テッパンキッチン HIROO (東京都渋谷区)

5月9日、テッパンキッチン HIROOという焼きそば専門店がオープンした。7月上旬、恵比寿新聞のこちらの記事でその存在を知った。同記事によると広尾三丁目にある「鉄板焼き高見」という店が母体で、世田谷にもう一店舗あるらしい。早速行ってみた。

渋谷区東 テッパンキッチン HIROO

訪れたのは7月上旬の平日、夕方17時半過ぎ。屋号は広尾だが、場所的には広尾駅と渋谷駅の中間あたりで、恵比寿駅も含めどの駅からも遠い立地だ。バスで行くなら國學院大學を目指すと良い。暖簾には「鉄板で焼く本格焼きそば専門店」と小さめの字で書かれている。期待にドキをムネムネさせながら入店。

テッパンキッチン HIROO 店内の様子

フロアは余裕のある広さだ。夜営業の開店直後で私が口開けだった。オープンキッチンを囲むコの字型のカウンター席のほか、壁沿いや奥にも席がある。ただし現在、昼は2人、夜は1人で廻しているため、今のところカウンターのみ8席で営業しているそうだ。

テッパンキッチン メニュー

手近なカウンター席に着いてメニューを確認。「焼きそば専門です!」との但し書きの通り、ほぼ焼きそばしかない。アルコール類も置いてあるが、種類は絞られていた。店の雰囲気は白金高輪のBARチェローナや門前仲町の魂の焼きそばに似た鉄板バル風なので、酒肴はこれから充実させていくのかな。

九条ねぎ焼きそば(1000円)か、厚切りホルモンと豚バラW焼きそば(1000円)かで迷ったが、後者を注文。ついでにビール(プレミアムモルツ小瓶・500円)もいただいた。

調理の様子

熱した鉄板に油を引き、キャベツ、モヤシを炒める。その脇で玉子と豚バラ、ホルモンを焼く。生麺を茹で上げ野菜と合わせ、多数のソースで次々と味付けしつつコテで混ぜ炒める。皿に盛り付けて出来上がり。

厚切りホルモンと豚バラW焼きそば 1000円

麺はモチモチの中太麺。生麺を茹で上げたあと、水で締めずにそのまま焼いている。それもカリカリに焼き固めるのではなく、麺のモチモチ感を大事にする焼き方だ。私の経験上、こういうスタイルは西日本のコナモンで育った料理人に多い。店長さんに確認したところ、ここの焼きそばを考案したオーナーの高見氏が関西出身とのこと。やはりと納得してしまった。

茹でたて生麺のモチモチ食感が素晴らしい

麺と一緒に炒めてある具はざく切りキャベツとモヤシ。キャベツの甘みが印象的だ。使っているソースは前述の記事によると10種類以上とのこと。調理しながら異なるソースで次々と調味していく様子は圧巻だった。大阪風の甘口がベースだが、どろソースも使われていてほどよくスパイシー。

今回も目玉焼きを崩しますよー

トッピングされている目玉焼きの火加減も自分の好みだ。豚バラ肉は厚めに切られていて脂身が旨かった。ホルモンは牛で、広島から仕入れているビチという希少部位だそうだ。調べてみたところ第四胃袋、いわゆるギアラの広島方言らしい。油が少なく歯ごたえあり。どちらも下味がしっかりついている上に、ソースでわざと焦がしてあって香ばしい。

紅生姜ひとつ取ってもこだわりを感じます

皿の端に添えられた微塵切りの紅生姜は梅酢に漬けた無添加ものとのこと。かすかにフルーティーで酸味が爽やか。青海苔も一般的に使われている「あおさ」ではなく、高級な正真正銘「青海苔」の方だ。ひとつひとつの食材をきっと厳選しているんだろうなあ。茹で麺かつバランスよい味付けで、丁寧に作られた正統派の関西風焼きそばだった。

プレミアムモルツの小瓶をお代わりして、いろいろと店長さんに伺った。実は味付けはソースだけではなく、醤油や塩もあるらしい。ただ裏メニュー的な存在で、立て込んでいるときはNGとのこと。次回は九条ねぎと思っていたけど、そう聞くと迷うなー。

この日のお会計は2050円。落ち着いた雰囲気の素敵なお店だが、この場所でこの客単価で大丈夫かな、と個人的にちょっと心配になってしまう。ちなみにランチは國學院大學の学生、夜は地元に住む方々が主体だそうだ。今度はもうちょっと遅い時間帯に来てみたいなー。

鉄板キッチンhiroo

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8月8日は「焼きそばの日」!

焼きそば名店探訪録管理人の塩崎です。暑い日が続きますけど、あと2週間で8月8日、焼きそばの日ですねー。

え? 8月8日は「焼きそばの日」なのを御存じない? 「突然、なにを」「なぜ8月8日?」とお思いでしょう。しかし! 私が勝手に思いついたわけではないのです!

焼きそば専門店まるしょう

理由その1。焼きそば専門店まるしょう店主の関口さんが、2010年から『8月8日は「焼きそばの日」』と提唱しているから。まるしょうさんの当時のブログ記事を引用しますね。

みなさま、今日は何の日だか覚えていますか?
そう!今日8月8日は

「焼きそばの日」ですよね!!

知らなかった人のために・・・

8月8日は8月9日の近く(そば)、8(ヤ)9(ク)そばだから、「焼くそばの日」⇒「焼きそばの日」となるのです。
8月10日そうだけど、88のが語呂がいいでしょ?
まあ、そんなことを言っているのは私達だけですけど。10年後には誰でも知っているように広めていきます。

そうです!  8月8日は8月9日の近く(そば)、8(ヤ)9(ク)そばだから、「焼くそばの日」⇒「焼きそばの日」なのです! どうです、洒落が効いていますよね? それに8月は夏祭りや花火大会などの縁日に海水浴の海の家、キャンプでのBBQなど、ちょうど焼きそばが食べたくなる季節。とてもピッタリだと思うのです。

ちなみにまるしょうさんはこの記事のちょうど1年後、2011年8月8日にグランドオープンしているんですねー。さらに余談ですが当ブログはその6日後に開設しました。

マルちゃん焼そば

理由その2。大手食品メーカーの東洋水産さんが、8月8日を「マルちゃん 焼そばの日」と制定しているから。

そうなんです。あのマルちゃんも8月8日を「焼きそばの日」(正確には「マルちゃん 焼そばの日」)と定めているんです。2011年にキャンペーンを行ったときのサイトから引用しますね。

「マルちゃんの焼そばをより多くの人に食べてもらいたい」との願いを込め、当社が制定いたしました。焼きそばを食べる機会が増える夏季シーズンの中でも、8は○(マル)を重ねた形に似ているところから、マルちゃんをイメージし、焼そばの「ヤ」が8に通じることから8月8日が「マルちゃん 焼そばの日」となっています。

厳密には「マルちゃん焼そば」という商品に限定されていますけど、POSデータによる売上ランキングによると、同商品は焼きそばやチルド麺に限らず、全ての麺類の中で日本一売れている焼きそばなのです。いわば日本を代表する焼きそばですし、多くの人が焼きそばとして思い浮かべるのはマルちゃんでしょう。そのメーカーが8月8日を「マルちゃん 焼そばの日」と制定し、日本記念日協会にも登録されているので、それに乗っかっちゃおうと思います。

縁日の焼きそばもね

理由その3。「8」=「八」が末広がりで、焼きそばというオープンマインドな料理にピッタリの日だから。

これは私が勝手に考えた理由です。すみません! でも焼きそばって麺は中華、味付けは西洋に由来していて、紅生姜とかカツオ節とか和洋折衷のオープンマインドな料理だと思うのです。じゃがいもを入れてもいいし、カレーを掛けても、スープに浸っていてもいい。末広がりでいろんなものを取り込むのが楽しい料理です。

話は焼きそばから離れてしまいますけど、コンピュータ・プログラムの世界にオープンソースという運動があってですね。プログラム=ソースコードを無償で公開し、誰でも自由に使用・改変可能にすることで、不具合を発見・解消しやすくなり、結果的により良質なものになる、という考え方なのです。

このオープンソースの考え方を、焼きそばの味付けに使われるソースに引っかけて、焼きそばという料理自体をオープンなジャンルにしていければなあ、なんて思いも込めてみました。

8月8日は「焼きそばの日」

というわけで8月8日は「焼きそばの日」です! お近くの飲食店はもちろん、ご当地焼きそば、チルド麺、カップ焼きそば、袋麺などなど、ぜひ8月8日は焼きそばを食べてくださいねー。

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大衆鉄板食堂 栄屋 (東京都板橋区)

今週は今年に入ってから都内でオープンした焼きそば専門店のうち、最近知ったお店を中心にご紹介します。「えー、そんな店がオープンしてたの!?」みたいなことって、良くあるんですよね。


東京都内でちゃんとした横手やきそばを食べられる店は限られている。縁日で出ているのは横手やきそば暖簾会の公認を得ていない屋台ばかり。秋田の郷土料理店や大手のお好み焼チェーンなど食べられる店もあるにはあるが、横手やきそばを主力にしているわけではないので、いまいち食指が動かない。

五反田にて3月に撮影

そんな中で恐らく唯一、横手やきそば一本で勝負してきたのが移動販売の栄屋だ。2009年に横手やきそばがB1グランプリで優勝するずっと前から営業を続けている。私も今年の3月初旬に五反田でその栄屋さんの横手やきそばをいただいたのだが、期待以上に本場の味だった。詳しい出店情報はこちら。有楽町の国際フォーラムの前で出店していたりするので興味ある方はチェックして欲しい。

その栄屋が今年3月ついに店舗を構えたらしい。場所は板橋区。いたばしTIMESのこちらの記事を、知り合いがFBでシェアしているのを見て、つい最近知った。富士宮や日田はともかく横手の専門店は実に希少だ。これは個人的になかなかのビッグニュース。早速行ってみた。

板橋区 大衆鉄板食堂 栄屋

訪問したのは7月中旬、平日の夜20時過ぎ。私の自宅からだと環七沿いの東山町バス停からアプローチするのが最も近いのだが、普通は東武東上線の大山駅を利用するのが良いだろう。ハッピーロードのアーケードを抜け、川越街道を渡って住宅街を抜けると、日大病院前というミニストップのあるT字路が現れる。その角にあるのが目的の店だ。

