Classic Cafe
アメリカ式中華料理、チャプスイ。野菜や肉を炒めてとろみをつけたごった煮料理で、前回はサンドイッチの具だったが、本来はご飯に掛けるのが一般的な食べ方だ。揚げ麺に掛けることでカタ焼きそばが誕生したこともあり、焼きそばとも関係が深い。例えば日本でも「チャプスイ麺」という名前であんかけ焼きそばを提供している店があるし、インド中華ではカタ焼きそばをそのままズバリ「アメリカン・チャプスイ(チョップシ)」と呼んでいる。
ところで、ここから話がややこしくなる。ボストンのあるマサチューセッツ州を含む、アメリカ合衆国北東部のニューイングランドと呼ばれる地域にも、実は「アメリカン・チャプスイ(American Chop Suey)」と呼ばれる家庭料理が存在する。これがマカロニをトマトベースのソースで煮込んだ、全く中華料理とかけ離れた品なのだ。
実際に食べてみたいが、家庭料理のためか提供している店の情報がほとんど無い。それでもボストン近郊を丹念にリサーチしたところ、ボストン市街の北西5マイルの距離にあるメドフォード市(Medford)に、Classic Cafeという店を見つけた。ニューヨークからボストンへ移動した当日、地下鉄とバスを乗り継いで訪れてみた。
Classic Cafeに到着したのは13時半過ぎ。店舗は閑静な住宅街の1角にあった。営業時間が朝7時から午後3時までだが間に合ってよかった。店内は落ち着いた雰囲気でボックス席が幾つか置かれている。先客は1人だけだったが、あとからポツポツと地元のお年寄りが訪れてきた。BGMは低音量の無難なポップス。文字通りクラシックなカフェだ。
手近な窓際のテーブルに着席。ウェイトレスさんがメニューを持ってきてくれたが、目的の品はホワイトボードの「おばあちゃんの料理(Grandmother’s Dishes)」に書かれていた。左半分の上から7品目、”American Chop Suey with Parmesan ($9.99)”。パルメザンチーズ入りなのね、と頷きつつ、アメリカン・チャプスイとブラックコーヒー($1.99)を注文した。
ブラックコーヒーはマイルドで量たっぷり。日本で「アメリカン」と呼ばれるタイプによく似ている。そういえばアメリカ人は一般的に紅茶よりコーヒーを好むそうだが、それが今回滞在したボストンと無関係では無いらしい。
1773年、イギリス政府が定めた植民地に不利な紅茶への課税(茶法)に対し、アメリカでは「代表なくして課税なし」をスローガンにイギリス政府に対する反感が高まった。その流れでイギリス東インド会社の船に積まれた紅茶を海に全て投げ捨てた、あのボストン茶会事件が発生する。イギリスへの対抗意識から紅茶の不買運動も起き、代わりにコーヒーを愛飲する人が増えたそうな。
そんなエピソードを思い出しつつコーヒーを啜ること、たっぷり15分以上。ようやくアメリカン・チャプスイが出来上がった。事前の情報の通り、中華料理のチャプスイの面影は全くなく、インド中華のアメリカン・チャプスイとの関連性もなさそうだ。とりあえずいただこう。
使われている食材はマカロニと牛ひき肉、トマトソース。パルメザンチーズは混ぜ込んであるのかな。それらを深みのある耐熱容器に入れてオーブンで焼き上げた、いわゆるキャセロール料理の一種だ。肉の煮物という意味ではラグーと呼んでも良いのかな。
肉とトマトの他にもいろいろ香辛料も加えているのだろう。味付けの塩梅が絶妙でめちゃウマい。緑の野菜も混じっていたが、これはグリーントマトっぽい。アンチョビが香るガーリックトーストが添えられていて、それに乗せても相性バッチリ。卓上のチリソースを加えても良し。量たっぷりでパット見は大丈夫かなと思ったけど、こんなに美味しいなら文句なし。問題なく完食した。
それにしてもこれを「アメリカン・チャプスイ」と名付けるセンスがやはり面白い。こちらの記事でも分析されているが、たぶん「ごった煮」的な意味合いで「チャプスイ」という名前がつけられたのだろう。同じくマカロニを使ったマカロニ・アンド・チーズを先日紹介したが、個人的にはこっちの方が好みだな。美味しければ結果オーライ。
ウェイトレスさんもさり気なくコーヒーのお代わりを注ぎに来てくれたり、接客も素敵なカフェだった。お会計は$12.82+チップ。滞在期間がもっと長ければ、こういうお店をもっと丹念に食べ歩いてみたかったなあ。
店舗情報 | 住所: 174 Spring St, Medford, MA 02155 Tel: (781) 391-1049 営業時間: 7:00〜15:00 定休日: なし → ホームページ |
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主なメニュー | American Chop Suey w/ Parmesan $9.99 |
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