼業態で、こちらもモチモチの生麺を売りにしている。

平日ランチタイムしかやっていないので、まだ訪問できていないが、そのうち立ち寄ってみたいと思う。

店舗情報住所: 東京都新宿区新宿3-26-13 新宿中村屋ビル 7F
営業時間: 11:00~15:30(L.O.15:00)
ホームページ
主なメニュー自家製生麺パッタイランチ 890円(期間限定価格)