旬菜 和家 (東京都中野区)

7年近く前、当ブログで「もじよ」という店をこのブログで紹介したことがある。長崎の郷土料理を提供していた近所の店だが、その後、もじよは閉店し、「旬菜 和家」という店に引き継がれた。今回はその旬菜 和家を紹介したい。

中野区丸山 旬菜 和家

場所は野方駅から北原商店街を北上し、新青梅街道を渡ってすぐ。外観も内装も、もじよの頃とほとんど変わっていない。客席はカウンター5席、テーブル3卓、小上り1卓。店主は新潟県村上市の出身で、もじよ時代にスタッフとしても働いていたそうだ。私のことも覚えていてくれた。忙しいと常連さんが注文取りや品出しをしてくれるなど、店は和やかな雰囲気に包まれている。

アサヒスーパードライとお通しの温奴

メニューは店主の出身地である新潟の郷土料理のほか、日替わりで鮮魚や揚げ物などバラエティに富む品が並ぶ。この日のお通しは冷奴ならぬ温奴だった。飲み物は瓶ビールを注文。アサヒとキリンからアサヒを選択した。

栃尾の油揚げ焼 580円

とりあえずのツマミは栃尾の油揚げ焼(580円)と冷やしトマト(350円)。新潟県栃尾市名物のジャンボ油揚げは、油揚げのサクサクした口当たりと厚揚げの食べ応えが両立していて、大豆の味わいもはっきりわかる。私が初めて食べたのは2006年のことだったが、今では居酒屋なんかでちょくちょく見かけるようになった。冷やしトマトは期待通りのさっぱり味。岩塩なのか塩に赤い粒が混じっていた。

珍味・莫久来(ばくらい) 680円

続いて一杯だけ日本酒に切り替えて、珍味・莫久来(ばくらい/680円)を注文。ホヤとコノワタ(なまこの腸)を和えた塩辛を、箸でちょいとつまんで頬張ると、海の香りが鼻腔から抜けていく。日本酒は越後麹屋純米酒。1合750円。これと日本酒だけで長時間じっくり飲めそうだ。

鶏の竜田揚げ 650円

こちらは鶏の竜田揚げ(650円)。一切れ一切れが大きく、満足度高し。スダチにマヨネーズ、ハジカミと、添えられた品々で味変を楽しめるのも嬉しい。

なんとメニューにあのイタリアンがあるんです

そして締めは新潟が誇るB級グルメ、イタリアンだ。このブログをお読みの方はもちろんご存知だと思うが、新潟にはみかづきやフレンドというチェーン店があり、焼きそばにトマトソースやミートソースを掛けた「イタリアン」という食べ物が普及している。詳しくは約一年前に書いた「みかづき イトーヨーカドー丸大店」の記事を読んでほしい。この旬菜 和家では、なんとそのイタリアンを提供しているのだ。

イタリアン 680円

旬菜和家のイタリアン(680円)も、みかづきに倣って太麺を使用している。麺と一緒に炒めてある具はウインナー、キャベツ、モヤシ。たっぷり掛けられたトマトソースには、スライスされたマッシュルームがちらほら。さらに針生姜とカイワレ大根が添えてあり、ご丁寧にフォークがついてくる。焼きそば自体はソース味だが、トマトソースの風味を活かすためにやや抑制気味。野菜から出る水分で薄まらないよう、絶妙な塩梅で味付けされている。

フォーク&太麺&トマトソース

みかづきでは紅生姜ならぬ白生姜を添えるが、こちらの針生姜やカイワレ大根もなかなか合っている。オリジナルの完全コピーを敢えて目指してない無いのが却って面白い。量はかなり多く、一人ならこれともう一品くらいで満腹になるんじゃなかろうか。それにしてもこんな近所でイタリアンが食べられるとは灯台下暗しだった。

へぎそば(一人前) 750円

せっかくなので他の日にいただいたへぎそば(一人前 750円)も載せておこう。中越地方の名物でふのりを練り込んだへぎそばは、滑らかなのどごしと独特な風味、エッジの立った腰が魅力だ。初めて食べたのは小千谷の角屋という店で、2005年のことだった。懐かしいなあ。

店長さんとは村上にある焼きそば専門店・天茂(てんしげ)の話題でも盛り上がった。人口の多い東京でも、あの店へ行ったことあるが人は少ないだろう。しかも自分の場合は2度訪問したんだった。遠いけどまた行きたいなあ……。

この日のお会計は2人で6000円弱。近場にこういう店があると、とても助かる。タレカツ丼が未食なので、それも近々食べに行かねば。

タグ , , , コメントを見る

上海小吃 (東京都新宿区)

いきなりだが中華料理に特化したWEBマガジン、80c(ハオチー)をご存知だろうか。充実した内容の記事が多くて愛読しているのだが、中でも「中国全省食巡り」という連載がとても楽しい。執筆者は飽くなき探究心で中国本土を食べ歩いている酒徒さん。料理への思い入れがほとばしる文章で食欲が刺激されること間違いなし。ぜひご一読いただきたい。

歌舞伎町 上海家庭料理 上海小吃

その連載第一回「上海で食べるべき料理3選」では「菜饭」「糖醋小排」「葱油拌面」という料理が紹介された。どれも耳にしたことのない料理だが、記事を読むと無性に食べたくなる。可能ならもちろん現地へ行きたいが、とりあえず予習のつもりで食べておきたい。そんな欲求もあり、知り合い2人と新宿で飲む機会に歌舞伎町の上海小吃を提案してみた。

上海小吃 店内の様子

上海小吃は「思い出の抜け道」と呼ばれる一角にある上海家庭料理の店だ。「思い出の抜け道」は思い出横丁やゴールデン街にも増して往年の雰囲気を色濃く残すエリアで、足を踏み入れるだけでも楽しめる。店自体も中国本土を想起させる造りで、品揃えも幅広い。特に虫や珍しい肉・部位を提供する珍味の店として知られている。

