ラーメン若月
※2018年1月、閉店してしまいました。個人的に思い入れのあるお店だっただけに、とても残念です。長年、お疲れ様でした。そしてごちそうさまでした。
下記写真は2017年9月10日 NTV「波瀾爆笑」にて
新宿西口思い出横丁、通称・ションベン横丁。最近は観光地として有名になりつつあるようだが、呑み助にとっては馴染みの盛り場に過ぎない。全体的に価格設定が上昇してはいるようだが、年季の入った先輩方は、相も変わらず平日の昼日中から般若党と格闘している。
さて、その思い出横丁の中央やや北寄りの西側に、常に店頭で焼きそばの山を拵えてる店がある。それがラーメン若月だ。創業は1948年(昭和23年)というから、かれこれ60年の老舗である。焼きそばが名物だが手打ちのラーメンも有名である。思い出横丁には珍しく、呑むより食べる方が主体のお店だ。
三月初旬のまだ寒い季節。訪れた時刻は夕方17時頃。昼なお暗い路地から店内を覗くと先客は二人だけだった。長居するつもりはないので店頭側の短辺カウンターへ着席し、焼きそば(並)380円を注文する。樹脂製のグラスに注がれたお冷を飲みつつ、目の前で焼きそばが調理されてゆく様子を眺める。
山から取り分けた麺とキャベツにモヤシを加えて炒め、二種類のソースでさっと味付け。時々金属製のボウルに入った水にヘラを付けて、水分を加えてる。焼きあがったら丸い小皿に盛って青海苔と紅生姜をトッピングして出来上がり。皿を出す際に店主が無言で卓上のソースをそっとこちらに寄せてくれた。味は薄めで、自分で好みの味に調えるスタイルか。ラーメンと餃子を出す店なのでカウンターにはソースの他にも醤油・酢・七味・胡椒が置かれている。
麺はやや太く四角い断面で扁平気味。肉が入って無い食感を補うためだろうか、焦げてカリカリになってる部分も多く、なかなか良いアクセントになっている。皿が小さいため少々食べづらいが、そもそも麺の分量が少ないので、呑んだ後の締めにも軽く腹に収まりそうだ。
先客と店主の会話を聞くと、現在は店主ご夫妻とお手伝いの女性の三人で切り盛りしてるらしい。女性は今日は休みで、奥さんは奥の方で何やら作業をしていた。
私が初めてこの横丁を知ってから、既に二十年が経過している。横丁の名称は小奇麗になり公衆トイレも整備され、そして何軒かの店が今はもう無くなってしまった。調理人の技術に大きく依存する食文化は、一度失われると取り戻せないことが多い。時期的な理由も大きいが、焼きそばを始め終戦直後の頃に生まれた料理が一つ、また一つと消えつつある。「もう一度あの味を食べてみたい、食べさせたい」という願いは誰もが経験してることだろう。「誰それと食べたあの味」との別れは、思い出も含めたその人との二度目の別れである。愛別離苦が人の定めだとしても、それは二重に悲しい。
後から来た客がラーメンを丁度注文したところでお会計。この横丁もこの味も、末永く続いて欲しいものだ。
店舗情報 | 住所:東京都新宿区西新宿1-2-7 TEL:03-3342-7060 営業時間:11:00~翌1:00 定休日:日曜日 → ホームページ |
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主なメニュー | 焼きそば 並380円 大450円 手打ちラーメン 450円 |
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