横手やきそば暖簾会の幟を横目に入店。お店はこじんまりしていて、厨房に面したカウンターが6席と、小上がりテーブルが2卓ある。前客は一人だけだったが、あとからカップルや若者グループがやって来て、なかなかの繁盛ぶりだった。

大衆鉄板食堂 栄屋 メニュー

メニューは焼きそばのほか、酒肴が意外と充実している。大衆鉄板食堂の屋号に相応しく、定食類もある。黒板に書かれた本日のおすすめメニューもなかなか魅力的だった。とりあえず生ビール・キリン一番搾り(480円)を注文。肴にいぶりがっこクリームチーズというのを食べてみたかったが、残念ながら今日は品切れとのこと。

代わりにお願いしたのがホルモン鉄板焼(480円)。ムニュムニュのホルモンは、ほんのり酸味のあるタレが滲みていて、いい感じで焦げている。一緒に炒められている野菜も旨い。ウーロンハイをお代わりして、店主の前澤さんに色々とお話を伺った。

ホルモン鉄板焼 480円

前澤さんは横手の出身で、幼いころからあの藤春食堂の焼きそばで育ったとのこと。あの焼きそばの味を広めたいと思い、B1グランプリが始まるずっと前から東京で移動販売を開始。最初は売上も伸び悩んだが、そのうちリピーターも定着してイベントなどへの出店も増えた。さらに2009年のB1グランプリ優勝で横手やきそばの知名度も一気にアップし、その後は地元・横手の暖簾会とも連携して東京で横手やきそばの名前を広めているそうだ。

横手やきそば 550円

頃合いを見てこちらのお店の最もベーシックな横手やきそば(550円)を注文。麺は横手で見慣れた太い角麺を使用。具は豚ひき肉とキャベツで、ひき肉はたっぷり使われていた。そして半熟目玉焼きに青海苔、福神漬のトッピング。これぞ横手やきそばという王道スタイルだ。

ヒタヒタ、ダボダボのソース

使われているソースは甘めでサラサラ。ヒタヒタのダボダボ。本場だと後から自分で掛けるのが主流だが、東京だと客がそれに慣れていないから店の方であらかじめ調節しているのだろう。底の方から混ぜてください、とのアドバイスに従い、よく混ぜて頬張る。うむ、これだこれ、横手の味だ。

麺は軽く蒸してあるそうです

ただ麺がちょっとごわっとしてるのが気になった。横手やきそばは柔らかい茹で麺が特徴のひとつだが、これは若干蒸してあるっぽい。啜りやすさやモチモチ食感など、ちゃんと横手の特徴はあって美味しいんだけど、何故蒸し麺を……?

「すみません、変なことお聞きしますけど……」

と確認してみたところ、横手で使われる茹で麺そのままではなく、やはり軽く蒸しているそうだ。移動販売は持ち帰りが主体で、茹で麺より蒸し麺の方が味が保つ。しかも、蒸した方が東京の嗜好に合っている。その流れでこの店でもそれを踏襲し、茹で麺と蒸し麺の間を狙った処理を加えているとのこと。なるほど、納得。ちなみに麺の量は1人前200g。なかなかボリューミーだ。

半熟の黄身を潰してモチモチ麺に絡める

半熟の黄身を潰してモチモチ麺に絡めれば、甘目のソースと相まってさらに味わい深くなる。東京でこれだけ美味しい横手やきそばが食べられるってのは嬉しいなー。東京から秋田まで行くのはかなりハードルが高いけど、ここなら都民も手軽に本場の味を味わえるだろう。

ウーロンハイをもう一杯お代わりして、お会計は2310円。オープンして数か月だがすでに常連さんも付いていて、酒場としても楽しい空間だった。「都内で横手やきそばが食べられる店って、どこですか?」と質問される度に、「うーん」と困ってきたけど、ようやく自信を持ってオススメできる店ができた。また寄らせていただこうっと。

大衆鉄板食堂 栄屋

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Crustacean (アメリカ - サンフランシスコ)

アメリカ西海岸の焼きそば特集、いよいよこれでラストですっ!


太平洋とサンフランシスコ湾を隔てるゴールデン・ゲート・ブリッジ。旅の最中に自転車を借りてこの橋も渡ってみた。この橋が架けられたのは1937年というから、和暦なら昭和12年のこと。橋を渡った先からフェリーで戻るルートを辿ると、サンフランシスコが海に面した港町であることが実感できる。

サンフランシスコ ゴールデンゲートブリッジ

海に囲まれている街なので、もちろん魚介類、海の幸も豊富だ。中でもアメリカイチョウガニ、通称・ダンジネスクラブ(Dungeness Crab)はこの街を象徴する味として知られている。海岸沿いの Fisherman’s Wharf にはカニの看板が掲げられ、提供する店がずらっと軒を連ねている。

Crustacean, Nob Hill, SF

今回、アメリカ西海岸の焼きそば特集の最後に紹介する Crastacean は、そのダンジネスクラブで有名な老舗レストランだ。屋号の Crustacean は「甲殻類」の意で、ルーツはベトナム料理だが、EURO ASIAN CUISINE を標榜している。ローストクラブとガーリック・ヌードルが名物で、日本人の観光客やビジネスマンは必ず寄るとまで言われている人気店なのだ。

Crustacean の入り口を示すカニマーク

訪問したのは6/21(水)、18時半過ぎ。今回の旅の最後の晩餐だ。Crustacean は Nob Hill というエリアの外れにある。ガイドブック『地球の歩き方』によると店の周辺は治安があまり良くないらしいが、なぜかドレスコードがある高級店とのこと。そのためにわざわざジャケットとスラックスと革靴を日本から持ってきた。よりカジュアルな Thanh Long という系列店もあるらしいが、せっかくなので本家本元へ行かないとね。

Crustacean 店内の様子

入り口で一人と告げると手慣れた感じで窓際のテーブルへ案内され、日本語表記のあるメニューを渡された。お一人様の日本人客は多いらしく、ちょうど隣席にも眼鏡を掛けた日本人ぽい青年がいて、一人で黙々とカニをほじっていた。後から来た現地の人っぽい客の中にはTシャツとジーンズ姿もチラホラ見かけた。もしかしたら普段着でよかったのかな。余分な荷物を減らせたかも……。

Crustacean メニューの一部

注文する品は決めてある。「カニのロースト(The Roast Crab)」と「アン特製ガーリックヌードル(An’s Garlic Noodles / $10.95-)」。あとは地元カリフォルニア産の白ワインを。ロンドンで食べたロブスター焼きそばと同じく、カニは時価だ。幾らになるのかは、会計時まで分からない。ドキドキ。

Duckhorn Sauvignon Blanc, $30

ワインはすぐに運ばれてきた。ナパバレーの Duckhorn Vineyards という醸造所で作られたソーヴィニヨン・ブラン。ハーフボトルで$30。フルーティな香りにすっきりした味わい。無難に美味しい。

The Roast Crab w/ Garlic Noodles

さらに10分ほどでローストクラブとガーリック・ヌードルが運ばれてきた。巨大なダンジネスクラブに、たっぷりのスパイスとガーリックバターソースを塗り、オーブンでじっくり焼き上げてある。真っ赤な甲羅の色が食欲をそそる。

甲殻類、万歳!

せっかくなので店員さんにお願いして記念写真をパシャッとな。皿がずっしりと重い。カニの巨大さが伝わるだろうか。甲殻類、万歳!

An's Garlic Noodles $10.95-

名物のガーリックヌードルは「アン特製、ニンニク風味のエッグヌードル」と日本語で紹介されている。前回、 Perilla という店のガーリック・ヌードルを紹介したが、恐らくこちらの店がオリジナルだろう。ニンニク風味の具無し焼きそば。ベトナム語だと「Mì Xào Tỏi」と呼ぶはずだが、本国には無いアメリカ式ベトナム料理だ。他の店も含めて調べてみると、様々な料理と組み合わされていて、とても汎用性が高い焼きそばなのだ。

とりあえず甲羅を剥がして……

カニを食べるために渡された武器は小さなフォークと、てこの原理で殻を砕くスティックのみ。カニナイフやキッチンバサミを持参すれば良かった。とりあえず甲羅を剥がし、まず裏側の身肉や味噌を平らげる。うーん、美味しい。柔らかいカニの身に、ブラックペッパーとガーリックを利かせたバターソースが凄くよくなじんでいる。

カニ美味いっす

続いて足も一本捥いで殻を剥く。こちらも美味い。手が油で汚れるので途中の写真が撮れないが仕方ない。2・3本食べてから、あとはひたすら剥く作業に入る。バキバキ割って、ホジホジホジホジ。ガーリックヌードルを主役と捉え、そちらにカニ肉を盛り付けていった。黙々と剥き、時折つまみ食いして、手を拭いてワインを飲んだり。

カニと格闘すること1時間強。ようやくすべての肉をこそぎ終えた。店員さんが熱々のおしぼりを差出し、「こちらのヌードルを温め直しましょうか?」と訊いてきた。ありがたやとお願いする。ついでに団体客が来るそうで席の移動をお願いされる。あー、ここまで時間かけるとは予想されていなかったのかな。快諾してテーブル移動。窓際の明るい席から、落ち着いた雰囲気の席に代わった。

カニ焼きそば、ドーン!

やがてカニの身が山盛りに盛り付けられた熱々のガーリックヌードルが運ばれてきた。麺は太目でモチモチ。Perilla と同じく、ニンニクの風味だけではなくチーズのようなコクも感じる。本来は具無しなのだが、カニの身どっさり。1時間の苦労をじっくり味わう。いやー、贅沢なカニ焼きそばだ。

美味しいけど食べ飽きてしまうという悲しさ……

しかし麺の量が結構ある。おおよそだが400gくらいか。具は大量のカニの身だけなので、正直、途中で食べ飽きてしまった。ま、本来は複数人でシェアするものだからなあ。ロンドンのロブスター焼きそばもそうだったけど、誰かしら連れを確保してくるべきだったかも知れない。美味しいものは適量が良いんだな。そんなことを考えつつ完食。すっかり満腹だ。カニはしばらくいらないカニ。

日本円換算で約7700円

そしてドキドキのお会計タイム! カニは$55.95!! $35くらいが相場とされているけど、思ったよりずっと高いなー。ガーリックヌードルは$11.25。あれ、メニューより高くない? 合計で$67.20。日本円で約7,500円。ロンドンで食べたロブスター焼きそばの£38.00≒6,080円を凌駕する値段だが、大阪で食べたフカヒレ鉄板焼きそばの8,400円には今一歩及ばず! うーん、ハイレベルな戦いになってきた。財布がツライ。

ワインの代金に税金、”San Francisco Employer Mandates 4%”などが加算され、チップ抜きで110ドル。チップを加えて130ドルを支払った。高い高い晩餐でカードの残高がみるみる減っていくが、まあ旅の最後だから良いだろう。日本でもちゃんとした店で越前ガニを食べたら……と考えると納得できる。納得したい。

焼きそばというとB級グルメというイメージが付いて回るが、世界を眺めてみるとそうでも無いことがお分かり頂けただろうか。ほとんどはメインディッシュの値段なのだが、それを受け止めるポテンシャルが焼きそばにはあるのだ。エッヘン。

ちなみにガーリック・ヌードル(Garlic Noodles)は、”Vietnamese Garlic Noodles Recipe”で検索すると、具体的なレシピがたくさんヒットする。好奇心旺盛な方はチャレンジしてみてはいかがカニ?