まずは青島ビールで乾杯

まずは青島ビールで乾杯。2人に断って、例の記事で取り上げられていた料理3品を注文。この店が2軒めで胃袋もだいぶ膨れていたので、あれこれ試す余裕がない。お通しとして出された蓮根とパプリカの炒めものをつまんでいると、「菜饭」「糖醋小排」「葱油拌面」の順で運ばれてきた。

上海ならではの料理が並ぶ

1品目は上海菜饭(シャンハイ ツァイファン/1500円)。この店のメニューでは「上海野菜チャーハン」という日本語訳が当てられているが、正確には炒めた具を使った炊き込みご飯だ。

上海菜饭(シャンハイ ツァイファン) 1500円

件の記事によると本場では平たい巨大な鉄鍋を使うそうだが、この店では和風の土鍋を使っている。ラードを混ぜ込んだツヤツヤご飯と細かく刻んだ青梗菜に、干し肉らしき極小の赤い肉片が混ざっている。素朴ながらもコクたっぷり。滋味あふれる味わいだ。

糖醋小排(タンツゥシァォパイ) 1200円

続いて糖醋小排(タンツゥシァォパイ/1200円)。メニューの日本語訳は「スペアリブの甘酢煮」。「骨付き肉を中国から取り寄せた黒酢(香酢)で煮込んだもの」との説明書きが付されている。3〜4cmに寸断されたスペアリブを手に取り、前歯で骨からこそげ取るように齧りつく。濃厚な甘さとほどよい酸味の煮汁が、柔らかな肉と衣によーく滲みてて、実に美味い。極上の酒の肴だ。

葱油面(ネギ油ソバ) 850円

3品目が葱油拌面(ツォンヨウ バンミィェン)。この店では「葱油面/ネギ油ソバ(850円)」という名前で提供されている。ネギをじっくり炒めた油をベースにしたタレと麺を絡めた麺料理だ。タレは中国のたまり醤油・老抽や砂糖などを使っていて甘じょっぱい。食材は麺と葱だけというとてもシンプルな料理なのに、後を引く不思議な食味だ。

麺の食感も独特

味付けも特徴的だが、麺の食感も独特だ。太さは中細で断面は丸いストレート麺。原料は小麦粉だと思うが、もしかしたら乾麺かも知れない。押し出し麺ぽいムニュムニュした腰の無さで、雲南米線を思い出させる。

「油そばなら、焼きそばじゃなくね?」
「焼きそばブログで紹介していいの?」

そんな声が聞こえて来そうだが、実際のメニューを見てほしい。

メニューの葱油面(ネギ油ソバ)は……

実物はあらかじめ麺とタレが絡めてあってメニュー写真とは全く違う見た目だが、注目してほしいのはそこではない。

油で炒めたネギに麺を絡めた焼きソバです

油で炒めたネギに麺を絡めた焼きソバです

そう、この店のメニューではこの葱油面(ネギ油ソバ)を「焼きソバ」と紹介しているのだ。私個人の焼きそばの定義のひとつ、「焼きそばという料理名で提供されている」という条件にドンピシャで適っている。本来は「炒面(炒麺)」ではなく「拌面(拌麺)」なのだが、少なくともこの店の葱油面は焼きそば扱いでも間違いではないのだ。えっへん。

上海老酒・石庫門

青島ビールの後は上海老酒・石庫門をボトルで注文。「碧緑毛豆(ちんげん菜と枝豆/800円)」を追加するなどして、お会計は1人2700円くらい。以前、一人で食べた「麺筋絲瓜(麩とヘチマの煮込み/1500円)」も美味しかったし、珍味目当てでなくてもおすすめしたい店だ。

碧緑毛豆(ちんげん菜と枝豆) 800円

目的だった3品を全て食べることができ、新鮮な食体験を経て中華料理の奥深さをこれまで以上に実感した。ただ、あくまでもここは東京。いつかは現地、上海の専門店や人気店で食べてみたい。その思いを新たにした。

タグ , , , コメントを見る

東京焼き麺スタンド (東京都世田谷区)

都内周辺の焼きそば専門店はまだまだ数が限られている。それでも当ブログ開設当時に比べれて5倍以上に増え、特に2016年の新店オープンラッシュで急増した。一時期の勢いは落ち着き、既に閉じた店もあるが、今でも新しい専門店はポツポツ誕生している。

下北沢西口 東京焼き麺スタンド

今回紹介する東京焼き麺スタンドは、下北沢で7月1日にオープンした焼きそば専門店だ。意外かも知れないが、下北沢には焼きそばを主力にしている飲食店はこれまで無かった。この地での専門店誕生は実に嬉しい。

東京焼き麺スタンド 店内の様子

場所は下北沢駅西口側。本多劇場周辺の喧騒とは無縁の静かな通り沿いだ。居酒屋の2階への階段を上がって、右側の扉が入り口。客席は壁沿いのカウンターが5席に、2人掛けテーブルが1卓と、4人掛けが1卓。スタッフは男性3人。雨の平日夜で先客はいなかった。

東京焼き麺スタンド 券売機

正面の券売機のメニューは、スペシャル焼きそば(750円)と夜飲み5食限定のそばめし(850円)。あとはトッピングやドリンクのみというシンプルな品揃えだ。

セットドリンク 250円

千円札を滑り込ませてスペシャル焼きそば(750円)とセットドリンク(250円)の食券を購入し、スタッフに渡す。セットドリンクは生ビールかハイボールを選べ、ビールを選択。よく冷えたタンブラーに注がれたアサヒスーパードライがすぐに出てきた。

