江山楼 中華街新館
※長崎皿うどんに興味のある方は、長文コラム『長崎皿うどんの歴史的考察』もぜひご一読ください。
先週、新和楼の記事で紹介した通り、長崎の新地中華街は「田」の字のようなわかりやすい区画だ。十字に交差する道路の端には四つの門が設けてあり、各々が四つの方位を守る四神になぞらえ、「玄武」「青龍」「朱雀」「白虎」の名で呼ばれる。
東方に位置する青龍門のすぐ脇にあるのが今回紹介する中華菜館・江山楼の新館。創業は昭和21年(1946年)。本来はその斜向かいにある本店の方へ行くつもりだったのだが、ついうっかり間違えて新館へ入ってしまった。食べ終えて店を出てようやく気付いたが、もはやあとの祭り。「ま、いっか」ってことで済ませた。
江山楼を訪れたのは平日の夜19時半過ぎ。ホール担当の女性は意外にもみな和装だった。中華料理店で和装の接客というのは卓袱からの流れだろうか。なかなか趣がある。一階のフロアには4人掛けのテーブルがずらっと並んでいる。入店時には比較的空いていたのだが、食事中に徐々に混みはじめ、帰る頃にはほぼ満席になっていた。
メニューを渡され、ちゃんぽん・皿うどんのページを開く。皿うどんは細麺・太麺に加え、上と特上があり。上皿うどんの漢字表記は「(什景)炒麺」。英語表記は「Fried Noodle with Chop Suey Special」。「炒麺」と「Chop Suey」(チャプスイ)の文字にふむふむと頷く私。なんのこっちゃと思った人は、『長崎皿うどんの歴史的考察』をお読みください。
選んだのは特製什景炒麺(王さんの特上皿うどん/1500円)。長崎へ来て以来、細麺皿うどんばかり食べてきたが、今回はあえて太麺を注文した。ちなみに「王さん」は江山楼創業者の王玉官氏のこと。
「餡は掛かってないけど、よろしいですか?」
「はい」
一緒に頼んだ瓶ビール、キリン一番搾りを飲みながら待つこと5分余り。和装のお運びさんが特上皿うどん(太麺)を持ってきてくれた。
太麺の皿うどんはちゃんぽん麺と具を混ぜ炒めにする店と、焼いたちゃんぽん麺に餡を掛けるあんかけタイプの店に大別される。江山楼は前者。豚肉・紅白はんぺん・竹輪・アサリ・イカ・キャベツ・モヤシ・ニラ・筍・シメジが混ぜ炒め。さらに小さなフカヒレ、貝柱、エビ、肉団子、肉の入った魚のすり身団子、ウズラの玉子がトッピングされている。さすが特上、具も豪華だ。
そして江山楼の太麺皿うどんは、ちゃんぽん麺を一度揚げてあるのが大きな特徴だ。創業者のお孫さんに当たる現専務取締役・王文耀氏へのインタビュー記事によると、「太麺はちゃんぽんの麺を一度揚げてからちゃんぽんのスープ、醤油などの調味料で炊き込んだ商品」とのこと。揚げ麺をスープで戻すことにより、独特なモチモチの食感が生まれ、麺自体にスープの旨味もがっつり滲み込む。これがめっちゃ美味い。
揚げたちゃんぽん麺をスープで煮込んで、汁気がなくなるまで炒めるやりかたは、福岡の天神にある福新楼の「博多皿うどん」と同じ作り方だ。福新楼自体は明治37年創業だが、博多皿うどんは「昭和初期に福新樓二代目・張兆順がはじめて作ったもの」らしい。ここ江山楼は別に元祖を標榜しているわけではないが、互いに何か影響があったのかちょっと気になる。知れば知るほど知りたいことが増えて行く底なし沼だな。
トッピング類も豪華なだけでなく、しっかり旨味に役割を与えている。フカヒレも小さいながら、食感が素晴らしい。そして江山楼独特の「特製ソー酢」も面白い。長崎で皿うどんにウスターソースを掛けるのはこれまで散々触れてきたが、江山楼ではチョーコー醤油に依頼して、この特別な「ソー酢」を作ってもらっているとのこと。お酢に甘さと出汁の風味が加わって、皿うどんの味わいが一層深まる。
ちゃんぽんをより濃密にした、旨味の塊のような江山楼の太麺皿うどん。絶対後悔しない味なのでぜひ一度トライしてほしい。
店舗情報 | TEL: 095-820-3735 住所: 長崎県長崎市新地町13-13 営業時間: 11:00~21:00 定休日: 不定休 → ホームページ |
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主なメニュー | 特製什景湯麺<王さんの特上ちゃんぽん>(細麺・太麺) 1500円 什景湯麺<上ちゃんぽん> 1000円 特製什景炒麺<王さんの特上皿うどん>(細麺・太麺) 1500円 什景炒麺<上皿うどん>(細麺・太麺) 1000円 |
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