ということでアメリカ西海岸の焼きそば特集は以上となります。大枚を叩いて訪れた旅・店ばかりで、写真点数は多く、文章も長くなってしまいましたけど、ご寛恕ください。今度はアメリカ東海岸か、あるいはブラジルへ行ってみたいですねー。お金貯めないとなー。

次回からは普段通り、日本国内の焼きそばご紹介に戻りまーす。

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Perilla (アメリカ - サンフランシスコ)

サンフランシスコのベトナム料理店では、なぜかニンニク風味の具無し焼きそば=ガーリック・ヌードル(Garlic Noodles)をメイン・ディッシュに添えて提供する店が多い。ベトナム語なら「Mì Xào Tỏi」か。アメリカ中華と同様に、現地ベトナムには無いスタイルで、いわばアメリカ式ベトナム料理のサンフランシスコご当地焼きそばだ。

発祥は恐らく Crustacean という店で次回じっくり紹介する予定。そちらはドレスコードがある高級店だが、今回紹介する Perilla はリーズナブルな、気軽に入れる人気店である。

サンフランシスコ、ユニオンスクエア周辺

Perilla を訪れたのは6/20(火)のこと。朝からケーブルカーで Fisherman’s Wharf を訪れ、土産物をあれこれ購入。その後、Muniバスで Financial District と呼ばれるエリアへ移動。Mission stと1st stの角の建物、ピザ屋の隣にある Perilla へ着いたのは朝10:30過ぎのことだった。

Perilla, Financial District, SF

屋号の Perilla は英語でシソやエゴマを意味するらしい。サンフランシスコにはもう一軒、同名のベトナム料理店があるが、関係は良く分からない。

Perilla 店内の様子

店内は広く、テーブルがズラッと並べられていた。開店直後で自分が口開け。これだけだだっ広いところに一人でいるのも落ち着かないが、まあ仕方ない。食べ終わるころに他の客も入ってきた。

Perilla メニュー

メニューにはベトナム料理でおなじみの生・揚げ春巻き(Rolls)やフォー(Noodle Soup)が並ぶ。しかし冒頭で述べたように今回の目的は別の品だ。注文したのは 5 Spice Chicken と Garlic Noodles のセット(Five Spice Chicken w/ Garlic Noodles / $11)。Yelpなどで調べるとこの店の看板メニューで断然人気らしい。ついでに水(Bottled Water / $1.50)も注文した。

卓上には例のあれが

ここの卓上にもシラチャ・ホット・チリ・ソース(Sriracha Hot Chille Sauce)が置いてある。本当にどこへ行っても見かけるなあ。水のペットボトルがすぐに運ばれ、料理は注文から10分ほどで配膳された。

Five Spice Chicken w/ Garlic Noodles $11.00-

具無し焼きそばのガーリックヌードル・鶏肉・ブロッコリー・透明なソースが、1プレートに整然と並べられている。前回紹介した Chego! のカオスなトッピングとは対照的な盛り付けだ。写真だと分かりにくいがここもボリュームはかなりのもの。麺は400gくらい余裕でありそう。ブランチとして食べに来たのだが、朝食を抜いといてよかった。さて、いただこう。

整然とした盛り付け

ガーリック・ヌードル(Garlic Noodles)はモッチモチの太麺を使用。ベトナムで麺というとフォー(Phở)=ライスヌードルのイメージが強いが、これは小麦粉と玉子で練ったエッグヌードルらしい。料理名の通り微塵切りにされたガーリックとバターの香りが強く、オイリーでコクがある。ペペロンチーノに似た風味だが、チーズも使っているようだ。

Garlic Noodles はモッチモチの太麺

また具無し焼きそばとして、焼き目がついているのも個人的に評価したい。アメリカの焼きそばは麺が短いことが多いが、ここは麺が長いままなのも嬉しい。とてもシンプルな焼きそばなので、色々な料理を組み合わせることが可能だろう。これは日本でも絶対に受ける味だ。特に岐阜県中津川市の五十番を知っている人に食べさせてみたい。

5 Spice Chicken は万人受けする美味しさ

5 Spice Chicken は鶏モモ肉を使用。味付けして皮をカリッと焼き上げてある。 “5 Spice” は「五香粉(ウーシャンフェン)」の直訳で、ベトナムでは「Ngũ Vị Hương」と呼ぶ。八角の風味を想像していたが、決まった調合はないようで八角の香りはしない。また、そこまでスパイシーでもない。むしろタイ料理のガイヤーンっぽい、万人受けする甘辛い味わいだ。ベトナムだからガー・ヌン(Gà Nướng/鶏肉焼き)と呼べばいいのかな。ジューシーで食べ応えがあり、ガーリックヌードルとの相性も申し分なかった。

サラッとしたスイートサワーソース

付け合せの透明な液体はサラッとしたスイートサワーソースだった。甘酸っぱさが茹でたブロッコリーに合う。もちろんチキンやガーリックヌードルにつけてもよし。好みでシラチャ・ホット・チリソースを掛けるのも良いだろう。麺と肉と野菜。それぞれ別々に調理されたとてもシンプルな構成なのだが、めっちゃ美味い。

食べ終えて、空腹から一気に満腹になった。日本のベトナム料理店では絶対に出会えないであろう1皿に大満足。前回紹介したロサンゼルスの Chego! といい、このサンフランシスコの Perilla といい、日本人が考える焼きそばという枠を軽々と超えている。さすが自由の国アメリカ、料理のアレンジも自由なんだなー。しかし今はとりあえずホテルへ戻って歯を磨きたい。口の中がニンニク臭くて……

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Chego! (アメリカ - ロサンゼルス)

アメリカ西海岸の焼きそば特集も今週で締めとなります。最後はアジアン・フュージョン系の焼きそばをご紹介します。いかにもアメリカらしい自由な発想を感じる品々で、個人的にもいろいろと触発を受けました。


Chef』という映画をご存じだろうか? たぶん邦題の『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』なら分かる方も多かろう。SNSでの炎上で仕事を失った料理人が、旅先のマイアミでフードトラックを入手し、息子やかつての片腕と共にロサンゼルスまで旅をするロードムービー。見ているとお腹が空くこと必至で、飲食好きにはめっちゃオススメの作品だ。ネットでも配信されているので興味のある方はぜひチェックを。

Far East Plaza, China Town, LA

ところでこの映画の主人公には実在のモデルがいる。ロイ・チョイ(Roy Choi)という韓国系のシェフで、CNNの記事町山智浩氏の映画解説に詳しいが、彼が火付け役となってロサンゼルスではフードトラックのブームまで起こった。映画『Chef』のエンドロールでは、監督と主演を務めたジョン・ファヴローに料理の指導をしている場面も挿入されている。

Chego!, China Town, LA

そのロイ・チョイ氏は、いまロサンゼルスで幾つかの飲食店を経営している。今回紹介する Chego! はそのひとつだ。ロサンゼルスで行ってみたい店の筆頭だったので、渡米初日の夜に早速訪れてみた。Chego! はロサンゼルスのチャイナタウンにある Far East Plaza (遠東商場)という商業施設の一階に店を構えている。テイクアウト専門店だが、店内にはカウンターがあり、外のテーブルでも食べることができる。

Chego! メニュー

ロイ・チョイ氏が始めたフードトラック「Kogi BBQ」は、韓国風の焼肉をトルティーヤに乗せたタコス、Kogi Short Lib Tacosが名物だ。韓国料理とメキシコ料理のフュージョンというアイデアが大いに受けた。この Chego! のメニューも、各国の料理を融合させた独自メニューが並んでいる。

Chego! メニュー詳細

今回、注文したのは Kung Pou Noodle Bowl ($8.00)。賽の目に切った鶏肉とカシューナッツ、唐辛子を炒めた四川料理、「宮保鶏丁(Kung Pou Chicken)」はアメリカでも人気の中華料理だ。その味付けをベースにして麺に絡めて炒めたのが、この Kung Pou Noodle Bowl。メニューの説明書きでは Very Spicy(Spicy level 8/10) となっているので、かなり辛口である。

JARRITOS $2.50-

カウンターで支払いを済ませ、出来上がりを待つ。ついでに JARRITOS というメキシコ産の炭酸飲料も購入。$2.50。瓶にsince1950と書いてあり、こちらでは定番の品だ。オレンジ色の見た目通り、ファンタオレンジ的な味わい。栓抜きがドリンクサーバーの脇に付いてるのが最初分からず戸惑った。

受取りカウンターの脇にいろいろあります

やがて自分の番号を呼ばれた。受取りカウンターの脇には、テイクアウト用の箸や紙ナプキン、アルミホイルなどが並んでいる。LA生まれのシラチャ・ソース(Sriracha Hot Chili Sauce)もしっかりある。チリソースを適量掛け、箸を取って表のテーブルへと移動した。

Kung Pou Noodle Bowl $8.00

樹脂製の丼は様々なトッピングに覆われていて、パッと見だと何が入っているのか分からない。最上層部はフライドオニオン、パクチー、クラッシュドナッツ、ホーリーバジルなどが散らされている。その下には半熟の目玉焼きがあり、それをめくると、焼きそばがどっさり現れた。

モチっとした食感の平打麺に濃厚ソース

焼きそばの麺はモチっとした食感の平打麺だ。説明文で「knife cut noodles」と書かれているのは、恐らく韓国の切り麺「カルグクス(칼국수)」の直訳だろう。カルグクスは韓国式うどんと紹介されることが多いが、小麦粉だけでなく生地に大豆粉や玉子も混ぜている点が、うどんの麺と異なる。

終盤は辛さがさすがにしんどくなってきます

一緒に炒めてある具はパプリカ、ナス、レモングラスなど。麺にはオイスターソースがベースの濃厚なソースが絡んでいる。説明書きの通りかなり辛いが、そのバランスが何とも絶妙。あと粉チーズだろうか、マヨネーズにも似たコクのある酸味も感じる。

トッピングと絡めると絶品!

