ジャンソーアタル
ジャンソーアタルへ辿り着くのは難しい。昨年12月に北千住でオープンした居酒屋なのだが看板はなく、外観は完全に雀荘だ。あらかじめ知識がないと絶対に見つけられないだろう。
私が訪れたのは、7月末の日曜日。開店直後の明るい時間帯で、一人目の客だった。急な階段を登って店内へ入ると、そこはたしかに飲食店だった。元雀荘という物件の特性を活かした内装により、非日常な空間ができあがっている。
フロアは予想以上に広い。厨房を囲むU字カウンターは15人くらい掛けられそう。窓際には8人がけと、4人がけのテーブルもある。その4人テーブルは雀卓を再利用したもので、ガラス張りの天板の下には、キレイな大三元の手牌が倒されていた。
一人目の一人客ということで、手前のカウンターの一番端、煮込みの鍋の前に案内された。スタッフは皆さん若くて、接客も明るくハキハキして気持ち良い。
メニューには和洋折衷なオリジナル料理が並ぶ。飲み物も個性的な品名が多く、想像を掻き立てる。この日も暑かったので、まずは生ビールと眼の前の鶏皮煮込みを注文した。
生ビール(580円)はキリンのタンブラーで提供。お通しはゴーヤとキュウリの台湾粥。お粥をお通しで出されたのは初めてだ。このお店の攻める姿勢を表現しているようで面白い。
鶏皮煮込み(580円)は玉子入りで、思ったよりもボリュームがあった。よーく味が滲みていて、プルプル柔らか。添えられた柚子胡椒を付けても美味しい。お通しの台湾粥や名物の焼ビーフンから、煮込みも台湾の滷味(ルーウェイ)ぽいかと思ったが、八角などは使われておらず。
ビールがすぐになくなり、お代わりは五加皮チャイサワー(580円)。漢方薬入りの五加皮(ウカピ/ごかひ)酒を炭酸で割り、シナモンパウダーをトッピングしている。五加皮独特の香りが和らいで飲みやすい。
続いてスパイスラム焼(800円)と青のレモンサワー(630円)。オーストラリアから一度も凍らせずに輸入したというラム肉を使った、この店の一推しメニューだ。
鉄板でさっと焼き上げ、ステンレスのお皿に盛り付けて出来上がり。散らされたクミンシードが羊肉の美味さを引き出してくれる。添えられたパクチーとライム、ヨーグルトソース、サルサに絡めてアレンジするも良し。
青いレモンサワーは、名前の通り、ひらすら青い。そういえばラム肉に添えられていたのは、緑白赤のトリコロールカラーだった。麻雀牌の三元牌=白發中に見立てた盛り付けなら面白いな。
ちなみに店員さんは誰も麻雀をやらないらしい。まあ、いまは手軽で刺激的な娯楽が、他にいくらでもあるもんね。役やルール、点数計算を覚えるの、ハードル高いよなあ。
だいぶお腹がくちくなってきたが、牛ウニ焼売(680円)とバイスミントサワー(600円)もお願いした。蒸籠で蒸すので提供までに15分掛かる。頬張ると、牛がギュッと詰まってる。個性的なウニの風味と、旨味たっぷりの牛肉の相乗効果で、めちゃうまい。頼んでよかった。
最後の締めは、この店の名物の焼ビーフンだ。4種類ある中からニラビーフン(750円)を注文してみた。中華鍋ではなく、スパイスラム焼と同じく鉄板で調理するのが珍しい。あらかじめ仕込んだ具材とビーフンを絡めつつ、適度に混ぜ炒めてできあがり。
中華風の皿にこんもりと盛り付けられ、串切りの檸檬を添えて運ばれてきた。立ち上るゴマ油の香りが食欲を唆る。使われているビーフンは、台湾産の新竹米粉だそうだ。具はニラと砕いたアーモンド。それから干アミも入っていた。お好みでどうぞと渡されたニンニク醤油は、新橋のビーフン東を思い出させる。
弾力あるビーフンを啜ると、幾層もの味わいが渾然一体となって楽しめる。ニラの甘さにアーモンドの香ばしさ、干アミの旨味、レモンの酸味。具の取り合わせが実に面白い。ニンニク醤油を掛けても美味い。
ちなみに合わせた飲み物は宇治抹茶ハイ(500円)。ニラビーフンの彩りとのコラボレーションで、緑一色(リューイーソー)だ。せっかく雀荘へ来たのだから、役満であがりと洒落てみた。
この日のお会計は6688円。一人飲みにしてはずいぶん飲んだし、食べ過ぎた。しかし他にも注文してみたい品がまだまだ残っていたので、そのうち複数人で再訪してみたい。その時の道案内は自分が買って出よう。
店舗情報 | 住所: 東京都足立区千住1-33-11 上野ビル 2F 営業時間: 16:00~23:30 定休日: 不定休 → ホームページ |
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主なメニュー | 焼ビーフン 各種750円 スパイスラム焼 800円 |
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