中華鍋で炒められたスペシャル焼きそば

調理は鉄板ではなく中華鍋を使っている。客席からでも火力が強いのが見て取れる。注文から9分ほどで出来上がり。トレイに載せられた焼きそばが運ばれてきた。

スペシャル焼きそば 750円

麺は太い生麺を使用。味付けはソース。具は豚肉とキャベツ。トッピングに目玉焼き、青海苔、紅生姜。構成要素はオーソドックスなソース焼きそば、そのものだ。しかし一つ一つの食材にこだわりが見て取れる。

三河屋製麺謹製のモチモチ太麺

太麺は北海道産小麦を100%使用。三河屋製麺の箱が積まれていたので、そちらに発注しているのだろう。その場で茹でた生麺ならではのモチモチした食感が特徴的だ。

中華鍋でしっかり焼き目をつけてある

しなやかな腰に加え、中華鍋でしっかり焼き目をつけてある麺には、ソースがよーく滲みている。ソースはオリジナルブレンドだそうで、甘酸辛のバランスが良い。トマトケチャップのような風味も香る。

豚肉とキャベツは一切れ一切れが大振り

具の豚肉とキャベツは麺とは別々に炒めて、盛り付けで合わせているようだ。それぞれ一切れ一切れが大振りで、豚肉の食べごたえ、キャベツの甘味が印象的だ。

過熱水蒸気で調理されたフワトロ目玉焼き

目玉焼きは壁に貼られた説明書きによると「加熱水蒸気(過熱水蒸気?)」で調理されているそうだ。絶妙な黄身の半熟具合で、麺に絡む。個人的には白身の端がカリッと焼かれた目玉焼きが好みだが、こういうフワッとした目玉焼きも美味い。

半分ほど食べたところで味変

半分ほど食べたところで、卓上の特製からしマヨネーズと七味も加えてみた。マヨの濃厚なコクと七味の辛さが食欲をさらに刺激する。全体のボリュームが結構あるので、こうした味変も楽しい。

総評としては、材料を吟味して丁寧に作った正統派のソース焼きそば、といったところか。やきそばる亀戸やきそばのようなパッと見のインパクトには欠けるが、誠実さを感じさせる美味しい一皿だった。

食後、お願いして少しお話を伺ってみた。店長の黒田康介さんはオープン直前の6月まで、大手町で証券マンをされてたという。仕事で飲食関連企業とも接点があり、前から興味があったとか。

元証券マンの店長、黒田康介さん

鉄板ではなく中華鍋で調理するのは、麺をまんべんなく焼くためと、パスタのようなバリエーションの広がりを想定してのことらしい。今はソース焼きそばと焼き飯だけだが、そのうち他の焼き麺も増えそうだ。

「焼きそばは国民食だけど、いまだ軽く見られている。その地位をもっと向上させたい」

その想いは多くの焼きそば専門店と共通しているところだ。お酒やおつまみをあまり置いていないのも、焼きそばで勝負したいから、とのこと。近々フードワゴンも始めるらしいので、そのうちそちらも訪れてみたい。下北沢へ来られた際は、ぜひ西口まで足を伸ばしてモチモチ焼きそばをご賞味ください。

タグ , , コメントを見る

炭火家おだづもっこ (東京都杉並区)

高円寺に牛タンや気仙沼ホルモンなど、宮城県の郷土料理を提供している店がある。屋号は炭火家おだづもっこ。そこに何やら変わった焼きそばがあるらしい。「友達がそこでバイトしてる」という知人と一緒に行ってみた。

高円寺 炭火家 おだづもっこ

訪問したのは9月中旬。平日の19時半くらい。JR高円寺駅から線路沿いを中野方面に歩き、環七を渡ると目の前に看板が現れた。店内はコの字カウンターとテーブルが2卓。客は7割ほどの入りだ。ちなみに「おだづもっこ」とは宮城弁で「お調子者」のことらしい。

炭火家おだづもっこ 飲み物メニュー

とりあえずカウンターに腰掛けて2人とも生ビール(480円)。ビールはサントリーモルツ。と、隣で飲んでるでかいジョッキが目に入り、2杯めはレモンサワー(420円)の超ドデカグラス(+300円)ってやつを注文してみた。

超ドデカグラスがでかすぎる

なるほど、でかい。生ビール用のジョッキがずいぶんと小さく見える。おかわりの手間が省けて、たぶん価格的にもお得なのだろうが、いかんせん手首が疲れるのが難点だな。

おごご 350円

この日のお通しは、鶏と豆腐の煮物だった。おつまみもいろいろ注文。まずは「おごご(350円)」。柚が香る白菜漬けだ。たぶん「おこうこ」を宮城弁で発音すると「おごご」になるのだろう。

カツオのなめろう 550円

続いてはカツオのなめろう(550円)。なめろうというとアジが定番だが、カツオもあるのか。カツオの旨味に薬味と味噌で酒が進む。超ドデカグラスが軽くなってゆく。

気仙沼ホルモン 650円

そして気仙沼ホルモン(650円)。半世紀ほど前から気仙沼で普及しているご当地グルメで、味噌ニンニクだれに漬け込んで焼いた豚のモツをキャベツの千切りと一緒に提供する。本来はウスターソースを掛けるらしいが、酸味の効いたタレもキャベツに合う。いつか現地でも食べてみたいな。

串もり5本 550円

他に焼き鳥の盛り合わせも注文した。串もり5本で550円。屋号に「炭火家」と冠しているだけあって、炭火焼きももちろん美味い。写真の3本とは別にあとから来た「丸ハツ」のプリッとした歯ごたえが特に印象的だった。

