ほそのや

もんじゃ焼きにはいくつかの異名がある。足立区や埼玉、川崎などでは「ぼった」「ぼった焼き」と呼ばれることが多い。また、浅草周辺では「水焼き」と呼ぶ店もある。また、茨城県の大洗町では、「たらし」と呼ぶ。地元の方々の調査によると、戦前からの呼び名らしい。今回紹介するほそのやも、その「たらし」を商ってきた店の一つだ。

大洗町 ほそのや

ほそのやは大洗港フェリーターミナルに近い商店街の、入り組んだ裏手に暖簾を掲げている。現在は土日のみ、夕方4時までの営業だ。訪れたのは9月中旬、土曜の午後3時過ぎ。店舗は御自宅の延長なのだろう。地図を頼りに向かったが、暖簾が無ければ入店を躊躇してしまう店構えだ。

大洗町 ほそのや 店内の様子

客席は小上がりが2卓、テーブルが1卓。先客の2組3人が談笑している。皆さん、アニメ作品『ガールズ&パンツァー』、愛称『ガルパン』のファンらしい。大洗が『ガルパン』で町おこしをしているのは知ってたが、このほそのやは定番スポットの一つで、聖地巡礼の方々が数多く訪れているようだ。

ガルパンファンの聖地らしい

店主のご婦人、細野谷さん(「ほそのや」は屋号ではなく苗字なのだ)も、しっかり『ガルパン』をリサーチされていて、ファンの方々と楽しく話されていた。凄いなあ。

ほそのやさんとはTwitterで相互フォローをしていたので、事前にDMで訪問することをお伝え済みだった。予定よりだいぶ遅れての到着だったが、入って即座に気付いて下さり、テーブル席へと促された。

ほそのや メニュー

ここで残念なお知らせ。新型コロナの衛生対策で、客が自分で焼く「たらし」は現在販売を中止しているとのこと。楽しみの一つだったが仕方あるまい。そんな訳で注文は、焼きそば(600円)とお好み焼き(600円)、お茶(200円)を2つでお願いした。

焼きそばの材料

まずは焼きそば。運ばれてきたお皿には、蒸し麺、キャベツ、モヤシ、玉ねぎ、ピーマン、ニンジン、豚挽き肉が盛られている。熱した鉄板に豚挽き肉を落とし、油を掛け、挽肉を囲むように野菜を広げてじっくり焼く。

豚ひき肉と野菜をじっくり焼く

こちらの焼きそばは先代から挽き肉入りで、昔は挽き肉、キャベツ、モヤシ、そしてナルトを使っていたそうだ。ただナルトは日持ちしないため、他の野菜に変わったらしい。

麺をウスターで解して混ぜ焼きに

肉と野菜に火が通ったら蒸し麺を加える。那珂川を挟んだ那珂湊では渡辺製麺の茶色い二度蒸し麺が定着しているが、こちらは黄色で恐らく一度蒸し。ウスターソースでほぐし、コショウ、味の素、塩、唐辛子で味付けして混ぜ焼きにする。

焼きそば 600円

仕上げはお好みソースとウスターのダブルソース。皿に盛り付け青海苔を掛け、紅生姜を掛けて出来上がり。

意外とスパイシーな味付け

味付けは酸味勝ちのウスターがメインだが、お好みソースの甘さも生きてる。唐辛子も効いててスパイシー。

豚ひき肉は塊のまま使う

面白いのは豚挽き肉だ。そぼろ状にバラバラに焼くのではなく、ハンバーグやつくねのように最後まで塊のまま調理されている。特徴的な使い方だ。

お好みは混ぜ焼きだ。丼くらいの容器で生地と具をよく混ぜ、熱した鉄板に広げ、裏表をよく焼く。鉄板の熱源は中央に丸くあるから、2枚一度にではなく、1枚だけ焼くのが美味しいとのこと。

お好み焼きは挽肉入りの混ぜ焼き

焼き上がったらお皿に盛り付け、お好みソースを塗り、マヨネーズと青海苔をトッピングして出来上がり。お好み焼きも挽き肉入りで、こくがある。細かな具は未チェックだが、ふんわりした仕上がりの生地が美味しい。

ふんわりした仕上がりの生地

お話によると以前は駄菓子も置いて、おでんもやってたそうだ。今回食べた焼きそばもお好み焼きも駄菓子屋系にしては具沢山な品だったが、駄菓子屋の延長でたらしを提供する店は子供向けで、ちゃんとしたお好み焼き屋は大人向けと住み分けていたらしい。

そういった話も含め、この店の一番の売りは、店主さんのトークだろう。ガルパンファンとのお喋りも立て板に水だ。横で聞いてるだけでも楽しい。お腹も心も満たされてお会計。いつか新型コロナが落ち着いたら、「たらし」を味わいに再訪したい。

店舗情報住所: 茨城県東茨城郡大洗町磯浜町1045
営業時間: 11:00~16:00
定休日: 基本、土日のみの営業
ホームページ
主なメニュー焼きそば 600円
お好み焼き 600円
たらし(休止中) 600円