山珍居
西新宿にある台湾料理の老舗、山珍居。創業は1947年(昭和22年)というから、ほんの2年前まで台湾が日本の一部だったわけだ。当時、台湾料理がどのようなポジションだったのか、あれこれ想像すると興味は尽きない。
初めて山珍居を訪れたのは昨年の10月上旬のこと。ふと焼ビーフンが食べたくなって、土曜の昼時に訪ねてみた。地下鉄大江戸線の西新宿五丁目駅から地上に出て、方南通りを新宿方面に少し進むと、「純台湾料理」の看板が目に留まった。
店内は歴史を感じさせる雰囲気だが、同時に清潔感もある。レジカウンターの奥のフロアにはテーブルが7卓ほど置かれていた。見上げれば梁には色紙がズラリと並んでいる。実はここ、日本SF作家クラブ発祥の地でもあり、星新一や小松左京、筒井康隆、はたまた手塚治虫や赤塚不二男など早々たる面々が夜な夜な集った店なのだ。
さてメニュー。平日だとランチメニューもあるのだが、土日はレギュラーメニューしか無く、少々お高め。焼ビーフン(焼米粉)は700円、汁ビーフン(汁米粉)は1000円と「簡単なお食事」の品々はまだお手頃な方なのだが、一品料理だと軽く2~3000円の値段が付けられている。おぜぜに余裕があればいろいろ試したいけど、今日のところは焼ビーフンとヒーワン(魚丸/800円)の2品を注文。
待つ事10分足らずで料理が運ばれて来た。まずは焼ビーフン。麺は極細のビーフン。メニューでは「お米で作ったソバ、消化が良く食べなれるとまことに美味なもの」と紹介されていた。「食べなれるとまことに美味」という表現が、なかなか絶妙で面白い。
その「お米で作ったソバ」が蝦米(干した小エビ)やキャベツ、モヤシと炒めてある。ボリュームはかなり軽めだ。トッピングにはチャーシュー・ハム・錦糸玉子・筍・グリンピース。この盛り付けの彩りも当時としては新鮮だったのかも知れない。
ビーフンは期待通りの美味しさだ。ツルツルでもズルズルでもなく、モサモサというオノマトペを使いたくなる独特の食感。味付けはごくごく控えめなで、ほんのり油脂が香る程度。しかし付け合せの味噌ダレが強烈で、パンチの効いた味わいだ。あえて味噌ダレを使わずに食べるのもありだと思う。能書きにあったように消化が良いためか、軽々と胃の腑に収まってゆく。
そしてヒーワン。漢字表記の「魚丸」は魚肉のすり身で作った団子のことで、「ヒーワン」はその台湾読みだ。団子の歯応えと香りが素晴らしく、澄んだスープは滋味に溢れている。浮いているのはネギかと思ったが、この風味はセロリか。コショウが良い仕事をしていてかなり美味しい。喉に引っかかりやすい焼ビーフンには欠かせない相棒といえるだろう。このスープならヒーワングランプリ優勝だな。
ビーフンとヒーワンをペロリと平らげてお会計。その際、デザートとして台湾でおなじみのパイナップルケーキ(鳳梨酥/180円)もひとつ購入した。久しぶりに食べたが、しっとりした餡の甘味と酸味で食後の満足度アップ。こういう歴史ある店は、コストパフォーマンスとは全く別次元で評価したいなあ。SF好きな方、聖地巡礼にいかがでしょう?
店舗情報 | TEL: 03-3376-0541 住所: 東京都新宿区西新宿4-4-16 営業時間: 12:00~14:00 17:00~22:00(日曜は通し営業) 定休日: 月曜 |
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主なメニュー | 焼ビーフン(焼米粉) 700円 ヒーワン(魚丸) 800円 |
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