炭火家おだづもっこ メニューの一部

締めに目的のおだづもっこ焼きそば(680円)。この焼きそばはなんとイカの塩辛を具に使っているのだ。中細の蒸し麺とイカ塩辛をフライパンで炒めたところに、生クリームを適量注いで混ぜ合わせる。青ネギと海苔をトッピングして出来上がり。

おだづもっこ焼きそば 680円

口にするまではイカの塩辛さが尖り過ぎてるのではと予想していたのだが、生クリームがその角をまろやかにまとめあげている。和風パスタ屋の明太子スパゲティや、ニューヨークのYakitori Taishoで食べたサーモンクリーム焼きそばと似た塩梅だ。塩加減の強い食材でも、こうすれば焼きそばに使えるんだなあ。

塩辛の角を生クリームがまろやかに

途中から日本酒に移行して、お会計は7500円くらいだったかな。同行者の友達はバイトが休みの日だったが、たまたま客としてやって来ていて、二人で盛り上がっていた。駅から割と近い上に朝5時までやっているので、いつかまた利用させてもらおう。その時は牛タンを食べたいなあ。

タグ , コメントを見る

縄文の豚 (東京都新宿区)

新宿西口、思い出横丁のラーメン若月今年1月に閉店した。Twitterには嘆きの声が溢れ、閉ざされたシャッターに貼られたお知らせの紙には慰労のメッセージが寄せられた。

もちろん私も悲嘆にくれた。東京を代表する焼きそばの老舗。そして私が焼きそばブログを始めるに当たって初回記事に選んだ店でもある。思い入れはひとしおだ。

時は流れて今年の6月14日。若月の跡地にもつ焼きの店がオープンした。屋号は「縄文の豚」という。

新宿西口 思い出横丁 もつ焼き 縄文の豚

若月の頃は直線のカウンターだけだったが、縄文の豚では奥にも席を設けてL字カウンターになっている。内装もずいぶんと綺麗になったが、若月の頃の雰囲気は色濃く残っている。

おまかせ5本盛り 680円

お通しのキャベツ味噌が300円、もつ焼きのおまかせ5本盛りが680円。観光地化の一途を辿る思い出横丁の新店としては、リーズナブルで良心的な価格設定だ。焼台に立つのは寿司職人を30年やっていたという男性。その方のお話によると、同横丁に複数店舗を出店している埼玉屋さんの紹介で開業したそうな。

平日ランチで若月の焼きそばが復活!?

実はここからが本題。その縄文の豚では平日の昼間にランチをやっている。塩見なゆさんのツイートで知ったのだが、その縄文の豚の平日ランチで、なんとあの若月の焼きそばが復活したのだ! しかも焼いているのは元若月店主の竹内次作さん、ご本人というから驚きだ。

元若月店主、竹内次作氏が自ら焼きます

矢も盾もたまらず、平日に仕事を抜けて訪問してみた。ご本人にうかがったところ、健康上の理由で若月を閉店したが、ランチ程度の短時間なら大丈夫ということで、9月7日くらいから復活したそうな。若月を一緒に営まれていた奥様も、店には出ていないがお元気とのこと。いやー、良かった良かった。実に喜ばしい。

縄文の豚ランチメニュー

ランチの焼きそばは並盛り(500円)と大盛り(600円)がある。復活祝いも兼ねて大盛りと瓶ビールを注文。焼きそばの価格は100円ほど値上がりしていて、瓶ビールもサッポロ・キリンの両ラガーからプレミアム・モルツに変わってしまった。さらに焼きそば用の鉄板は新調され、中央にあった窪みも見当たらない。

鉄板で炒める手付きは当時のまま

しかし若月ファンとしては再び味わえるというだけで感謝したくなる。菜箸とヘラでチャッチャと焼き上げる竹内さんの手付きも当時のままだ。1948年(昭和23年)に創業した若月で、ご主人が焼きそばを焼き始めたのが今から約50年前。以来、半世紀。鉄板の前に立てば身体が自然と動くのだろう。

焼きそば 大盛り 600円

出来上がった焼きそばを皿に盛り付け、「はい、どうぞ」。若月独特の太い蒸し麺にキャベツ、モヤシ。青海苔と紅生姜をトッピングして、「味が薄かったらどうぞ」とソースのボトルを添えてくれる。ああ、まさかこの山盛りのビジュアルを再び拝めるなんて!

短く千切れて少し焦げた太麺

色が心持ち濃くなってキャベツもやや増えたかな。でも味わいはかつての若月と全く変わっていない。短く千切れて少し焦げた太麺の独特なあの歯応え。後がけソースをぐるっと掛ければ、より一層ビールに合う。あー、これだ。この味だ!

後がけソースをぐるっと掛けて

若月というと自家製麺のラーメンでも有名だった。そのため焼きそば用の麺も自家製と勘違いされがちだが、実は蒸し麺は業者へ特注している。以前は終日営業なのでまとまった量を仕入れていた。しかし平日ランチの分だけだと注文量が限られてしまう。蒸し麺は手間が掛かるため、量が少ないと普通は断られる。しかし今回は特別に請け負ってもらえて復活が実現したそうだ。製麺業者さんにも感謝感謝である。

後がけソースをぐるっと掛けて

そういえば日本テレビの『誰だって波瀾爆笑』という番組で、私が若月を紹介したのは昨年9月10日の放送回だった。それからちょうど一年。この一年の間に若月が閉店し、しかも復活するなんて想像だにしなかった。

2017年9月10日 NTV「波瀾爆笑」より

五反田で再開した後楽そばや、先日紹介した前橋のあくざわ亭など、今年は老舗の焼きそば復活の報が相次いでいる。私の焼きそばブログの主目的は、各地で愛されてきた焼きそばを記録として残すことだが、焼きそばそのものが次代に受け継がれるなら、これに越したことはない。

