味の幸華 (静岡県熱海市)

静岡県東部の焼きそば特集も今週でラスト! 最終週は伊豆半島の中華料理店、3軒をご紹介します。


スープに浸った焼きそばってのは意外と多い。有名処だと塩原のスープ入り焼きそば黒石のつゆ焼きそば。他にも宮津カレー焼きそばのウェットタイプや小見川のつゆだくカレー焼きそば函館のつゆだく焼きそばなどなど……。あ、船橋のソースラーメン元々は焼きそば(ダイヤキ)だったっけ。

そして伊豆を代表する温泉街・熱海にも、「汁入焼そば」を提供する店を見つけた。「味の幸華(こうか)」という中華料理店で、創業は昭和6年(1931年)。今年で86年目という、かなりの老舗である。これが他で見かけたことのないスタイルなのだ。

熱海市 中華料理 味の幸華

熱海の幸華を訪れたのは9月上旬の平日のこと。店舗は糸川という川に面して建っている。熱海は急な坂の多い町で、糸川もJR東海道本線の来宮駅のあたりからまっすぐ下り、海に流れ込んでいる川だ。なお、この辺りは古い温泉街に付き物の旧赤線地帯で、今もところどころにその名残を留めている。

中華料理 味の幸華 店内の様子

店は奥に長い造りで、左手が厨房。それに面してカウンターが5席。奥の階段から2階へも上がれる。11時半くらいの入店で自分が口開けだった。カウンターで餃子を包んでいた女性が「いらっしゃいませ」と告げてお冷を出してくれる。

中華料理 味の幸華 麺類メニュー

例の品は「伊府湯麺(汁入焼そば) 1150円」というメニュー名で提供されている。「ほう、伊府麺か……」と一人合点しつつ、それを注文。名物のジャンボ焼売も食べてみたかったが、食べ歩きなので今回は我慢。しばらくすると厨房から何やら油で揚げる音が聞こえてきた。10分弱で配膳。

伊府湯麺(汁入焼そば) 1150円

麺は揚げ麺で、いわゆるカタ焼きそばだ。これまで当ブログで何度か紹介したが広東では伊府麺という揚げ麺がある。本来の伊府麺は水を使わず玉子だけで練った平打ちの卵麺だ。揚げたものをお湯で戻して使うため、インスタントラーメンのルーツとも呼ばれている。ただし幸華は卵ではなく、水とかん水を使った麺のようだ。太さも異なるし、単に「揚げ麺」という意味合いで「伊府(湯)麺」と名付けたのかも知れない。

伊豆らしい海鮮たっぷりの豪華な具材

そのパリパリの極細麺の上には銀餡が掛かっている。餡の具は豚肉、キャベツ、モヤシ、人参、キクラゲ。さらにカニのほぐし身、賽の目に切った赤チャーシュー、エビ、イカ、錦糸玉子、グリンピースなどがトッピングされていた。伊豆らしい海鮮たっぷりの豪華な具材だ。

麺の下部がスープに浸ってるんです

そこまでは老舗の広東料理店で提供される、正当派のカタ焼きそばそのもの。しかし見ての通り、麺の下部がスープにヒタヒタと浸っているのが、一般的なカタ焼きそばとは大きく異なる。まさに「汁入焼そば」である。

最後までパリパリ感あり

上に掛かった餡は、具の風味を活かすべく控えめな味わいだ。それとは対照的に、スープは割と濃いめの味付け。醤油と魚介系の出汁が効いていて、後を引く美味しさである。皿の端に添えられたカラシや、卓上に置いてある酢を使った味変もよし。

卓上の調味料類

意表を突かれたスタイルだが、予想以上に美味しくてスープもほぼ飲み干してしまった。その場で揚げたパリパリ麺は、汁に浸りながらも最後まで硬さは割りと保たれていた。

歴史ある町ならではの隠れた逸品。いつかこの辺りに宿を取って、夜にのんびり訪れてみたい。その時はジャンボ焼売も必ず食べようっと。

幸華

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いで湯っこ市場 (静岡県伊東市)