食べる前は鶏肉かエビが入っているものと想像していたのだが、目に見える動物性タンパク質は目玉焼きだけだった。それなのにこの満足感は凄い。フレッシュ・ハーブをはじめとする全体を覆う各種トッピングも、もちろん飾りではない。焼きそば自体の濃厚な味わいに様々な風味をほどこし、食感にも変化をもたらしている。

終盤はさすがに辛さがしんどくなってきた。JARRITOSの甘さで中和しつつ完食。食べ終えて千里香池袋店のカリフォルニア焼きそばをふと思い出した。たぶん偶然なんだろうけど、味の系統がちょっと似ていて面白い。他のメニューも色々食べてみたかったが、麺の量が500gくらいあったのでさすがに無理だ。

グリフィス天文台からLAの夜景

このChego!を始めとするロサンゼルスでの焼きそば体験は、とても強烈なインパクトを与えてくれた。先週紹介した Yaki Pan も似た系統の品だったが、こちらはまさに焼きそばの概念が変わる一杯だった。日本の焼きそばもこんな感じで進化していったら楽しいだろうなー。

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Sawtelle Tempura House (アメリカ - ロサンゼルス)

日本人が提供する焼きそばとして、Shin RamenYaki Pan を紹介したが、どちらも新しめの店で、スタイルも尖っている。もっと地域に密着した昔ながらの日系人が作る焼きそばも味わってみたい。そんな店がないかなーと調べてヒットしたのが、ソウテル大通り(Sawtelle Blvd)沿いにある Tempura House という店だ。

途上の車窓から撮影

場所は私が泊まっていたHollywoodからだと13㎞ほどの距離があり、Santa Monica行きの快速バスを使って1時間ほど掛かる。セレブたちが暮らす高級住宅街・Beverly Hillsや、折り紙をモティーフにしたTHE CHASE (HACER)という作品群など、車窓から見える景色がちょうどよい気晴らしになった。

Sawtelle Tempura House, LA

最寄りのバス停を降りたのは土曜日の正午。ギラギラと照り付ける直射日光を浴びつつ約1㎞、15分ほど歩いて目当ての店に到着。周りは住宅街で、Tempura House はその一角にある昔ながらのお弁当屋さんだった。テイクアウト専門店だが外のテーブルで食べることもできる。

Sawtelle Tempura House, 店内の様子

こじんまりしたお店は日本人の老夫妻2人で切り盛りしている。こちらの英語記事によると、2010年の時点でご主人が75才、奥さんは72才。それから7年経つので、お二人とも80前後だろうか。1989年にお店を始められたそうだから、創業28年になる。50歳を超えてからLAに店を出すなんて凄いなあ。

Sawtelle Tempura House アラカルトメニュー

メニューは注文カウンターの上に掲げられている。アラカルトの左上、White Riceの下の「Cho Mein」が焼きそばだ。おかずはチキンカツ、トンカツ、野菜天ぷらなどなど。おにぎりや天丼、テリヤキチキン丼、チキンカレーなどもある。

Sawtelle Tempura House セットメニュー

人気なのはLunch Platesというセットメニュー。ご飯に焼きそば、それとおかず2品なら 2 Meat Combo($9.00)、1品なら 1 Meat Combo($7.25)となる。せっかく遠いところを来たのだからと 2 Meat Comboを注文。支払いはキャシュのみ。カードは不可。

なんだかすごいことになっちゃったぞ

奥さんが盛り付ける際に「軽めでいいですよ」と伝えてみたが、あまり減ってない。それどころか「よかったらこれも食べてね」とスイカを付けてくれた。缶飲料も1本購入してお会計は$10.50。端数はおまけしてくれた。なんていいご夫妻なんだ。店頭のテーブルでさっそくいただこう。

2 Meat Combo $9.00

まずはお弁当の中身をざっと紹介。右下が焼きそば(Cho mein)。その左がチャーハン(Fried Rice)。おかずはハンバーグ・白身魚フライ(x2!!)・野菜炒め。樹脂製のお弁当箱はかなりの大きさで、持つとずっしり重い。缶飲料はカルピスをチョイス。あとおまけのスイカね。

焼きそば(Cho mein)は中華風

焼きそば(Cho mein)は中太の平打麺。モソモソした食感だがこれはこれであり。具は人参、セロリ、モヤシ、キャベツ。味付けは薄めで黒コショウを効かせてある。日本のソース焼きそばではなく中華風だが、ちょっとソースっぽい風味も香って、面白い味わいだ。

チャーハン(Fried Rice)も美味しい

その隣にチャーハン(Fried Rice)が盛られている。PANDA EXPRESSではチャーハンと焼きそばの合い盛り(ハーフ&ハーフ)が人気なので、それに倣ったスタイルかも知れない。ご飯にコーン、人参、グリンピース。ヒジキやゴマもチラホラ見える。こちらもなかなかスパイシーだ。

アメリカでは貴重なハンバーグ

ハンバーグ(Chicken Hamburg)は厚みが凄くて、めっちゃボリューミー。照り焼き風のタレも美味しく、おかず力が高い。「アメリカにはハンバーグがない」という記事を最近読んだが、そのためかこの店のハンバーグもかなり独特だ。ハンバーグに入れる野菜と言ったら微塵切りの玉葱で決まり。そんな先入観があったが、それを裏切るように断面から人参やキャベツが「こんにちは」している。面白いなー。

白身魚フライ(Fish Katsu)はガッツリ2切れ

白身魚フライ(Fish Katsu)は日本で食べるのと全く同じ。のり弁に乗ってるお馴染みのやつだ。ただしそれがガッツリ2切れ乗ってる点が、アメリカっぽい。野菜炒めはブロッコリー、キャベツ、人参を炒めたもの。味付けはごくあっさりで、焼きそばやチャーハンと同様にスパイスを効かせてある。

カルピスはCalpicoです

半分ほど食べたところで小休止。残りを眺め、「まだこんなにあるのか……」と思いつつカルピス、いや、カルピコ(Calpico)を飲む。割と有名な話だが、「カルピス」という商品名が「Cow Piss(牛のおしっこ)」に聞こえてしまうため、北米では「カルピコ(Calpico)」という名前で売られている。味は日本で飲むカルピスと全く同じ。懐かしい味わいだ。

デザートのスイカでもうお腹一杯

小休止で気合を入れなおし、残りを何とか平らげた。そしてデザートのスイカをいただく。冷たくて、瑞々しくて、暑いロサンゼルスではことのほか美味しい。お弁当のボリュームで既に満腹だったが、どうにか完食。もう何も入らない。ごちそうさまと合掌する。

それぞれの味が日本の標準とはちょっと異なっているので、正直、好みは分かれるかも知れない。しかし、それも含めてこの店は自分の好みにドンピシャだった。ご夫婦の心遣いや優しさ、やりたいことが端々に見えるのが何より素晴らしい。こういう形で日系移民は異国の地に根を張って来たんだなー、なんてしみじみしてしまった。焼きそばが売りの店なわけじゃないけど、本当に来て良かった。

西海岸を代表するビーチ・Santa Monica

この後、バスでさらに先へと進み、西海岸を代表するビーチ・Santa Monicaをウロウロしてみた。海水浴や観光目当ての人で賑わっていたが、堤防の先端では地元のおっちゃんたちが魚の切り身を餌に釣りをしていて、日本と通じる雰囲気も感じられた。違う点もあれば、共通する点もあり。旅は楽しい。

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Yaki Pan (アメリカ - ロサンゼルス)

ハリウッドからもう一軒、Yaki Panという店を紹介しよう。PanはフライパンのPanで、炒め物がメイン。店主は日本人だが日本料理でもラーメン屋でもなく、Asian Fusionと呼ばれるジャンルだ。こちらの英語記事で簡単に紹介されているが、客が自分の好みの具(肉や野菜)と主食(麺・ご飯)を指定し、1プレートならぬ1Bowl(丼)に仕立てるというスタイルなのだ。

映画スターの名前が刻まれるHollywood Blvd

訪れたのは6/17(土)の午後8時半ごろ。名優・名監督などムービースターたちの名前が敷き詰められたHollyWood Blvd沿いに、Yaki Panはある。最寄駅は地下鉄=Metoro RailのRed Line、Hoolywood/Vine駅。ハリウッド観光ついでに立ち寄りのにはちょうど良い場所だ。

Yaki Pan, Hollywood

Yaki Panが入っている建物はVine Theatreという古い劇場で、店舗のブースも元々チケット売り場だったらしい。看板にはPersonalized Bowlsと謳っている。なるほど、分かりやすい呼び方だ。小さな店で基本的にはテイクアウトのため、客席はカウンター4席しかない。

Yaki Pan 店内メニュー

注文カウンターの上には、主だったメニューが写真付きで掲示してある。大文字で書かれているのはVeggie Bowl, Soba Bowl, Udon Bowl。日本語に訳すなら、それぞれ「(野菜)丼」「焼きそば」「焼きうどん」のこと。この3つが、この店の基本形だ。具体的な注文は、カウンターに置いてあるオーダー用紙をチェックして、店主に渡そう。

Yaki Pan オーダー用紙

野菜は苦手なものが無ければ「全部(all)」で良いだろう。タンパク質(Proteins)は2つ選べる。今回は「牛肉(Beef)」と「豆腐(Tofu)を指定。1種類でも同じ値段($8)だけど、肉の量は倍になるのかな。そこは未確認。「CARB」は炭水化物(carbohydrates)=主食のことで、「焼きそば(Yakisoba)」をチョイス。辛さ(SPICE LEVEL)はMild, Medium, Spicyの三段階からMediumで。

