源来酒家

2016年6月22日

神保町の専大前交差点の北東側の裏路地に源来軒という中華料理店があった。創業者はやはり寧波の出身で、戦中戦後の苦労を経て1946年(昭和21年)に創業。こじんまりした庶民的な店で長年親しまれたが、昨年の7月25日に惜しまれつつ閉店した。

神保町 源来酒家

その源来軒の二代目店主の次男さん=三代目が平成8年頃に開業したのが今回紹介する源来酒家だ。靖国通り沿いにある立派なビルで源来軒譲りの寧波家庭料理を楽しめる。ネットの口コミでは煮立った土鍋で供される麻婆麺が人気のようだ。

1月下旬、平日の昼過ぎに訪問。わざわざランチタイムを外したのだがそれでも混んでいる。1階は一杯だったのでエレベータで3階へと促された。ちなみにエレベータは5階まであった。

3階でエレベーターを降りると、すぐ左手は配膳の準備スペースだ。正面を進むと大きな丸テーブルがあり、1人客はここで相席になるようだ。先客は例の麻婆麺を熱そうに手繰っていた。

源来酒家 焼きそばメニュー

さてメニュー。焼きそば系は柔らかい上海風と餡かけの広東風、焼きビーフンと鉄板ソース焼きそばの4種があった。予定通り、上海風焼きそば(1000円)を注文。

マグカップの絵柄が奇妙

マグカップで出された温かい中国茶が落ち着く。それにしても妙な柄のマグカップだ。植物なのだろうが何を描いているのか良く分からん。ヴォイニッチ手稿に載っていそうだ。

10分弱で焼きそばとスープが運ばれて来た。随分と大きなお皿に盛り付けられている。

上海風焼きそば(やわらかい) 1000円

麺はゴワっとした歯応えの中細麺。具は豚肉の細切り、エビ、イカ、貝柱、うずらの玉子、モヤシ、キャベツ、人参、ニラ、玉葱などなど。かなりの具沢山だ。

ゴワっとした歯応えの中細麺

エビは片栗粉を眩してあり、イカは丁寧に飾り包丁が入れられている。さすがの仕事ぶり。これだけ野菜が入っているのに余分な水分も出ていない。この辺が大衆中華屋と中華料理店の差かなあ。

飾り包丁など丁寧な仕事っぷり

味付けは中華醤油ベースで濃くはない。ただし刻みニンニクがたっぷり使われていて、かなり刺激的な味わいである。具材の旨味と麺の食感も加わって後を引く美味しさだ。

冷たいスープがちょっと残念

スープはワカメとかき玉子、それと賽の目に切った瓜が入っていた。単に冷めているのか、そもそも冷製なのか、冷たいスープだ。冬は温かいスープが欲しいので、これはちと残念。

入り口脇のレジでお会計。ここで仕切っている男性が店主なのかな。食べている間もちょくちょく客が3階までやってきた。繁盛店だなあ。今度は人気の麻婆麺もランチで食べに来てみたい。


さて。

「上海風(式)焼きそば」を提供している老舗の中華料理店を探し、創業が古い順にここまで5軒紹介してみました。維新號揚子江菜館漢陽楼新世界菜館、そして源来軒(源来酒家)。全て寧波の出身者が神保町で創業した店でしたね。同時代に創業した店で同じ系統の上海風焼きそばを出している店が他にもあるか念入りに探してみたのですが、ちょっと見つかりませんでした(※)。この特集の冒頭で述べた「上海風焼きそばは神保町で生まれた」という仮説の論拠として、なかなか説得力ありませんか?

ま、上海風焼きそば特集もまだまだ3分の1が過ぎたところです。引き続き、東京都内の上海料理の老舗を中心にご紹介いたしますのでこの先もお楽しみに。

※ 明治41年創業の広東料理店、横浜・華香亭本店にも上海風焼きそばがありますが、恐らく後から追加されたメニューなので今回の特集からは除外しました。

源来酒家

店舗情報TEL:03-3263-0331
住所:東京都千代田区神田神保町3-3
営業時間:11:00~23:00(土・日・祝:~21:00)
定休日:年中無休
ホームページ
主なメニュー上海風焼きそば(やわらかい) 1000円
広東風焼きそば(あんかけ) 1000円
焼ビーフン(カレー味も可) 1000円
鉄板ソース焼きそば 1000円

麻婆麺 1000円