伊東市にある田中屋製麺所という会社では、特徴的な極細の焼きそば麺を販売している。神田鯉風先生のブログ記事で知り、さらにお裾分けもいただいたりして、自分で以前調理したこともある。ただ麺があまりに細すぎて混ぜ炒めるのに苦労した。(当時のツイート: その1その2)

伊東市 JAあいら伊豆 いで湯っこ市場

この麺を使う飲食店が現地にあるなら食べてみたい。そう思って伊東周辺の店を調べてみたが、どうにも見つからず。ただ、JAあいら伊豆の「いで湯っこ市場」という直売所で、毎週末に田中屋製麺所が自ら焼きそばの屋台を出店しているそうな。ほほーっと興味が湧き、9月上旬の土曜日に訪れてみた。

田中屋製麺所 伊豆名産焼きそば麺

前夜に泊まった伊豆高原のライダーハウスを発ち、バイクで「いで湯っこ市場」に到着したのは朝9時半くらい。店頭の露店はひとまず置いといて施設内の売り物を物色。農産品がメインだが海産物や乳製品・加工品もあり。麺の売り場に並んでいる伊豆半島の観光地図が描かれた青いパッケージが、件の焼きそば麺だ。有名メーカーに混じって健闘している。

田中屋製麺所の焼きそば露店

建物内をぐるっと一回りしてから、改めて店頭の焼きそば屋台へ。田中屋製麺所の方々が、例の細麺を鉄板一面に広げコテで豪快に炒めていた。焼きそばと言ったらこの光景だよね。

田中屋製麺所 メニュー

メニューは焼きそばのみ。本来なら「長男」「次男」「三男」というサイズを指定できるのだが、訪問した日は200万人突破記念とやらで「三男」のみ、50円引きの200円で売られていた。百円玉2枚と引き換えに、焼きそばの詰まった樹脂製のパックを受け取る。出来たてで温かい。建物の壁沿いにあるベンチへ移動し、朝食としてさっそくいただいた。

焼きそば 200円

麺は前述の通り、極細の蒸し麺だ。具はキャベツのみ。トッピングは青のりと紅生姜。これで200円は安い。後から気付いたが30円追加であじ・さば削り節もトッピングできるらしい。あー、それ欲しかったなあ。

お値段以上のお得感

麺はゴワゴワしたコシがある。「伊豆の温泉/練り込み麺」とパッケージに書かれている通り、伊豆の温泉を生地に練り込んでいるらしい。その効果のほどはよく分からないが、歯応えが楽しい麺だ。自分が調理したときと同様に絡みやすいけど、ゆっくり引っ張ると案外スムーズに解れることが判明した。

特徴的な極細麺が美味しい

味付けは癖のないソースで、ほどよい塩梅。具や味付けがシンプルなので、麺の味わいが分かりやすい。美味しい焼きそばだが、注意点が一つ。麺が喉につまりやすいので、できれば事前に飲み物を用意しておくこと。自分は窒息しそうになり、だいだいサイダーを慌てて購入した。

だいだいサイダーもうまい

西伊豆ではイカスミを練り込んだ焼きそば麺を「海賊焼」として推している。東伊豆も負けずに頑張って欲しいなあ、なんて思ったり。田中屋製麺所の焼きそば直売は週末だけだが、麺そのものは例のパッケージで現地のスーパーなどにも置かれている。良かったら伊豆のお土産にどうぞ。

いで湯っこ市場

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茶房 枯山水 (静岡県駿東郡清水町)

前回、三島の細くてゴワゴワした麺の焼きそばを紹介したが、対照的な太麺を使った焼きそばも近くにある。沼津市と三島市に挟まれた駿東郡清水町、柿田川湧水群で知られる町の喫茶店、茶房・枯山水の焼きそばがそれだ。

駿東郡清水町 茶房 枯山水

訪れたのは9月上旬の日曜日。伊豆ツーリングの帰りに寄ってみた。店舗は広い駐車場の奥にある。入り口が正面ではなく右側にあるので、ちょっと分かりづらいかも。

清水町 茶房 枯山水

フロアは何やら複雑な造りで、ボックス席が多数あり。ランチタイムだったため、店内は地元のお客さんで賑わっていた。窓から見える庭は、屋号の通りちょっと枯山水っぽい。なかなか風流である。