海外へ行くと7upとかルートビアとか飲みたくなる

ついでに飲み物も冷蔵庫からピックアップ。アメリカではお馴染みの炭酸飲料、7up。焼きそばと併せて、税込みで$10.60だったかな? 実は7upとかルートビアが好きなので、日本でも輸入食料品店で購入して日常的に飲んでたりする。特にロサンゼルスは暑すぎて、こういうの飲みたくなっちゃうのよ。

調理の様子

注文を受け、店主が深さのある小さめのフライパンで調理を始めた。7upを飲みつつ、カウンターで出来上がりを待つ。美味しそうな香りが漂ってきたところで盛り付け、最後にゴマを掛けるか聞かれて、できあがり。

Soba Bowl $8.00

焼きそばの麺は中細の中華麺。具は牛肉と豆腐、キャベツ、モヤシ、ピーマン、玉ねぎ、長ねぎ、ブロッコリー。仕上げに白ゴマのトッピング。樹脂製の丼はかなり大きめで、しっかりした造り。ずっしりした重さから、ボリュームが多いことが実感できる。

独特な食感の麺

麺を食べてみると、表面に粉っぽさが残りつつ、ちょっとぬめっとしている。ロンドンのwagamamaで食べたのと似た独特な食感だ。味付けもwagamamaを思い出す味わいなので、醤油とオイスターソースがベースなのかな。でもこちらの方がずっと美味しくて、自分好みだ。日本風のソース味を予想していたが、意表を突かれるのも楽しいものだ。

しっかり焼かれた牛肉と豆腐

牛肉と豆腐はどちらもしっかり焼き目が付いている。仕込みの段階で焦げるまでじっくり焼き上げてあるのだろう。そして量も多い。Shin Ramenで食べたRamen Sobaもそうだったが、アメリカでは麺と肉を同量くらいにしないと、満足してもらえないのだろう。ま、肉自体も安いはずだから、理屈には適っている。

チリソースで味変も良し

途中でSriracha Hot Chili Sauceを掛けて味変もしてみた。日本人としてはボリュームが多く感じるが、味変でスパイシーにするとさらに食が進む。ところでこのSriracha Hot Chili Sauce、アジア系でテイクアウト可能な飲食店だと本当にどこにでも置いてあった。調べてみたらLA生まれの調味料らしい。ヒスパニック系住民が多い土地柄なので、チリ味が好まれるのだろうか。面白い。

食べ終えてすっかり満腹。「ごちそうさま、美味しかったです」と日本語で伝えて店を出た。注文方法も含めて、日本の焼きそばにも応用できそうなスタイルで、とても興味深かった。まだオープンして2年目くらいのはずで、ちょうど正念場か。日本の焼きそば、アメリカでももっと普及してほしいなあ。

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Shin Ramen (アメリカ - ロサンゼルス)

アメリカ西海岸の焼きそば特集。先々週は中華、先週はラテンアメリカと続きまして、今週は日本人が営むお店の焼きそばです。どーぞー。


今回、ロサンゼルスではHollywoodにある宿に4泊した。街中を歩くと、建物の隙間からあのHOLLYWOODサインが時々チラリと見える。今回紹介するのは、そのHollywoodの一角で営業している Shin Ramen というお店だ。

Hollywoodです

アメリカには中国系やヒスパニック系だけでなく、もちろん日系移民も大勢いる。日本料理店も数多くあり、特にラーメンはとてもポピュラーな品だ。こちらの Shin Ramen は日本人が経営していて、現地の人にも旅行者にもすこぶる評判が良いらしい。

Hollywood Blvd沿いの複合商業施設

訪れたのは渡米2日目、6/16(金)の昼飯どき。観光客のひしめくチャイニーズ・シアター周辺から500mほど西、ハリウッド・ブルバード沿いに目的の建物があった。いくつかのブースに区切られた建物が駐車場を囲むように建っていて、各ブースに異なる店舗が入っている。アメリカではよく見かけるスタイルの複合商業施設だ。

Shin Ramen, Hollywood, LA

Shin Ramenもピザ屋や中華料理店、パソコンショップなどの合間にあった。客席はカウンター10席にテーブル5卓。厨房の寸胴や中華鍋といい、カウンターの配色といい、日本にあるラーメン屋のスタイルをそのまま再現しているようだ。先客は2組だが、入れ替わりで途切れずに客がやってきた。

店内の様子

メニューはラーメンだけでなくカリフォルニアロールや餃子・枝豆など、いろいろと充実している。目当ての品はRamen Specialties のカテゴリにある Ramen Soba。肉無しは$8、鶏肉または豚肉入りが$11で、鶏肉入りを指定。それと飲み物でコーラ($2.25)も付けた。当然のようにおかわり自由。ロサンゼルスの暑さではとても嬉しい。ホール担当の男性の接客も丁寧で好印象。

Shin Ramen メニューの一部

さて、注文した”Ramen Soba”だが、日本語にそのまま直すと「ラーメン・そば」だ。いろいろ突っ込みたくなるが、どうも日本式の焼きそばのことをアメリカでは”Soba”と略すことも多いようだ。もちろん日本蕎麦も存在するのだが、その場合は”Buckwheat Noodles”とか書くことが多い。この店でもちゃんと区別するために小さく”Yakisoba”と添え書きしてあった。

厨房では焼きそばの調理が着々と進んでいる。麺を茹でる。パンとトングで、鶏肉・野菜を炒め、麺を加えてさらにじっくり炒める。頃合いをみて味付けし、四角い皿に盛り付けてできあがり。

Ramen Soba w/ Chicken $11.00

麺はもちっとした食感の中太麺。地色が黄色いが、かん水ではなく玉子麺かな。鶏肉、キャベツ、モヤシが一緒に炒められ。ネギがトッピングされ、脇にサニーレタスがどっさりと添えてある。塩コショウとスープで下味をつけて、仕上げにソースで味付け。日本人の店だけあって、日本でもソース焼きそばとして十分に通用する味わいだ。ロンドン発祥の日本食チェーン・Wagamamaも、この焼きそばをちょっと見習ってほしい。

モチモチ中太麺でソース味、日本でも通用する味

そして写真では分かりづらいだろうが、全体的なボリューム感が凄い。麺が多くて3玉分は余裕で使ってそうだ。さらに鶏肉がやたら多い。ロンドンのWasabiで食べたチキン照り焼き焼きそば弁当もそうだったが、日本人感覚だと「バランス悪!」って思っちゃうほど麺や野菜より肉に偏っている。食べても食べても鶏肉が減らず、食べ終わるころにはあごが疲れた。

食べても食べても鶏肉が減らない

どっさりサニーレタスに掛かっていたわさび風味のドレッシングも特徴的だった。量が多いので途中、七味唐辛子で味変したり。華やかな盛り付けにして、肉を惜しげもなく使う。まずはそれがこの土地で受ける前提条件のようだ。Instagramの普及で料理の見た目がますます重視されるようになってきたし、日本の焼きそばも盛り付けでの第一印象が、これまで以上に重要になる気がしてきた。

味変して麺をやっつけよう

コカ・コーラを一杯お代わりしてお会計。サービス料と税込みで$15.53。手書きでチップを加えて支払いを済ませる。次回・次々回と日系の飲食店で食べた焼きそばを紹介するが、アメリカで食べた焼きそばでソース味はこの店だけだった。オタフクソース社がLA近郊のサンタフェに子会社を起こして製造・販売を進めてるが、まだまだマイナーな存在のようだ。お好み焼やたこ焼き含めて、日本のソース文化がもっと受け入れられると嬉しいなあ。

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【メシコレ】茨城県西・県南の焼きそば店6選

メシコレの新記事です! 焼きそばの穴場、茨城の県西・県南エリアからオススメの焼きそば店を6店をご紹介してみました。どの焼きそばも個性的で、地元の人々に長年愛されてきた品々です。ぜひご一読のうえ、機会がありましたら訪問してみてくださーい。

地元民しか知らない個性派揃い!茨城県西・県南の焼きそばの名店6選

地元民しか知らない個性派揃い!茨城県西・県南の焼きそばの名店6選

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El Incomparable Peruvian Cuisine (アメリカ - ロサンゼルス)

以前、五反田のアルコイリスというペルー料理店の記事で、「チーファ(Chifa)」という料理ジャンルを紹介したことがある。ペルーなど南米諸国の現地の料理と、中国移民がもたらした調味料や技法が融合し、独特な中華料理として結実したのがチーファだ。焼きそばは「タヤリン・サルタード(Tallarin Saltado)」、チャーハンは「チャウファ(Chaufa)」という料理名で、チーファの定番として親しまれている。そして今回紹介するのは、それらをアレンジした料理なのだ。

Albertsons, Reseda, LA

その品を目的に訪れたのは、ロサンゼルス近郊のリシーダ(Reseda)にある El Incomparable Peruvian Cuisine というペルー料理店。市街地中心部からだと自動車がないと不便な立地だ。国際免許もレンタカーもない身なので、仕方なく地下鉄とバスを乗り継いで行ってみた。訪れたのは6/18の日曜日。週末は電車やバスの本数が極端に減ることもあって、ホテルから片道2時間近く掛かった。

El Incomparable, Reseda, LA

最寄りの停留所でバスを降り、強烈な日差しの中をとぼとぼ歩く。目的地にたどり着いたのは13時過ぎのこと。Albertsonsというスーパーマーケットの入ったショッピングセンターの一角に「PERUVIAN FOOD(ペルーの食べ物)」の文字を見つけてほっとした。焼きそば食べ歩きもなかなか大変なのだ。

El Incomparable 店内の様子

店内にはテーブルが9卓ほど配置され、地元の人たちがランチを楽しんでいた。厨房に男性2人、ホールに女性1人。ちなみに屋号の「El Incomparable」はスペイン語で「たぐいまれな」という意味らしい。空いているテーブルに促されて着席。

El Incomparable 牛肉料理メニュー

メニューをざっと眺めて牛肉料理(Beef/Carne)のページに目的の品、アエロプエルト・デ・カルネ(Aeropuerto de Carne/$12.50)を見つけた。他のページに鶏肉バージョンのアエロプエルト・デ・ポヨ(Aeropuerto de Pollo/$11.99)もあったが、牛肉の方を注文。それとチチャ・モラーダ(Chicha Morada/$1.99)というドリンクもお願いした。

パンの無料サービス

注文するとすぐにパンが出された。Universal Bakeryもそうだったが、パンの無料サービスはラテンアメリカで一般的なのかな。パンと一緒に緑色のドロドロした液体が入った容器も出された。アルコイリス鶴見のエル・ボスケでは黄色唐辛子=アヒ・アマリージョ(Aji Amarillo)のペーストだったが、今回は青唐辛子=アヒ・ヴェルデ(Aji Verde)のペーストのようだ。海外の食べ歩きは日本と何かしら違っていて、いちいち楽しいな。

Chicha Morada(glass) $1.99

チチャ・モラーダ(Chicha Morada)もすぐ出てきた。紫トウモロコシを原料としたジュースで、ペルーではごく日常的に飲まれている品だ。色のせいか、ブドウジュースを思わせる味わいで、すっきりした飲み口。トウモロコシが原料と聞くとギョッとするが、日本人でも全く違和感なく飲めるジュースだ。日本でもAmazonや、五反田駅前にあるペルー領事館の入っているビル内の輸入食料品店で購入できる。興味ある方はお試しあれ。

Tallarin Saltado de Carne $12.99

注文から15分ほど掛かってアエロプエルト・デ・カルネ(Aeropuerto de Carne)も運ばれてきた。そう。見ての通り、アエロプエルト(Aeropuerto)とは、麺とご飯を炒めたペルー版の「そばめし」のことなのだ。メニューには次のように紹介されている。日本語に訳せば「中華風ペルー式ライス・スパゲティ炒め」かな。

CHINESE PRERUVIAN STYLE FRIED RICE WITH SPAGHETTI MIXED WITH BEEF, GREEN ONIONS, RED PEPPER, EGG AND SOY SAUSE.