「若月」の看板に再び明かりが灯された

一度消えた思い出横丁「若月」の看板に、約8ヶ月ぶりに明かりが灯された。外が明るいため気づきにくいかも知れないが、焦げたソースに引き寄せられて、また多くの人が訪うことだろう。

「前回の東京オリンピックのときは、ここからブルーインパルスが空に五輪を描くのが見えたんだよ」

そう語ってくれる竹内さん。2年後に控えた東京オリンピックも、この鉄板の前で迎えることになりそうだ。

タグ , , コメントを見る

油焼きそば専門店 良(りょう) (東京都目黒区)

自由が丘に「良(りょう)」というお好み焼き店がある。ご存知の方もいらっしゃるだろうが、浜松町にある焼きそば専門店りょうの母体の店だ。その自由が丘のお好み焼き・良が、金土日祝の昼営業だけ「油焼きそば専門店」という別業態をこの5月から始めた。昼顔・別顔、油焼きそば専門店 良(りょう)。聞き慣れない「油焼きそば」という名前に興味津々、9月頭の土曜日に訪れてみた。

自由が丘 油焼きそば専門店 良(りょう)

訪問したのは午後1時過ぎ。駅から200m程度の距離にある雑居ビルの2階に良はある。ちなみに同ビル3階には四川料理の吉華が入っている。以前、当ブログで紹介したこともある上野毛の吉華本店は一昨年閉店してしまったが、こちらではまだ少子麺(四川風田舎やきそば)が食べられる。あの味をもう一度食べてみたいな。そんなことを考えつつ2階へ。

油焼きそば専門店 良(りょう) 店内の様子

席はカウンターが6席に窓際のテーブルが2卓。奥には掘りごたつの座敷席もあって、意外と広い。先客は一人だけだったが、あとからグループが2組入ってきた。夜は予約で一杯のことも多いらしい。

油焼きそばとは?

さて、気になる油焼きそば。どうやら韓国料理の石焼ビビンバなどに使う石焼き器・石焼き鍋を使った焼きそばのようだ。ステーキプレートなどで提供する焼きそばは割と見かけるが、石焼き鍋とは珍しい。

油焼きそば メニュー

メニューにはベジ焼きそば・豚焼きそば・えび焼きそば・スペ焼きそばの4種類が載っている。浜松町の良を豊富うつとさせる品揃えだ。選んだのはスペ焼きそば(950円)。無料サービスの大盛り、麺量1.5倍もお願いした。

なんか色んなものが並べられた

厨房で調理が始まってしばらくすると、ホール担当の女の子がカウンター上にあれこれ並べ始めた。油焼きそば専用のトッピング類だ。いか天(揚げ玉)、青のり、ソース、マヨネーズ、紅生姜。至れりつくせり、このラインナップも浜松町そのままだ。

目玉焼きと青ネギも先に運ばれてきます

続いてトッピングの青ネギ、目玉焼きも運ばれてきた。左の金属カップに入っているのは油焼きそば特有という「出汁油」。なんだか準備だけで物々しくなってきたぞ。そしてついに真打ち登場、油焼きそば! 濛々と湯気を立てている。

石焼き器で提供される油焼きそば

「熱いので火傷にお気をつけください」

そう言われなくても触りたくない器だ。手元の説明書に書かれた「油焼きそばの食べ方!」を頼りに、仕上げに掛かる。

まずはソースを掛ける

まずは先ほど並べられた調味料類からソースを手に取る。焼きそばの天辺にそのソースを掛ける。大盛りなのでシロップレードルで1.5杯。

ソースを掛けると湯気だらけ

当然、熱々の石焼き鍋でソースが熱せられ、ジューーーーという音とともに湯気で視界が覆われる。それに怯まず、割り箸で混ぜまぜ。さらに出汁油。先ほどの金属カップに入ったあれだ。それを掛けてよーく混ぜる。

よーく混ぜるのだ

ソースと出汁油で器の中は汁っぽくなってしまうがそれは大丈夫。食べている間に水分が飛んで、通常の焼きそば程度になるから気にしなくてもOK。

スペ焼きそば 950円

最後に青ネギと目玉焼き、イカ天・紅生姜・青のりをあしらっってようやく完成だ。麺は浜松町と同じく、全粒粉を使った極太の生麺をその場で茹であげたもの。もっちもちで食べ応え満点。具は軽く炒めた豚肉、キャベツ、モヤシ。それらがアツアツの石器に盛り付けられて提供され、ソース・出汁油を掛けて混ぜることで完成する。

食べてる間にも麺や具に程よい焦げが

味も良い。食べてる間にも麺や具に程よい焦げがつき、ソースと出汁油が滲みてゆく。極太麺ならではのモチモチ感だけでなく、パリッと焼かれた香ばしさも味わえる。豚やエビ、目玉焼きやイカ天など、トッピングと一緒に頬張るのも楽しい。何よりアトラクション的な趣向が面白い。自分で焼くスタイルのお好み焼きを、焼きそばでより簡易化したような印象を受けた。普通の油そばではなく、焼くことでしか味わえない風味も体験できた。

ちなみに夜のお好み焼き店では、焼きそばにもっと細めの蒸し麺を使っているとのこと。この極太全粒麺の油焼きそばは金土日祝の昼だけしか味わえない、貴重な品なのだ。麺好きの方は機会があれば、ぜひお試しあれ。

「エビとトマト両面焼きそば」を提供している中華料理・帆も自由が丘に出店したそうだし、鉄板家シュウもあるし、自由が丘の焼きそば熱、高まっているなー。

タグ , , , コメントを見る

梅松食堂(うめまつ) (群馬県吾妻郡中之条町)

