三河屋
「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎。人呼んでフーテンの寅と発します」
平成生まれでもこの口上に聞き覚えのある人は居るだろう。京成金町線柴又駅の改札を出ると、帝釈天への参道の手前に渥美清が演ずる寅さんの銅像が立っている。斜に構えたその肩の左後ろに見えるのが今回紹介する店、三河屋である。
京成金町線は京成高砂駅と金町駅を結ぶ、わずか2.5㎞の短い路線だ。全線が葛飾区内に収まり、中間にあるのが帝釈天で有名な柴又駅。金町方面のホームから構内踏切を渡って柴又駅の改札を出るとすぐ左に目立つ黄色い看板があった。実に分かりやすい立地だ。これは迷いようが無い。
訪れたのは9月上旬の日曜日、昼過ぎ。物見遊山に訪れる人たちが名物の今川焼で小腹を満たすため、あるいは暑さしのぎにカキ氷などを求めて、お客さんがひっきりなしにやってくる。客足の切れ間に自分も店頭でカレー焼きそば400円を注文。焼きそばはあらかじめ調理したものを準備しておき、注文が入ると鉄板で炒め直すスタイルのようだ。外にテーブルとベンチも用意されているが、店内を覗くとそこにも客席があった。「中で食べても良いですか?」と訊くと「どーぞー」との返事。お金を先に払ってから店内へ移動する。
店内には先客が一人。焼きそばを食べている。お冷はセルフサービスらしい。改めて眺めるメニューは、焼きそば、今川焼、ドリンク類、カキ氷といった品ぞろえ。食事処というよりは甘味処か。しばらく待つと、「おまたせしましたー」と白い皿に盛られた焼きそばが運ばれてきた。
文字通り、焼きそばにカレーが掛けられている。先日紹介した浅草地下街の福ちゃんにもカレーを掛けた焼きそばがあるが、柴又まで文化として伝播したのか、あるいはこちらが発祥に近いのか。福ちゃんのように焼きそばとカレーライスを商っていれば「そのルーをこっちにも掛けてくれ」という客が居て当たり前なのかも知れないが、この店はカレーを使った他のメニューが無い点が珍しい。
中細で少し柔らか目の蒸し麺は、甘目のソースで薄く味が付けられている。焼きそばの具はキャベツのみで、脇に紅生姜が添えられている。そしてそこにたっぷり掛けられたカレー。具は肉片と玉ねぎでコーンがトッピングされている。ソースの香りとカレーの匂いが混ざり合って食欲を刺激する。麺に絡めて食べるとスパイシーでなかなか美味い。カレーの粘度はかなりドロッとしており思ったより辛かった。ボリュームも食事としては軽めだが400円なら十分な量だ。
お腹が空いてたこともありペロリと数分で食べ終えた。ご馳走様と店を出て寅さんの銅像を眺め、「早飯早●、芸の内」という地口を思い出す。「うーん、さすがにカレーを食べた後に云うべき台詞じゃないな」と独りごちつつ、帝釈天へ参拝に向かった。
店舗情報 | TEL:03-3657-0056 住所:東京都葛飾区柴又4-8-16 営業時間:10:00~20:00 定休日:木曜日 → ホームページ |
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主なメニュー | 今川焼き 80円 焼そば300円 大盛400円 肉入り焼そば400円 大盛500円 玉子入り焼そば350円 大盛450円 コーン焼そば350円 大盛450円 カレー焼そば400円 大盛500円 |
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