茶房 枯山水 店内の様子

メニューを見ると食事が充実していて、喫茶店というよりもレストラン寄りだ。サーロインステーキなど売りにしている。そのメニューの筆頭が焼きそば(690円)だった。

茶房 枯山水 メニュー

下の方に写真が載っているフレンド焼きそばに一瞬「おっ?」となったが、ミートソースを掛けたりしているわけではなく、単に焼きそば2人前だった。焼きそばとお好み焼きのセットもあるけど、食べ歩きなので焼きそば単品にしておこう。

アイスコーヒー 410円

焼きそばと一緒にアイスコーヒー(410円)も注文。伝票に「ミヤ」「IC」と書かれていたが、「ミヤ」はミックス焼きそばの略かな。この季節にしては涼しい日だったが、冷たくて美味い。

焼きそば 690円

注文から10分余りで鉄板が運ばれてきた。麺はうどん並の太さの茹で麺だ。太いとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。具は豚肉、小エビ、イカ、キャベツ。ハムもひと切れ入っていた。青のりや紅生姜は無し。

うどん並の太さの茹で麺

味付けはなんとケチャップ味。ソースもたぶん混ぜているのだろうが、ケチャップの甘さが全面に出ている。モチモチの太麺と相まって、まるでナポリタンだ。麺の太さや味わいは、平塚の吉香に通じるものがあるなあ。小エビやイカも素朴な美味しさで良いアクセントになっていた。

小エビやイカも素朴な美味しさ

静岡でこういう太麺は珍しい。ご飯が欲しくなる系のコッテリした味付けなのも貴重だ。先週紹介した沼津の珈琲屋ぼあもそうだったけど、全国各地の喫茶店にはまだまだ面白い焼きそばが隠れてそうだな。

ちなみにこちらも先週紹介したお好み焼・さか井と同じく、沼津ご出身のRetty社・高橋さんに教えていただいた。貴重な情報、ありがとうございました!

枯山水

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一福黄金饅頭 (静岡県三島市)

あんこを小麦の生地で円筒形に包んで焼いたものを、あなたは何と呼ぶだろう? 今川焼、大判焼、太鼓焼、二重焼、回転焼。千葉の一部では甘太郎。静岡では黄金饅頭と呼ぶ人もいる。今回紹介する店もそのものズバリ、一福黄金饅頭という屋号の店だ。

伊豆箱根鉄道 三島広小路駅

一福黄金饅頭は伊豆箱根鉄道の三島広小路駅前にある。いや、正確には「あった」か。店名にもなっている黄金饅頭、そして独特の焼きそばが名物だったのだが、残念ながら2013年12月末に閉店してしまった。清水の「えんどう」や蒲原の「磯屋」と同様、この記事を記録として残して置きたい。

一福黄金饅頭(既に閉店)

一福黄金饅頭はタクシーの待合所に面する形で店を構えている。入店して右手が客席スペース。カウンター状の席が6つにテーブルが2卓。メニューは壁に貼られている。黄金饅頭と焼きそば、あとはソフトドリンクのみという品揃え。通常の焼きそばが280円という安さだ。

一福黄金饅頭 メニュー

私が初めて訪れたのは2011年の8月のこと。この時はデジカメのバッテリーが切れて、まともな写真が撮れなかった。スマホの写真を精一杯いじってみて、こんな感じ。確か肉入り焼きそばの並(330円)だったかな。

焼きそばの並 280円

麺はゴワゴワした角細蒸し麺。地元ではゴム焼きそば、略して「ゴム焼き」と呼ばれていて、見た目も食感もまさにゴム。丸勝食品と書かれた麺箱があったので、そこで製麺されたのだろう。歯応えはあるが富士宮とも異なる食感だ。その麺がとても印象的だった。

そして改めて訪れたのは2013年の4月中旬、土曜日の昼下がりのことだ。丁度ひと段落した頃合と見え、店主の老夫妻も厨房で焼きそばを食べていた。

黄金饅頭 80円

テーブルは家族連れで占められていたのでカウンターに腰掛ける。お冷やをいただいて、肉・玉子入り焼そば(370円)と黄金饅頭(80円)を注文。黄金饅頭はすぐに運ばれてきた。