中細のスパゲティとインディカ米を炒めてます

紹介文の通り、麺は中細のスパゲティを使用。茹でおいてあるのか柔らかめで、アルデンテとは無縁の麺だ。前回前々回の中米・グアテマラのチャオミン(Chow Mein)で使われていた中華麺とも異なる。長さは短めだが、神戸の「そばめし」ほどは短くない。ご飯は粘り気の少ないインディカ米で、パラパラな仕上がり。具の牛肉は噛み応えのある赤身を良く焼きにしてある。その他、玉子、人参、赤ピーマン、長ネギが使われていた。

牛肉は噛み応えのある赤身

味付けは醤油ベースで割りと濃いめ。日本で食べたロモ・サルタードやタヤリン・サルタードと同じく、ニンニクもかなり効かせてある。日本の大衆中華で出されたら、「うんうん、よくわかっているなこの店」と頷くことだろう。食べているうちにインドのコンビライスヌードルや、松山の「美ゆき」大洲の「さおや」で食べたチャンポンを思い出した。ペルーとインド、ペルーと愛媛がロサンゼルスで繋がるなんて面白いなあ。

アヒ・ヴェルデ(Aji Verde)で味変しつつ完食

そしてアエロプエルト(Aeropuerto)が目の前に置かれた瞬間から判明していたが、予想通りボリュームがかなり多い。日本の一般的な食堂だと、チャーハン二人前くらいの分量か。青唐辛子ペースト=アヒ・ヴェルデ(Aji Verde)で味変しつつ、どうにか全て食べ切った。腹が苦しいが、念願の品を食べられて大いに満足。苦労してやってきた甲斐があった。

ちょうど食べ終わると同時に団体客が入って来た。食べた料理に税金とチップを加えてお会計。帰りは流行りのアプリ、Uberを使って最寄りの駅までスムーズに移動した。それにしてもラテンアメリカの焼きそば文化はバリエーション豊かで奥が深いなあ。この料理がなぜ「空港(アエロプエルト/Aeropuerto)」なんて名前を付けられたのかは全くわからないままだが、ま、そこは今後の課題にしておこうっと。

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Guatemalteca Bakery Restaurant (アメリカ - ロサンゼルス)

前回、サンフランシスコにあるグアテマラ料理店、Universal Bakeryを紹介したが、実はその数日前、ロサンゼルスでもグアテマラ料理店に寄っていた。店名は Guatemalteca Bakery Restaurant。Universal Bakeryと同じく、パン屋(Bakery)を兼ねたカフェ・スタイルの店だ。

Guatemalteca Bakery Restaurant, East Hollywood, LA

6/15(木)の午後3時半ちょっと前。ロサンゼルスへ着いてホテルへチェックインしてからすぐに店へと向かった。Guatemalteca Bakery RestaurantはロサンゼルスのEast Hollywoodにある。最寄駅は市が運営する地下鉄、Metoro RailのRed Line、Vermont/Santa Monica駅。初めての国、初めての街に着いてまだ数時間。地下鉄も初めてでGoogle Mapsだけを頼りに、おっかなびっくり辿り着いた。

Guatemalteca Bakery Restaurant, 店内の様子

店内はかなり広い。入って左側が食料品とパンの売り場。正面がイートインの注文カウンターで、右がイートイン・スペースになっている。ちなみにアメリカだとイートインは「For Here」、持ち帰りは「To Go」と言う。”For here or to go ?”とか聞かれても、私のように戸惑ってはいけない。

Guatemalteca Bakery Restaurant, メニュー

注文カウンターの後ろにはメニューが掲げられている。Sandwiches/Panesの欄には、焼きそばパン(パン・コン・チャオミン/Pan con Chow Mein/$3.49)の文字もあった。しかし目的はそれではない。今回注文したいのは「チャオミン・トスターダ(Chowmein Tostada)」というメニューだ。詳しくは後述するが、この英語記事でこの店の同品が紹介されていて、今回はそれを目当てに訪れた。

Guatemalteca Bakery Restaurant, メニュー拡大

「チャオミン・トスターダ(Chowmein Tostada)」は店の正式メニューにはない。しかし注文カウンターの隣に調理済みのチャオミンやフリホレスが並んでいる。そこでチャオミンを指さしながら「Can I have a chow mein tostada?」と訊いたら、すんなり通じた。ほっ。ついでにオルチャータ(Horchata/$2.00)という飲み物もオーダーした。色々訊かれたが渡米初日で耳が英語にまだ慣れていない上に、店員の訛りもきつかったため、やり取りに少し戸惑った。どうにか会計を済ませ、テーブルへと移動。

ガラスケースの向こうにチャオミンが

メキシコ料理のタコスなどで使われるトルティーヤ(Tortilla)はご存じだろう。トウモロコシが原料の薄く平たく丸いパンだ。それをカリカリに揚げたのがトスターダ(Tostada)で、トルティーヤと同じようにいろいろトッピングして食べる。そのトスターダにチャオミンを乗せたのが「チャオミン・トスターダ(Chowmein Tostada)」だ。この記事この記事を見ると現地でも人気の食べ方のようだ。見方によっては焼きそばパンの一種ともいえる。写真だと分かりにくいが、この店のトスターダはなかなかの大きさで、チャオミンも日本のイタリア料理店で食べるパスタ一杯分くらいは盛られていた。

Chowmein Tostada $2.50

前回も紹介した通り、グアテマラでは焼きそば(チャオミン/Chow Mein)は日常的に食べられている。この店のチャオミンは、ヤワヤワで中細の中華麺を使用。遠目にはパスタに見えたのだが、食感はまるで違った。具は鶏肉、パプリカ、セロリのピクルス。味付けはトマトと醤油がメインだろうか。柔らかくしすぎたナポリタンのような食味だ。前回食べた品とはかなり味わいが異なる。面白いなあ。

グアテマラ式チャオミン トマト風味

そのチャオミンを、トスターダにレタスを敷いて、山盛りに盛り付けてある。さらにその上から、サルサ・粉チーズ・パセリ・オニオンスライスなどがトッピングされている。チャオミン自体はぼんやりとした味わいだが、サルサや粉チーズがその風味を補って、思っていた以上に美味しい。

トスターダごと齧っても良し

「そういえば、ハードタコ(Hard Taco)は丸ごと齧るんだったよな」と全体を手に持って、トスターダごと齧ってみる。トスターダのカリカリとチャオミンのヤワヤワ、食感のコントラストが楽しい。ただしハードタコ(Hard Taco)のシェルほどには、トスターダにカーブが付いていないのが難点だ。チャオミンの汁気が垂れて、手がベタベタするのは避けられない。慣れれば上手に食べられるのかな。

Horchata $2.00

飲み物のオルチャータ(Horchata)にも触れておこう。米を原料にしたミルクのような味わいの飲料で、前回紹介したアロス・コン・レチェ(Arroz con Leche)に風味は近い。一番の違いは冷やしてあること。シナモンの香りがつけられていて、爽やかな飲みくちだ。ただし溢れんばかりに注がれていて、いや、実際に溢れてて容器がベタベタする。食べ物と飲み物の両方で手がベタベタして、どうにもそこが印象に残ってしまった。ウェットティッシュを持参して本当によかった。

レシートはこんなんでした

ところで「チャオミン・トスターダ(Chowmein Tostada)」の価格だが、正式メニューに無いからか、レシートでは「エンチラーダ(Enchilada/$2.50)」で計算されていた。焼きそばパン(Pan con Chow Mein)の$3.49に比べると安すぎる気がするが……ま、いいか。クレジットカードの手数料と消費税がついて$5.41。手頃で美味しくボリュームも満点のグアテマラ焼きそば。時間帯はちょっと遅めだが、大満足のランチになった。いつか現地でも食べてみたいなー。

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Universal Bakery (アメリカ - サンフランシスコ)

アメリカ西海岸の焼きそば特集。先週は中華系のあれこれをご紹介しましたが、今週はラテンアメリカ系の飲食店で食べた品々をご紹介します。今回訪れたサンフランシスコ・ロサンゼルスの属するカリフォルニア州は、ヒスパニック系の住民が多いため、それらの料理店も充実しているのです。日本ではまず提供されていない変わったスタイルばかり。「あの国では、こんな焼きそばの食べ方をしてるのか!?」なんて驚いていただけたら幸いです。


日本ではほとんど知られていないが、中米のグアテマラやエルサルバドルでは「チャオミン(Chow Mein)」と呼ばれる焼きそばが日常的に食べられている。19世紀、コーヒー・砂糖・綿花・バナナなどプランテーション農業の労働力として、両国とも世界各地から移民を受け入れた。その中にもちろん中国人もいて、中華料理、なかでも「チャオミン(Chow Mein)」が現地に根付いたらしい。距離的にはだいぶ離れているが、以前紹介した南米ペルーのチーファと同じような流れだ。

