とみ

2015年11月25日

周防・柳井と伊予・松山を結ぶ防予フェリーの発着所、松山市三津浜。この港町に、三津浜焼きと呼ばれるお好み焼きがある。前回紹介した土佐清水のぺら焼き同様、一銭洋食をルーツとするコナモノだ。広島焼きに似た作り方だが広島は豚肉、三津浜焼きは牛肉を使う点で、よりルーツの一銭洋食に近いとする説もある。

三津浜の地を訪れたのは5月中旬の昼前。三津浜焼きで最も定評があるのは日の出という店だが、その日が定休日だとすっかり忘れていた。代わりに入ったのが「お好み焼き・とみ」という店だ。

三津浜焼き とみ

伊予鉄道三津駅(≠JR三津浜駅)から港方面に出ると、川を挟んだ目立つ位置に看板を見つけた。駅前だけで他にも何件かお好み焼きの店があり、食文化としての定着ぶりを感じる。

店内へ入ると、人の良さそうなおばちゃんが「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。客席の構成はメインの焼き台とサブの焼き台テーブル、それとテーブル。全部で10人余り入れば一杯になるような、こじんまりした店だ。後で調べたところ、割と新しい店らしい。そういえば店内もこざっぱりしている。先客は焼き台テーブルに腰掛けて注文した品を待っている地元のおっちゃん3人組。

とみ メニュー

メニューは壁に貼られていた。お好み焼き屋なのにお好み焼きの文字が無い。実は三津浜では小麦粉の生地の部分を「台」と呼び、そば(中華麺)入りだと「台付きそば」と呼ぶ。さらに肉と玉子を入れれば「台付きそば肉玉入り」となる。

当サイトのテーマは焼きそばだが、この「台付きそば」という独特の呼び方を以って、三津浜焼きも広い意味で焼きそばのバリエーションとも考え得られないだろうか。まあ、広島風お好み焼きや関西のモダン焼きもいずれ取り上げるつもりだったので、その辺は大らかに考えていただきたい。

「ご注文はお決まりですか?」
「台付きそば、肉・玉子入り(600円)を一つ」

注文を終えてから、その隣のメニュー「かたじ入り」に気付いた。説明書きによると「かたじ」とは牛スジの方言で、どうもそれがこの店の名物らしい。

「あ、すみません、まだ変更できますか?」
「はい?」
「台付きそば、かたじ・玉子入り(650円)に変えたいんですが」
「いいですよー(笑)」

注文した品は全てメインの焼き台でおばちゃんが焼いてくれる。まず中華麺の玉を焼き台で焼く。色がついたら脇によけ、シャバシャバの生地をお玉で鉄板に薄く広げ、そこにそば玉を乗せる。さらにキャベツを載せ、ちくわ・天カス、そしてかたじをパラパラっと載せ、こちらの面にも生地を垂らす。

三津浜流 お好み焼きの出来るまで

ある程度火が通ったところでひっくり返してさらに焼き、具の焼け具合を確かめて全体を少し脇に避け、空いたところに玉子を割り落として葱をパラり。ここで葱を使うのがこの店の特徴らしい。黄身を崩したところに先ほど避けといた本体を乗せ、ちょっと焼いてからひっくり返す。小手で半分に切り分け、ソース・鰹節粉・青海苔で味付けして出来上がり。

台付きそば かたじ・玉子入り 650円

生地はモチっとした食感で端の方はパリパリしている。中細麺のコシと相まって面白い歯応えだ。ちくわと玉子の風味にキャベツの甘味、そしてかたじのコクとコリコリした歯応え。甘めのソースがそれらをまとめ、それぞれが引き立てあって美味しい。ボリュームもなかなかのもの。

出来立て熱々で美味い!

他の3人も全く同じかたじ入りを食べていた。鉄板から直接小手で食べるのでなく、皿と割り箸で食べるのはこの店の特徴かも知れない。

三津浜港のフェリーを利用する際の腹ごなしにも丁度良さそうな品、三津浜焼き。松山を訪れた際に、ちょっと足を伸ばしてみてはいかが?

お好み焼き屋 とみ

店舗情報TEL:080-6395-3196
住所:愛媛県松山市住吉1-5-39
営業時間:10:30~15:30頃まで
定休日:第2第4木曜
ホームページ
主なメニュー台付きそば、台付きうどん
 肉・玉子入 600円
 かたじ・玉子入 650円
 イカ・エビ・肉・玉子入 700円
焼そば、焼うどん
 肉・玉子入 550円