群馬県吾妻郡中之条町(なかのじょうまち)。隣接する草津町の草津温泉や渋川市の伊香保温泉ほどの知名度は無いが、四万(しま)温泉・沢渡(さわたり)温泉を擁する町だ。この中之条に梅松食堂、あるいは「うめまつ」と呼ばれる食事処がある。

中之条 焼きそば 梅松食堂(うめまつ)

WEBの情報だと創業は恐らく昭和39年(1964年)ごろのはずだから、店を構えて既に半世紀以上経つ。売り物は焼きそばやおでん、カキ氷など。群馬で焼きそばというと太田市が有名だが、前回の「あくざわ」のように県内各地に焼きそば屋が点在し、こうして地域に根付いているのだ。

中之条 梅松食堂(うめまつ) 店内の様子

梅松食堂を訪問したのは8月下旬の日曜日、午前11時過ぎ。店はJR中之条駅から250mほどの位置にある。国道145号=日本ロマンチック街道を挟んだ駐車場にバイクを停めて暖簾を潜る。客席はテーブル4卓に小上り2卓。昼食にはまだ早い時間帯なので先客はなし。お冷を汲んで、手近なテーブルに腰かける。

中之条 梅松食堂(うめまつ) メニュー

焼きそばは小・中・大・特盛と4サイズある。以前、Rettyグルメニュースの記事でも書いたが、焼きそばのみで足りない場合に関西ではご飯を付けた定食にするが、関東ではこちらのように麺の玉数を増やす店が多い。東西の食文化の違いの例として覚えておくと……たぶん何の役にも立たない。

「焼きそばの中盛(420円)とおでん(200円)ください」
「はーい」

焼きそば(中)&おでん

厨房に告げて2分くらいで湯気を立てた焼きそばとおでんが出てきた。提供がスピーディだ。早速いただこう。

焼きそば(中) 420円

焼きそばの麺は太麺で具はキャベツのみ。とてもシンプルな北関東らしいソース焼きそばだ。トッピングの青海苔と脇に沿えた紅生姜の緑と赤が映えている。麺は蒸し麺だがソフトな食感で、モチモチとした粘り腰。前回食べた「あくざわ亭」のゴワゴワした硬さとは対照的だ。

モチモチ太麺に濃厚なソース

ソースは酸味勝ちでやや濃いめの味付け。ケチャップ的な甘さも感じる。予想よりも濃厚だ。あんなこと書いちゃったけど、この焼きそばならご飯にも合うかも知れない。ただ中盛でもなかなかボリュームがある。卓上の七味や後掛けソースも加えたりして美味しくいただいた。ご飯無くても十分足りるな。

ソースや七味で味変もよし

そうそう、おでんも忘れちゃいけない。これも梅松食堂の名物だ。コンニャク3切れに厚揚げ・竹輪が半分ずつという、ややアンバランスな組み合わせ。しかし、それが良い。エッジの立ったコンニャクに甘めの出汁がよーく滲みてる。これで200円は安いなあ。おでんの具はこの組み合わせで固定されているそうだが、このお出汁で煮いた大根も食べてみたい。

おでん 200円

食べ終えて、お会計は620円。入れ違いに地元の家族連れと持ち帰りの客が一変に入ってきた。お昼時に掛けてこれからにぎわうのだろう。

もし温泉巡りや冬場のスキーの行き帰りで中之条を訪れたなら、焼きそばの看板を探してちょっと立ち寄ってみて欲しい。シンプルながらもこの店ならでは、そんな焼きそばが味わえますよ。

タグ , , , 1 Comment

あくざわ亭 (群馬県前橋市)

今からひと月あまり前の7月24日。群馬県の県庁所在地・前橋市に、あくざわ亭という焼きそば専門店がオープンした。上毛新聞の記事によると、20年前まで前橋にあった「あくざわ(阿久沢)」という店の焼きそばを、一人のお客さんが再現したという。同様の記事は朝日新聞デジタルでも報じられた。

前橋市 焼きそば専門店 あくざわ亭

元常連が今はなき店の味を継承して開業するケースは、多くはないが全国各地に例がある。焼きそばだと愛媛県松山市の「じゅん」、大阪今里の「長谷川」、栃木県鹿沼市の「かりん」。私は未訪問だが、今年5月にオープンした函館の「超特急やきそば」もそうだ。

前橋市 あくざわ亭 オープンしたばかり

「消えゆく味を残したい」というのは私の焼きそばブログのテーマでもある。後継者不足や様々な理由で長年親しまれた味が次々と消えて行く昨今だが、こういう事例が徐々に増えつつあるのは、個人的にとても嬉しい。実際にどのような焼きそばなのか、店主はどんな方なのか。気になるので、そのあくざわ亭を訪問してみた。

営業時間は昼のみ、日月休み

訪れたのは8月下旬の土曜日の正午前。群馬県庁や前橋市役所が集まる官庁街に隣接する通りで、あくざわ亭の看板を発見。ちなみに定休日は日曜と月曜で、なおかつ当面は昼営業のみ。平日に来れない人は土曜の昼しかチャンスはない。また、駐車場は無いので車で訪れる人は注意が必要だ。

あくざわ亭 店内の様子

店内の客席はテーブルが大小5卓。卓上にはソース、青海苔、コショウ、唐辛子などが置かれている。昼前の11時40分ごろで客席は半分くらい埋まっていた。持ち帰り注文もたくさん入っているようだ。

あくざわ亭 メニュー

メニューは焼きそばと飲み物のみ。焼きそばは並・大・特盛の3サイズあり、特盛は並の2倍とのこと。他のお客さんの食べる分が減ってしまうのも申し訳ないので、特盛ではなく大盛(600円)を注文。焼きそばはすぐに運ばれてきた。青海苔を適量振り掛けて、さて、いただきます。

