沸騰小吃城

半年ほど前の記事でも言及したが、ここ最近、ガチ中華への注目がさらに高まっている。メディアに頻繁に取り上げられる店の一つが、池袋にある友誼食府というフードコートだ。中国各地のローカルな料理が、一箇所であれこれ食べられるので、好事家に重宝されている。ただしいつも混んでいて、席の確保や注文方法の難易度が高い。

池袋 沸騰小吃城 外観

私も何度か友誼食府を覗いてみたが、焼きそば系メニューがあまりないこともあって、まだ実食したことがない。代わりといっては何だが、私が個人的によく利用しているのが、今回紹介する沸騰小吃城だ。ここも中国現地スタイルのフードコートで、池袋北口から3分ほど歩いた場所にある。

池袋 沸騰小吃城 店内の様子

雑居ビルの3階までエレベーターで登れば、ワンフロアまるごとホールになっている。客席が多いので、待たされたことはまだない。着席するとテーブルごとに発行されたQRコードを渡される。各自のスマホでそれを読み取ると、各種メニューが表示され、そこから注文する。いわゆるモバイルオーダーシステムが採用されている。

QRコードを読んでスマホで注文

メニューは地域別に分類され、各地の定番料理が並んでいる。日本では見慣れない品ばかりなのが、ガチたる由縁だ。私はなるべく同じ地域の料理を選ぶようにしているが、注文の組み合わせは全く自由。北方と南方でも、甘いのと辛いのとでも、食べたいものを好きなように頼もう。

福清・沙県グルメ 福清海鮮麺

直近で訪れたのは6月上旬の土曜の昼下がりで、注文したのは「福清・沙県グルメ」から、福清海鮮麺(フーチンハイシェンミェン/900円)と紫菜餅(ツーツァイピン/385円)の2品を選んでみた。どちらも福建省福州市にある福清市の名物らしい。この記事によると、沸騰小吃城のオーナーが福清市の出身だそうで、そのため同地域の小吃が充実しているのだろう。

福清海鮮麺と紫菜餅

注文してしばらく待つとスタッフが料理を持ってきてくれた。フロアにはネコ型配膳ロボット=ベラちゃんも一台いるのだが、あまり稼働していない様子。一度動くとこを見たけど、スタッフが脇に付き添っていた。

福清海鮮麺 900円

福清海鮮麺。日本語表記は「福建海鮮焼きラーメン」だが、たぶん本来の料理名は「海鮮燜麺」(煮込み麺)ではないかと思う。実際スープは煮込まれたような濃厚さで、軽く浸る程度の量だ。

たぶん海鮮燜麺

麺は太めでもちもちした食感。具はカニ、アサリ、ベビーホタテ、白菜、小松菜、人参、キクラゲ、セロリなど。ニンニクの欠片も沈んでいた。スープの濃厚な海鮮風味とモチモチ麺があいまって、長崎チャンポンと太麺皿うどんの中間のような味わいだ。めっちゃウメーン!

長崎ちゃんぽんに通じる濃厚スープ

ちなみに長崎にある四海楼の創業者・陳平順氏も福清市(当時は福清県)の出身だ。拙著『焼きそばの歴史 下巻』で詳述したとおり、四海楼以前から長崎にちゃんぽんが存在していたというのが私の持論だが、今のちゃんぽんの味とスタイルに陳平順氏が大きく関わったであろうことに異論はない。現地をレポートした80cの記事でも、福清の海鮮燜麺と長崎ちゃんぽんの関係が言及されている。

今回たまたま頼んだ福清海鮮麺だが、まさか池袋で、福建省福清と長崎の繋がりを強く感じさせてくれる品を味わえるとは思わなかった。長崎出身の人に食べてほしいなあ。

紫菜餅 385円

紫菜餅は海苔を使った具が詰まった光餅(グァンピン)=生地の表面に白ごまが満遍なくまぶされた、福清市名物の揚げパンだ。日本のカレーパンより固く、生地はもっちりしている。海苔の風味は期待より控えめだが、食べごたえがあって美味しい。

この日だけでなく、それ以前も何度か一人で訪ねて、いろいろ食べている。初めて訪れたのは今年2月。その時は山東省や東北地方でおなじみの屋台料理、煎餅菓子(チェンビングォズ/527円)を味わった。

煎餅菓子 527円

煎餅菓子は一銭洋食や薄焼きのお好み焼きに似た料理で、中華風クレープとも呼ばれている。また、これまで何度か紹介した烤冷麺(焼き冷麺)も、この煎餅菓子から派生したという説もあるらしい。

一銭洋食を想起させる味わい

煎餅菓子の調理工程はYoutubeを探せばいくつも見つかる。鉄板に小麦粉生地を丸く薄く広げ、玉子を塗ってネギやゴマをちらして焼き上げる。その生地に味噌ダレを塗り、薄く揚げた「薄脆」や魚肉ソーセージ、野菜などを巻いてできあがり。

哈尔滨啤酒(ハルピンビール)

ほどよいボリューム感で、哈尔滨啤酒(ハルピンビール)のつまみにちょうど良かった。なお煎餅菓子を食べられるお店は都内に何店かある。大久保には専門店まで現れたらしい。興味ある方は調べてみてね。

熱乾麺と烤麺筋

それから5月に沸騰小吃城を訪問したときは、「湖南・湖北・雲南グルメ」から、熱乾麺(ルゥェグァンミェン/709円)と烤麺筋(カォミェンチン/345円)を注文してみた。

熱乾麺 709円

熱乾麺は湖北省の省都、武漢の名物料理だ。パスタを思わせるもっちりした麺に、練りごまベースの芝麻醤を絡めた和え麺だ。トッピングされたピーナッツと香菜の風味がゴマダレと混じり合って、濃厚でねっとりした味わいになる。

ねっとりした味わい

烤麺筋は、小麦粉由来の麺筋(グルテン)をソーセージ形に整形し、串に差して焼いたもの。トルネードポテトのような切れ目を入れ、シビカラな麻辣タレを塗って炙ってある。焦げ目が香ばしく、あとを引く味付けだ。

烤麺筋 345円

どの料理も一般的な中華料理店では味わえない品ばかり。中国大陸の物理的な広さと、そこに住む人々の多様性を感じさせてくれ、まるでパスポートのいらない外国旅行だ。まだまだ食べたい品がたくさんあるので、そのうち物好きを集めて再訪しなきゃだなー。

店舗情報住所: 東京都豊島区西池袋1-43-7 福住ビル 3F
営業時間: 11:00~23:00
定休日: なし
主なメニュー福清海鮮麺 900円
紫菜餅 385円
煎餅菓子 527円
熱乾麺 709円
烤麺筋 345円