Universal Bakery, SF

グアテマラ式のチャオミン(Chow Mein)を食べに訪れたのは、サンフランシスコの南寄り、バーナルハイツ(Bernal Heights)という区域にある Universal Bakery というお店。「みんなのパン屋さん」的な名前の、カフェスタイルのグアテマラ式ベーカリーだ。看板にはスペイン語で同じ意味の「Panaderia La Universal」とも書いてあり、窓ガラスには「Since 1983」の文字も見える。

Universal Bakery 店内の様子

訪れたのは6/21(水)の朝10時半過ぎ。「BART(バート)」という地下鉄の24th St駅から歩いて訪問。どうもこの辺はヒスパニック系が多いエリアらしい。落書きがあちこちにあって、治安はあまり良くなさそうだ。Universal Bakery の店員も客も、やはりヒスパニック系が主体だ。店内にはスペイン語が飛び交い、英語はほとんど聞こえない。

Universal Bakery メニュー

注文カウンターの後ろの壁にメニューが掲示されている。ざーっと眺めて、「Chow Mein ($8) / Guatemalan Style Chow Mein」は見つけたが目的の品は書いてなかった。あらかじめ公式サイトメニューをチェックしておいてよかったなあ。

Universal Bakery メニュー拡大

注文したのは「チャオミン・コン・フリホレス・イ・ケソ(Chow Mein con Frijoles y Queso/$9.00)」。舌を噛みそうなメニュー名だが、詳細は後ほど。それと飲み物、「アロス・コン・レチェ(Arroz con Leche/$2.00)」。後者はお米をミルクで煮たライス・プディングの一種だ。「アロス(Arroz)」は「お米」、「レチェ(Leche)」は「ミルク」。名前をうっかり忘れたので、「ライス・ミルク(Rice Milk)」と注文したが、無事に通った。

アロス・コン・レチェ & パン

支払いを済ませると「パンもどうぞ」とサービスで渡してくれた。「食べ歩きなのに、ありがた迷惑だなー」なんて思いつつ受け取る。が、これがあとで活用されることになろうとは! アロス・コン・レチェ(Arroz con leche)は温かくて、お粥か白酒のよう。ドロドロして甘く、沖縄の「玄米」や「ミキ」にも似ている。優しい味わいでなかなか美味しい。

チャオミン(Chow Mein)はタッパーに入れて冷やしてあるのを、レンジで温めて盛り付ける方式だ。意外に時間が掛かる。自分の分が出来上がったと思ったら、自分より前に注文した地元の若者の分だった。「わー、やはり焼きそばを日常的に食べているんだなー」とちょっと感動。自分の分も10分余りで出来上がり。カウンターで受け取ってテーブルへと運ぶ。

Chow Mein con Frijoles y Queso $9.00

まずは「チャオミン・コン・フリホレス・イ・ケソ」(Chow Mein con Frijoles y Queso」の名前から解説しよう。「チャオミン(Chow Mein)」はもちろん「焼きそば」。「コン(con)」は英語の「with」に近い前置詞。「フリホレス(Frijoles)」は本来「インゲン豆」を意味するが、ここでは「豆の煮もの」を指す。「イ(y)」は英語の「and」に相当する接続詞。「ケソ(Queso)」はチーズ。てなわけで、「豆煮込みとチーズを添えた焼きそば」となる。

グアテマラ式 チャオミン

この店のチャオミン(Chow Mein)は中細の中華麺を使用していた。柔らかくて麺は短め。ペルーのタヤリン・サルタードだとスパゲティが定番だが、その違いが興味深い。具は、よーく火が通った鶏肉に、人参・ピーマン・赤ピーマン・セロリ。鶏肉を使っているから「チャオミン・コン・ポヨ(Chow Mein con Pollo)」になるのかな。味付けは醤油風味で、拍子抜けするほど癖が無い。素朴な中華風の味わいだ。

豆の煮込み、フリホレス

フリホレス(Frijoles)はラテンアメリカ全般で食べられている超定番の料理だ。インゲン豆を塩味で煮た品で、ブラジルではフェイジャン(Feijão)と呼ばれている。この店は黒い色だったが、赤や白もあるらしい。チョコレートや餡子に似ているが甘くはなく、また辛くもない。塩気と豆のコクがじんわり美味しく、ネパールのダルスープっぽさも感じる。もちろんチャオミン(Chow Mein)に絡めてもいける。

チーズとサワークリームも

皿の反対側には白いチーズ(ケソ/Queso)と白いサワークリーム(クリーマ・グァテマラテカ/Crema Guatemalteca)が添えてあった。チーズは恐らくグアテマラの標準的なチーズで、ボソボソしたタイプ。味わいはあっさりしている。発酵具合が浅いのかな。白いサワークリームは酸味が爽やか。マヨネーズをごくさっぱりとさせた感じ。どちらも中米の定番の品らしい。

ところでこの店には焼きそばパンも売られている。スペイン語で「パン・コン・チャオミン(Pan con Chow Mein)」。値段は$4.00。それも食べてみたかったのだが、ちょうどパンが付いてきたので、ええいっと自作してみた。

パンと焼きそばで自作の焼きそばパンを

パンに切れ目を入れ、チャオミンとフリホレスとチーズ、サワークリームを挟む。うむうむ、なかなか美味い。きっと地元民もこういう食べ方をするに違いない。そう思うとなんだかグアテマラが遠い国に思えなくなってきた。しかし断面図だけ見ると、フリホレスとチーズ・サワークリームが餡バターにしか見えないな。

チャオミンもアロス・コン・レチェもパンも平らげて、すっかり満腹。なかなか食べ応えのある朝食だった。ただ焼きそばを食べるのではなく、伝統的な他の食材・料理と組み合わせるというのが、とても興味深い。ラテンアメリカの焼きそば文化の一端を垣間見ることができて、実に有意義なひと時を過ごせた。日本で食べられないのが惜しいなー。

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Wok Shop Cafe (アメリカ - サンフランシスコ)

アメリカでの「焼きそば」の料理名だが、「チャウメン(Chow Mein)」や「フライド・ヌードル(Fried Noodles)」のほかに「ローメン(Lo Mein)」という呼び方も良く目にする。ローメンと言うと信州・伊那のローメンを思い出す方も多いだろうが、あれは炒肉麺が由来の「肉麺」で、「牛肉麺」や「太肉麺」ならともかく今回は無関係。中華料理で単に「ローメン」と呼ぶ場合、多くは餡かけ麺を意味する「魯麵(滷面)」か、和え麺を意味する「撈麵(捞面)」のどちらかだ。アメリカの「ローメン(Lo Mein)」は後者の「撈麵(捞面)」に当たる。

以前紹介した四谷・嘉賓の「蚝油捞面(蠔油撈麵)」が好例だが、本来の「撈麵(捞面)」は麺を炒めず、タレと和えた料理だ。しかしアメリカの「ローメン(Lo Mein)」のレシピ動画などを見ると、混ぜ炒めている場合が多い。特に東海岸では、「チャウメン(Chow Mein)」はカタ焼きそば、「ローメン(Lo Mein)」は混ぜ炒めた焼きそばと、かなり明確に区別されているようだ。チャプスイの流行はニューヨークから始まったらしいので、その影響もあるのかも知れない。料理が他の地域へと伝播する際には、こういった変容が付き物だ。それだからこそ面白い。

Wok Shop Cafe, Lower Pacific Heights, SF

さて、せっかくアメリカへ来たのだから実際にどんな「ローメン(Lo Mein)」が食べられているのかも現地調査をしてみた。やってきたのはサンフランシスコのローワー・パシフィック・ハイツというエリアにあるWok Shop Cafe。漢字表記だと「鑊熟小館」で湖南料理(湖南菜/Hunan Cuisine)を売りにしている。老舗ではないがチェーンでもない。チャイナタウンからも離れているごくカジュアルな中華料理店だ。日本でいえば大衆的な町中華かな。

Wok Shop Cafe 店内の様子

6月20日、火曜日の20時半近くに訪問。サンフランシスコは起伏の多い街だが、その地形の影響かフロアが三段階で高くなってる。テーブルごとのスペースは広く、ゆったりした造りだ。先客は中国系の大人数が一組と、白人の二人連れが一組。あとから別のカップルも来た。持ち帰りの客もいて、アジア系以外も普段から利用しているようだ。

Wok Shop Cafe 麺類メニュー

さてメニュー。麺類のページの筆頭にあった「招牌捞麺(Wok Shop Lo Mein/$7.95)」と國藩雞(Governor’s Chicken Kew/$10.25)、バドワイザー($3.00)を注文した。麺類の下の方に「招牌炒麺」という品もあり、こちらは「Rice Noodles」と書かれている。米粉(ビーフン)ではなく、より太めの湖南省名物、米線(べいせん・ミーシェン)かな。それにも興味があるが、とりあえず今日の目的は「ローメン(Lo Mein)」なので初志貫徹。

バドワイザー $3.00

バドワイザーがすぐに運ばれてきた。ビールは国内産のバドワイザーとバドライト、輸入物の青島ビールとサッポロに区分されていて、前者が3ドル、後者が4ドルになっている。ほんのちょっとバドの方がお得なのだ。アジアの屋台だと瓶だけ渡される場合が多いが、こちらではちゃんとタンブラーも出してくれた。やはりレストランなんだな。

招牌捞麺と國藩雞

さらに注文から15分ほどで招牌捞麺(Wok Shop Lo Mein)と國藩雞(Governor’s Chicken Kew)が運ばれてきた。うーむ、危惧していた通り、量が多い。「たまには焼きそばだけでなく、サイドメニューも食べたいな」なんて思ったのが、間違いだったろうか。ま、とにかく食べ進めよう。

招牌捞麺(Wok Shop Lo Mein) $7.95

招牌捞麺(Wok Shop Lo Mein)の麺はモチモチの太麺を使用。たぶん玉子麺(蛋麺/Egg Noodle)。焼き目は見当たらないが、見た目からして焼きそば以外の何物でもない。麺が短く切られておらず、長いままなのが珍しい。以前、横須賀の米軍基地のManchu Wokで食べた「Noodle」もこんな感じだったっけ。

