にしむら
西日本のコナモノ屋ってことで特集しておりますが、お好み焼きの元になった一銭洋食から派生した品々を絡めて何店かご紹介します。焼きそばから少し離れる部分もありますがご容赦を。
四国の最南端、足摺岬を擁する土佐清水市には「ぺら焼き」という独特のコナモノがある。一銭洋食がルーツで、小麦粉と玉子の生地にジャコ天と葱を載せて焼いたものだとか。その発祥の店、にしむらでぺら焼きと焼きそばを食べてきた。祖母から数えて三代目、55年間変わらぬ味だそうだ。
訪れたのは5月中旬の平日。狭い道の坂の途中で店も奥まっていて、地図が無いと分かりづらい場所だ。朝10時半の開店と同時に入店したら、まだ客席スペースに電気が点いてなかった。人の良さそうなおばちゃんとおっちゃんが何やら仕込んでる最中だ。
「すみません、もうやってますか?」
「ああ、大丈夫ですよ、どうぞ」
客席はメインの鉄板の周りに据えられた簡易ベンチ8人分をはじめ、他のテーブルや鉄板台を併せて20人くらいの席数だ。とりあえずメインの鉄板の正面に座る。
「ぺら焼きですか? 大きさはどうします?」
ぺら焼きは350円から好きな価格で大きさを指定できる。焼きそばは大・小のみ。ちなみにこの店ではお好み焼きを置いていない。ぺら焼きか、焼きそばかの二者択一である。
「ぺら焼きの350円と、あと焼きそばの小(350円)もください」
「はい、ちょっと待っててな」
まず調理はぺら焼きから。練った小麦粉をお玉でボウルに取り分け、玉子を混ぜて鉄板に広げる。そこに賽の目に切ったジャコ天と小口切りの葱をドバっと載せ、もうひとつ玉子を溶いて中央に広げる。
しばらくして一度ひっくり返し、全体に火の通ったところで端っこを少し折り畳むように返してできあがり。味付けは諸々好みに応じてくれる。
「味付けはどうします? 辛口甘口」
「辛口で」
「ほな、胡椒とソース塗っておきますんで」
「はーい」
「良かったら甘口のも置いときます、あとかつぶしと青海苔も」
「はいはい」
「フォーク? 小手?」
「小手で」
小手で切り分けてまず一口。ぺら焼きと言う名前だが思ったよりもフワッとした食感だ。ジャコと葱の風味が素朴な味わいで美味しい。最初は軽く食べられるかと思ったが、後で腹に溜まる品だ。
続いて焼きそば。鉄板で具を炒め、火の通ったところに麺を加えてソース・塩コショウで味付けしながら小手で混ぜ炒めて出来上がり。
麺は中細の蒸し麺でコシがある。具はキャベツ、人参、ピーマン、モヤシ、ジャコ天、蒲鉾。350円という値段なのに野菜たっぷりだ。マイルドなソース味でぺら焼きに負けない美味しさである。こちらも鰹節と青海苔はお好みで。
「どうです、お味は?」
「いやー、両方とも美味しいです。ジャコ天の風味がいいですねー」
「よかったわー、肉は一切使ってないんやけどね」
朝御飯代わりに軽くと思ったのだが、すっかり腹がくちくなった。この時間から既に電話注文も入って来ていたことから人気のほどが伺える。アプローチしにくい場所ではあるが、足摺岬の行き帰りにでもちょっと立ち寄ってはいかがだろうか。
店舗情報 | TEL:0880-82-2752 住所:高知県土佐清水市幸町8-7 営業時間:10:30~19:00 定休日:不定休 → ホームページ |
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主なメニュー | ぺら焼 350円~800円 焼きそば 小 350円 大 500円 玉子入り 400円 |
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