杉乃家
前回も触れたが、3.11の原発事故の影響で福島県浪江町は全域が避難区域となってしまった。なみえ焼きそばを提供していた飲食店も当然全て避難しており、現在店舗を構えて営業再開してるのは一軒のみ。それが今回紹介する二本松市の杉乃家だ。
二本松駅前から100mほど離れた場所にある市民交流センター。このモダンな建物の一階で杉乃家は昨年7月に営業を再開した。3.11以前から一度なみえ焼きそばを食べたいと思っていたのだが、ようやくその念願が叶ったのは前回のせいせき桜祭りに先立つ今年3月末のことだった。
時刻は午前11時過ぎ。一番奥に10人掛けくらいのテーブルがドーンと置かれ、その手前に2人掛けテーブルが5卓ほど配置されている。平日で開店10分後なのに既に先客が居た。
「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」
一番手前のテーブルに腰掛け、お冷と一緒にメニューを受け取る。
やはり一押しはなみえ焼そばでご飯付きにも出来るようだ。元々はお蕎麦屋さんなので他にそば・うどんや丼物もあった。焼きそばは持ち帰りもできるらしい。
「なみえ焼そば(550円)をください」
「はい」
そのうち厨房から中華鍋を振るう音が聞こえてきた。厨房にいるのが店主ご夫妻だろうか。ホールは別に二人の女性が担当していた。
「お待たせしました、なみえ焼そばです」
大堀相馬焼の立派な皿に、これまた立派な極太麺の焼きそばが盛られて運ばれてきた。
なみえ焼そばの特徴であるうどん並の極太麺は思っていた以上に柔らかめだった。この店は5、6年ほど前から自家製の極太手打ち麺で焼きそばを提供するようになったらしい。味付けのソースはスパイシーさと甘味のバランスが絶妙で、柔らかい麺に良くしみている。具はシンプルにモヤシと豚肉のみ。このモヤシもなみえ焼そばの特徴のひとつで、たっぷりと使われていた。頭とヒゲ根が丁寧に処理されシャキシャキとした食感に仕上がっている。豚肉も脂身と赤身の配分の良い部位で美味しい。
「半分ほど食べましたらこちらの七味ニンニクもお試しください」
配膳の際にそう告げられていたので、途中でテーブルにあった七味ニンニクも掛けてみた。大蒜の風味と七味の辛味が鼻腔を刺激してこれまた美味しい。ちなみに発祥の店とされる縄のれんでは一味にニンニクを加えた「二味」が使われていたらしい。
食べ終わると皿に描かれた九頭の馬が現れた。「何事も馬九行く(うまくいく)」という浪江焼きそばのキャッチフレーズはこれに因んだものらしい。震災で割れずに残ったお皿を今も大事に使っているそうだ。この皿、意外に深みがあって焼きそばのボリュームもたっぷりだった。
会計時に120円のスナック菓子をお土産に購入。浪江町の他の店も一日も早く再開してくれることを願いつつ二本松を後にした。
そういえば。3.11に被災して休業していた石巻市の豊浦焼きそば専門店も既に営業を再開していると最近知った。嬉しいなあ。石巻へもまた行かねば。
店舗情報 | 住所:福島県二本松市本町2-3-1 営業時間:11:00~15:00、17:00~20:00 定休日:月曜日(祝日関係なく) |
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主なメニュー | なみえ焼そば 550円 ごはん付き 700円 |
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