皮は薄めで餡たっぷり

皮は薄めで餡たっぷり。すっきりした甘さで左党の自分でも問題なくいける。美味い。これで80円という値段はお得だな。そのうち厨房から炒める音が聞こえ、しばらくして奥さんが焼きそばを持ってきた。

肉・玉子入り焼そば 370円

麺は前述のゴムそば。肉は麺やキャベツとは別に焼かれていた。目玉焼きは黄身半熟で端カリカリ。自分好みである。その上に青海苔、脇に紅生姜。肉と玉子が無い状態なら、実にシンプルな焼きそばなのだろう。

ゴワゴワした角細蒸し麺、通称「ゴムそば」

件のゴムそばだが、深蒸し麺なのか色は茶色い。しかし味付けはごく薄めだ。卓上のウスターソースを適量掛けると丁度良い。麺の固さのせいか、食べてる最中喉に詰まりそうになった。落ち着いて完食。しみじみと美味しかった。

焼きそばを食べている間も店頭では次々と黄金饅頭の持ち帰り客が。三島は三島大社と鰻で有名だが、こういう個性的な焼きそばもあって面白い。廃業してしまったのがつくづく惜しまれる。どこかで密かに味を受け継いだ店があったりしないかなぁ。

一福黄金饅頭

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珈琲屋ぼあ 大岡店 (静岡県沼津市)

「ナポリタンは焼きそばか?」

私の答えは「イエス」。パスタも麺の1ジャンルだ。範囲が広くなりすぎるので当ブログでは扱わないようにしているが、しっかり炒めてあるナポリタンなら焼きそばの仲間と考えて良いだろう。ましてやソース味で炒めたスパゲティなんてのは、もう焼きそばそのものではあるまいか。

沼津市 珈琲屋ぼあ 大岡店

まさにそんな焼きそば風スパゲッティを提供してるのが、今回紹介する珈琲屋ぼあ。沼津市周辺で数店舗を展開している喫茶店だ。愛読しているブログ「全国いい味はまる味」のこの記事でその存在を知り、今年の2月中旬に大岡店を訪ねてみた。

珈琲屋ぼあ 大岡店 店内の様子

日曜の朝9時過ぎ。モーニング目当ての客で、駐車場は4割ほど埋まっていた。店内へ足を踏み入れれば、老舗の喫茶店に相応しいクラシカルな店舗。バイク用の防寒ジャケットを脱ぎ、手近な席へ着席した。

珈琲屋ぼあ 大岡店 食事メニュー

メニューを開くと、食事のページに目的の品を見つけた。焼そば風スパゲッティ(800円)。なんと「人気No.1」。オムライスやカレーライス、ナポリタンなど、強豪ひしめく中での大健闘だ。それとマイルドコーヒーを注文。コーヒーの定価は430円だが、食事とセットだと280円で多少お得になる。

焼そば風スパゲッティ 800円

焼そば風スパゲッティは10分ほどで運ばれてきた。麺はスパゲッティ。普段自分が食べているスパゲッティよりもやや細めかな。具は豚肉、キャベツ、玉ねぎ。目玉焼きに花鰹、刻み海苔がトッピングされ、脇に紅生姜が添えてある。

アルデンテなスパゲッティとソース味

食器はフォークを使用。ややスパイシーで酸味勝ちなウスターソースで味付けされている。麺がスパゲッティなことを除けば、オーソドックスなソース焼きそばそのものだ。スパゲッティのアルデンテなコシと、ソースの味わい、花鰹や刻み海苔の風味が期待以上にマッチしている。

目玉焼き、潰しちゃいます

目玉焼きの半熟の黄身を潰して絡めると、さらに味にコクが加わる。通常の中華麺とは異なる口当たり、食感が面白い。さすが一番人気、焼きそばとしても完成度が高いなあ。

焼きそばとしてレベル高いです

焼きそば風スパゲッティ、あるいはソース味のスパゲティといえば、実は私の出身地、掛川でも提供している喫茶店が複数ある。東京だと新宿・紀伊国屋地下の珈穂音(かぽね)という店で見かけたくらいだが、静岡だとそんなに珍しくもない印象だ。もしかしたら静岡県で人知れず普及しているメニューかも……なんてことを思ったり。