焼きそば 大盛 600円

麺は太い蒸し麺。ゴワゴワとした硬さで、噛みごたえのある麺だ。箸で持ち上げると、もっさりとした重みを感じる。ところどころ焦げた切れっ端が混ざっている点も含めて、新宿・思い出横丁にあった若月の焼きそばを彷彿とさせる。今年1月に閉店したあの若月の焼きそばを、まさか前橋で思い出すとは。オリジナルの「あくざわ」の味を知らない余所者の私だが、なぜか懐かしさを感じてしまう味わいだ。

具の玉子が面白い

具はキャベツと玉子と肉。この玉子の使い方が面白い。あらかじめ薄焼きにしておいた玉子を切り分けておき、それを麺やほかの具と炒めているようだ。歯応えと風味にアクセントが加って、この焼きそばを特徴づけている。味付けはさっぱりしたウスターソース。地元メーカーのミツボシソースというブランドらしい。焼きそば自体にしっかり味付けはなされているが、さらに濃い味が好きならソースを少量、後掛けしても良いだろう。

ソースを後掛けしても良し

食べ終えて、お会計は600円。あくざわの創業は昭和20年ごろらしいが、それがこうして復活したのは真に喜ばしい。さらに詳しくお話をうかがいたく、ご主人にお願いして閉店した後に再訪させていただいた。

こちらがあくざわ亭のご主人、高橋英男さん。長年、前橋市役所に勤務し、当時の役職を兼ねて「焼きそば部長」と呼ばれていたそうな。仕事上がりでお疲れのところ、ありがとうございました。

あくざわ亭・店主、焼きそば部長、高橋英男さん

お話の中で何度も出てきた言葉が、「自分が喰いたい一心だった」という焼きそば作りの動機。そのために麺やソース、油や焼き方などを調べ、研究してきたという。

「最初は美味い不味いのレベルじゃなかった。どれだけ捨てたか分からない」

探求を続けて何年か経った頃、「グンッ」と目指す味に突然近づいたという。そこから練習を兼ね、友達の店で知り合いに何度か試食させてみた。もっとこうだったとか、自分も忘れていた細かな点を指摘され、改善を加えて「あくざわ」の味に近づけていった。開業前にはあくざわの遺族の方にも試食してもらい、いただいた助言を反映した。ただ、本人的にはまだ100%ではないという。

近づくときは徐々にではなく急に、だそう

「もともと自分が喰いたい一心で再現しただけで、正直、商売にする気はなかったんです」

実は前橋市の現市長、山本龍氏もこの「焼きそば部長」を応援している。山本市長がTwitterで初めて紹介したのが今から5年前の2013年。その投稿でもわかるように、当初は自分が広めるつもりはなく「味を受け継ぐ人」を募集していた。(なお、Twitterには、他にもあくざわの焼きそばを探求している方がいる。その辺りからも、あくざわの焼きそばがどれだけ前橋で親しまれていたかが伺い知れる)

あくざわ亭を手伝う奥さんは、「お金より身体が心配。ハマり症で熱心にやりすぎるから……」とのこと。上毛新聞の記事によると、ご主人は大病を経験されている。前述の通り、日月の週休二日かつ当面は昼営業のみというのも、負担を考えてのことだろう。ご主人も、「あまり宣伝してたくさん人が来すぎても、作れる分は決まっているから」と仰っていた。この記事の掲載は許可を得ているが、遠方から訪問する方はその辺りの事情も踏まえていただければと思う。

麺の処理の仕方も独特

ただ前橋の味がこうして次世代にも伝えられることを、「本人が一番楽しんでいる」とも強調していた。

「全国からどっと来られるよりも、地元の人たちが喜んでくれれば、ね」

高橋さんの熱意が結実した、あくざわ亭でしか味わえない渾身の一皿。いつしか「あくざわ」の焼きそばではなく、「あくざわ亭」の焼きそばとして親しまれてゆくに違いない。

タグ , , , コメントを見る

ロッジ赤石 (東京都台東区)

浅草の観音裏にロッジ赤石という喫茶店がある。創業は昭和48年。焼きそばでご縁のあるライターの小石原はるかさんから、「洋食で有名だけど焼きそばも美味しい」と勧められ、ふらーっと訪れてみた。

ロッジ赤石 店頭のガラスケース

場所は言問通りを渡ってすぐの裏通り。訪れたのは日曜の昼下がりで、店内はほぼ満席だった。かろうじて空いていたテーブルへと案内されたが、後から来た客は何組か断られていた。ちなみにここでも店内のテレビで競馬中継を流していた。いかにも浅草らしい。

浅草 観音裏 ロッジ赤石

さてメニュー。小石原さんに勧められたのは焼きそばだが、気になるのは店頭のサンプルケースにも飾られていたパリジェンヌ風ヌイユ(950円)だ。ヌイユ(nouille)はフランス語で「麺(Noodle)」のこと。フランス料理では添え物的に使われることが多いらしいが、こちらではそれをパスタ風に具と炒めている。いわば焼きそばの一種と言えなくもない。

ロッジ赤石 メニューの一部

そんなわけでパリジェンヌ風ヌイユを注文。喫茶店なので飲み物も頼もう。選んだのはアイスアーモンドオレ(650円)。それにしてもドリンクは1ページしかないのに、フードは4ページもある。やはり喫茶店というより洋食がメインの店なんだな。

アイスアーモンドオレ 650円

注文してすぐにアイスアーモンドオレが運ばれてきた。こういうところへ来ると何か変わった飲み物を探してしまうのだが、アーモンドオレは初体験だ。風味がまさにアーモンドで香ばしい。とんと見かけたことがないが、かつてこれが流行った時代もあったのかな。もう少し涼しい季節ならホットでも良いな。