モチモチの太麺が美味しい

具は豚肉とエビ。野菜はシンプルにキャベツだけ。「Combination」と付記されている通り、肉と魚介の両方を使ってはいるが、五目というほど種類は多くない。ただ豚肉は厚みがあり、エビはプリプリで食べ応えは十分。味付けはたまり醤油(老抽/dark soy sauce)がベースで、脂っこく甘じょっぱい。アメリカの「ローメン(Lo Mein)」について調べたら蜂蜜を使うレシピもあったから、甘味は砂糖じゃないかも知れない。麺の太さを含めて上海焼きそばっぽさもあり。ボリュームたっぷりで美味しいが、アメリカ中華としか言いようのないオリジナリティを感じる焼きそばだ。

鶏料理メニュー

サイドオーダーの國藩雞(Governor’s Chicken Kew)はちょっと説明が必要な品だ。直訳すると「知事のチキン」だが、一般的には「左宗棠鶏(さそうとうどり/General Tso’s chicken/ツォ将軍のチキン)」の名で知られるアメリカ中華のひとつである。以前、Panda ExpressManchu Wokの記事でオレンジチキンというアメリカ中華を紹介したが、あれと同じ系統の料理だ。異名が多数あって、「Governor’s Chicken」もその一つ。

また、英語表記の最後の「Kew」は中国語の「球」の事で、このページによると大きな切り身を意味するらしい。「Chicken Kew」で鶏肉の切り身。「Steak Kew」や「Chow Gai Kew」などの中華料理も見つかった。中途半端に中国語の音写を使わなくても良い気がするが、その辺の感覚は良く分からない。

國藩雞(Governor's Chicken Kew) $10.25

左宗棠鶏(General Tso’s Chicken)は、湖南省出身の「左宗棠」という清朝末期の政治家から名前を取っていることもあって、一応は湖南料理(Hunan Cuisine)に分類されている。なので、たぶんこの店でのチョイスとしては正解なはず。揚げた鶏肉を野菜と炒め、ピリ辛でしょっぱめの濃厚なタレを絡めたもの。野菜は瓜、人参、ブロッコリー、クワイなど。配膳の時に「ご飯は要る?」と聞かれたが、なるほど、これは飯が欲しくなる味だ。鶏肉のひとかけに旨味がギュッと詰まっている。

旨味がギュッと詰まってます

ご飯の代わりにビールをお代わりしたが、腹が一杯で苦しくなってきた。二皿ともどうにか完食し、ビール一口分だけを残してお会計。ふー、すっかり満腹だ。食べている最中もお客さんが途切れなく訪れて、持ち帰り注文などしていた。もしかしたら映画でおなじみの紙の箱で持ち帰るのかな。あれで食べる中華料理って、何故か美味しそうに見えるんだよなー。

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Far East Cafe (アメリカ - サンフランシスコ)

カタ焼きそばが中国ではなくアメリカで生まれたという「カタ焼きそばアメリカ発祥説」について、明治27年にはアメリカ式中華料理のチャプスイが日本に伝来していたことを示す文献を前回の記事で紹介した。それとは別に「カタ焼きそばアメリカ発祥説」を私が確信するに至った理由がもう一つある。それは漢字表記だ。

日本ではカタ焼きそばを「炸麺」と書く場合が多い。しかし現代の中国語では、「炸麺(炸面)」は揚げパンやドーナツを指す単語だ。一方、中国本土の広東や香港ではカタ焼きそばを「煎麺(煎麵)」と表記する。日本の広東料理店ではまず目にしない書き方だ。

さらに上海では(内部が柔らかいケースも多いが)「両面黄(兩面黃)」、台湾では「広東炒麺(廣東炒麵)」と書く。その他の国でも「広東風の焼きそば」=「カントニーズ・チャウメン(Cantonese Chow Mein)」と呼ぶ場合が多い。インドに至っては「アメリカン・チョップシ(American Chop Suey)」と、そのままズバリの呼び方まである。もしカタ焼きそばが中国に元々存在する料理なら、料理名、特に漢字表記はある程度統一されていないとおかしい。それがここまでバラバラなのは、中国本土には無かった料理だったからとしか思えないのだ。

Far East Cafe, Chinatown, SF

さて、それはそれとして、サンフランシスコのチャイナタウンからもう一軒、Far East Cafe を紹介しよう。1920年(大正9年)創業で、このエリアの中華料理店では現存する最古の老舗だ。漢字表記だと屋号は「康年海鮮酒家」。「康」は「庚」の異体字か誤表記かな。たぶん創業した1920年が庚(かのえ)年なので命名したのだと思う。英語名と全く関連性が無いのが面白い。

チャイナタウン入り口のドラゴンゲート

訪れたのは前回の New Woey Loy Goey Restaurant と同じ日の夜のこと。ライトアップされたドラゴンゲートを潜ってチャイナタウンへと足を踏み入れる。Far East Cafe の店内はかなり広かった。フロアにはテーブルが数十卓並び、ディナーを楽しむ客たちで賑わっていた。内装は品のあるゴージャスさ。いかにも老舗という趣きだ。

チャイナタウン入り口のドラゴンゲート

あらかじめ公式サイトやYelpで確認済みだが、改めてメニューをチェック。うむ、やはりチャプスイがメニューに無い。創業した1920年ごろはチャプスイ・レストランがアメリカ中で大流行していた時期なので、この店でも恐らく当初は提供していたのだろうが、本物志向の動きに伴ってなくなってしまったものと思われる。ま、想像にすぎないのだが。

Far East Cafe 焼きそばメニュー

注文したのはコンビネーション焼きそば(康年炒麺/Combination Chow Mein/$11.50)と青島ビール($6.00)。ここでうっかりして揚げ麺の指定を忘れてしまった。New Woey Loy Goey Restaurant と同じく、1ドル増しで揚げ麺(Hong Kong Style Pan Fried Noodle)を指定できるのだが、カタ焼きそばではなく炒めた焼きそばがでてきてしまった。この場面、なんか既視感あるなーと思ったら長崎の四海楼だ。ちゃんぽんの元祖の店で「皿うどん」を注文したらチャンポン麺を炒めた品がでてきたっけ。なんか丸被りのエピソードだな。

青島ビール $6.00

しかしなぜ、カタ焼きそばが「香港式(Hong Kong Style)」なのだろう。今の香港で炒麵を注文したら十中八九、「醤油焼きそば(豉油皇炒麵)」が出てくる。そもそもアメリカでも「広東風焼きそば(Cantonese Chow Mein)」と呼んでいたはずなのだが。青島ビールを飲みつつ考えてみた。

これは想像だが、広東風焼きそば(Cantonese Chow Mein)が広東に存在しないことがアメリカで知れ渡り、呼び方を「香港式(Hong Kong Style)」に変えたのではないだろうか。さらに豉油皇炒麵が香港で普及したのは、広東風焼きそば(Cantonese Chow Mein)が世界に広まるより後だったのかも知れない。豉油皇炒麵は、香港では「事頭婆炒麵」=「英国女王の焼きそば」とも呼ばれているらしい。エリザベス2世が女王に即位したのは1952年なので、豉油皇炒麵もその前後に生まれた可能性がある。日本でソース焼きそばが広まった時期とも重なるから、なにか影響しあったのかなーなんて想像も膨らむ。

康年炒麺(Combination Chow Mein) $11.50

コンビネーション焼きそば(康年炒麺/Combination Chow Mein)は具沢山の炒めそばだった。麺はごわっとした食感の中太蒸し麺。麺が短いのはフォークでも食べやすくするためだろう。ロンドンの焼きそばもそうだった。具は鶏肉・チャーシュー・エビ・イカ・貝柱、モヤシ・ネギ・キャベツ・人参・ネギ・セロリ。とても具沢山で盛り沢山の焼きそばだ。

太麺と甘目の味付けがマッチしてる

味付けは醤油(生抽)とたまり醤油(老抽)がベースで、割と甘めの味付けだ。食材の旨味も上手に活かしていて、とても美味しい。ただし、料理としての意外さや驚きは少ない。中国人も「ああ、炒麵だね」と納得するはずのChow Meinだ。強いてアメリカらしさを挙げるなら、具のセロリか。アメリカ中華の定番の食材だ。アメリカの西海岸ではこのスタイルがスタンダードらしいが、東海岸のChow Meinはカタ焼きそばが主流で、さらにちょっと変わったスタイルのもあるとか。いつか確かめに行かなくては。

セロリが使われているのがアメリカっぽう

会計の伝票と一緒にアメリカ中華ではお馴染みのフォーチュンクッキーも出てきた。中町素子さんの書かれた『日系チャプスイレストランにおけるフォーチュンクッキーの受容』という論文に詳しく書かれているが、このフォーチュンクッキーを考案したのが日系移民という史実も、だいぶ知られるようになってきた。

伝票と一緒にフォーチュンクッキー

前回の記事でゴールドラッシュを期に中国からの移民が増え続けたことに触れたが、その現象に危惧を覚えた合衆国政府は、1882年(明治15年)に中国人排斥法を発令した。1906年のサンフランシスコ大地震で移民の記録が失われて、規制はかなり穴だらけになったのだが、公的には中国からの新しい移民の入国は禁止され、1943年12月に同法が廃止されるまでその状況は続く。その間、中国人に代わって日本人がその立場を占めた。1917年以降、全米各地でチャプスイ・レストランを開業して大流行をもたらしたのは日系移民が主体だった。その際に日本の辻占煎餅をフォーチュンクッキーとして提供し、アメリカの中華料理店の定番となった。ただし、1924年に排日移民法が制定されて状況は大きく変わり、終戦までの日系移民の苦難の歴史が始まるのだが……

近いうちに良いことあるよ、的なお告げ

一方、中国人排斥法でアメリカを追われた華僑たちは、アメリカ以外の世界各地へ渡航した。その際にアメリカで生まれたチャプスイを、カタ焼きそばという食べ方と共に渡航先へ持ち込んだと考えると、冒頭で述べた漢字表記の揺れも納得できる。横浜中華街、当時の南京町もその渡航先のひとつで、1895年(明治28年)の日清戦争終結、1899年(明治32年)の外国人居留地の廃止、さらに1923年(大正12年)の関東大震災を経て南京町の華僑は増え続けた。そしてアメリカで生まれたカタ焼きそばは、極東(Far East)で「炸麺」と名前を変えて定着していったのだ。

お会計を済ませて店を退出。「香港式(Hong Kong Style)」を注文し損ねたが、西海岸でのスタンダードなスタイルのChow Meinを食べられたので良しとしておこう。フォーチュンクッキーのお告げも良いこと書いてあったしね。焼きそばの麺のように複雑に絡み合った謎を解きほぐすの、ほんと楽しいなあ。

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