パリジェンヌ風ヌイユ 950円

そしてパリジェンヌ風ヌイユ。麺は玉子と小麦粉を練った玉子麺という。幅広く、麺の表面には筋が入っている。もちっとした食感だが、ほかの麺とも異なる食味の不思議な麺だ。ボリュームは軽め。たぶんあらかじめある程度の分量を茹でおいているんじゃなかろうか。

玉子と小麦粉を練った玉子麺

具はエビ・貝柱・玉ねぎ・ピーマン・マッシュルーム。カニカマをほぐしたのも入っていた。味付けは塩コショウだけでシンプルだが、魚介・玉ねぎ・マッシュルームの味わいが麺に滲みている。食べ飽きない美味しさだ。試しに注文して正解だった。

焼きそば 700円

食べ終えてもまだ胃袋に余裕がある。ならばと追加で焼きそば(700円)を注文。麺は中細の蒸し麺でゴワっとした噛み応え。具は豚肉、ざく切りキャベツ、モヤシ。海苔をトッピングして、紅生姜を添えてある。

蒸し麺とウスターソースの正統派焼きそば

味付けは酸味のきいたウスターソース。オーソドックスなソース焼きそばなのだが、具に豚肉を使い、キャベツを大きめにカットしてある辺りに昭和40年代っぽさを感じる。戦前や終戦直後の焼きそばだと仮に肉を使っていても牛肉のそぼろだったり豚挽き肉だったりする。キャベツもざく切りではなく千切りや短冊切りのところが多い。そんなことを考えつつ完食。いやー、どれも美味しかった。

最後は寄席へ

お会計を済ませ、待乳山聖天や今戸神社を散歩した後、久しぶりに浅草演芸ホールで落語を楽しんだ。夜の部は林家一門がずらっと高座に上がり、トリは九代目林家正蔵。演目は私の好きな「西行鼓ヶ滝」。和歌をテーマにした噺だけあって、下げにも詩心を感じる。やはり寄席は楽しい。ここ最近ずっと忙しかったが久しぶりにのんびりできた日曜だった。

タグ , , , , コメントを見る

ほんま門 (東京都中野区)

野方駅北原商店街の北端近くに「ほんま門」というたこ焼き屋がある。開業は確か2006年くらいだったと思う。たこ焼き以外にも大阪風のコナモン全般を提供していて、店内でそれをつまみに飲むこともできる。地元民なら誰もが知っているリーズナブルな店だ。

野方 たこやき ほんま門

私も開店当初からときどき通っている。こないだの冬からずっと長期休業でどうなることかと心配だったが、この6月に無事に営業再開して、ホッとしたところだ。ちなみに最近改めて調べたら、母体はなんと包装資材の会社らしい。今さら知って驚いた。

野方 ほんま門 メニュー

8月に入ってから土曜の夜に軽く一人飲みで訪れてみた。リーズナブルと書いたが、本当に価格が安い。たこ焼きは一人前(1舟・6個)で200円(税込210円)。お好み焼きの豚玉が390円(税込424円)。焼きそばが450円(税込486円)。食べ物だけじゃなく飲み物も安い。キンキンに冷えたジョッキで提供されるアサヒ・スーパードライの生は390円。サワー・酎ハイは290円から。

アサヒ・スーパードライ 390円

私としては安さばかりを強調したくないのだが、「味だけやなく値段も大阪のほんまモンでっせ」という意気込みを感じる店なのだ。席数が限られているためいつも混んでる。まあ、この価格なら仕方あるまい。

たこ焼きを店頭で常に焼いている

で、肝心のたこ焼きだ。店頭で常に焼いていて、持ち帰りの客がひっきりなしに訪れる。ひと玉が手ごろなサイズで、外はフワッと、中はトロトロの完全なる大阪スタイル。もちろんひと玉ごとにタコもちゃんと入っている。焼きたてを一口で頬張って火傷したことも何度かある。今回はソース味を注文したが、醤油やポン酢、ネギマヨなど味のバリエーションが豊富なのも嬉しい。

たこ焼き 200円

開業時はこのたこ焼きが一人前なんと150円だった。その後段階的に値上がりして今は200円だが、それでも安すぎる。知り合いの飲食店主が野方に出店する際に、地域の価格帯調査でこの店を知ってショックを受けたと言っていた。そりゃそうだ、普通なら倍は取ってもおかしくないもんなー。

焼きそばやお好み焼きを手際よく焼いていきます

2杯目にウーロンハイ(290円)。それとオムそば(550円)を注文。麺を鉄板に乗せ、蓋を被せてじっくり焼く。しばらくして麺をほぐす。その傍らで野菜も水を少量加えて蓋をかぶせる。スライスした豚バラ肉を焼き、一口大に切り分け。混ぜ炒めて焼きそば用のソースで味付ける。

オムそば 550円

完成した焼きそばを鉄板に盛り付けてから、薄く玉子を焼き上げて焼きそばを覆う。マヨネーズとソースを格子状にトッピングして出来上がり。卓上に置かれた魚粉と青海苔を、お好みで振り掛けてみた。

モチモチ太麺と濃厚ソース

麺は太麺。一時期、細麺に代わってしまったが、大阪の焼きそばならやはりもっちり太麺と濃厚ソースが王道だろう。シャキシャキの野菜とフンワリした玉子焼きで美味しさ倍増。普通のソース焼きそばが450円なのも安いが、100円増しでオムそばにできるのも実にお得だ。

お好み焼きも大阪の王道スタイル

この日はサクッとこれで切り上げた。お会計は税込み価格を足し上げて1538円。ちなみにお好み焼きもみじん切りのキャベツをたっぷり使い、時間を掛けてじっくり分厚く焼き上げた、いかにも大阪という品だ。ほんまもんの大阪風コナモンで飲みたいなーって時にぜひ利用してほしい。

タグ , , , , , コメントを見る