マイルドコーヒー 食事とセットだと280円

食後はマイルドコーヒーでまったりと余韻を楽しむ。ブレンドやアメリカンではなく「マイルドコーヒー」という呼び方なのも面白いなあ。珈琲屋ぼあは、他に三島店・沼津東名店の姉妹店もあるそうだ。のんびりくつろぎたい時にまた利用させていただこう。

ぼあ 大岡店

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お好み焼 さか井 (静岡県沼津市)

「静岡の焼きそばは富士宮だけじゃない」

そう自分で散々言っておきながら何だが、やはり富士宮の影響力は予想以上に広範囲だったりする。

今回紹介するお好み焼き・さか井は、仕事でお世話になっているRetty社の高橋さん(沼津のご出身)から教えていただいた店だ。先週、伊豆長岡の「あいざわ」という店を紹介したが、こちらでも昔からマルモ食品の麺を使っているそうだ。

沼津市 お好み焼 さか井

訪れたのは今年の8月下旬。土曜日の昼下がり。店舗は沼津の市街地中心部からちょっと離れた第一小学校の脇にある。ちなみに隣はお茶屋さん。

窓枠に小さな幟が飾られていました

「昔ながら」のという形容がピッタリの渋い外観。店頭脇の窓枠をみると、マルモ製麺の小さな幟が飾られていた。この地で富士宮の麺を使い続けてきたことへのこだわりを感じる。

お好み焼 さか井 店内の様子

店内は奥に長い造りで、女将さんが一人で切り盛りしている。客席は中央の通路を挟んでテーブルが3卓、小上がり2卓。先客は1組。お好み焼をつまみに昼ビールか。うーん、羨ましい。

お好み焼 さか井 メニュー

メニューはお好み焼きと焼きそばが中心。お好み焼きを「○○焼」「○○玉」と呼ぶ店は多いが、「○○天」と呼ぶのは珍しい。浅草の老舗「染太郎」以外で自分が知っているのは、東陽町の「いいもん倶楽部」や西富士宮の「ふみ」、那珂湊の「馬場先」など東日本に集中している。この辺も突っ込んで調べたら面白そうだな。

食材一式が盛り付けられたお皿

今回注文したのは五目焼きそば(750円)。食材一式が盛り付けられたお皿が運ばれてきた。自分で焼かなきゃならないのかと覚悟を決めたが、ちゃんと女将さんが焼いてくれるようだ。ほっ。

女将さんが眼の前で焼いてくれます

イカ、エビ、貝柱、豚肉スライス、モヤシ、青ネギを鉄板に順次広げ、バターで炒める。麺を加えて混ぜ炒め、しばらく置き。最後にキャベツを投入し、味の素・コショウ・ソースで味を調えた。

「鉄板で食べます? それともお皿に取ります?」
「あ、お皿でお願いします」

基本的にお好み焼きは鉄板で食べる派なのだが、富士宮系の麺で焦げ付くのもちょっとどうかと思い、今回は敢えて皿に盛っていただいた。卓上からだし粉と青のりを適量掛ける。紅生姜は見当たらず。

五目焼きそば 750円

麺は前述の通り、富士宮が誇るマルモ食品の蒸し麺だ。富士宮では麺を炒める際に水(富士山の伏流水)を加えるのが一般的だ。それによって麺の強いコシがいくらか和らぎ、ふっくら仕上がる。しかし、こちらでは水を加えずに炒めているので、独特の個性的なコシはそのままだ。麺の歯応えを最大限活かすための調理法なのだろう。

30年前からマルモ食品の麺を使用

「沼津で富士宮の麺って珍しいですね」

そう女将さんに訊いたところ、30年前からマルモ食品の麺を使っているとのこと。吉原までしか流通していないので、わざわざ宅急便で送ってもらっているそうだ。私は静岡でも西寄りの出身なので、富士宮の焼きそば文化を全く意識せずに育ってきた。しかし県東部ではその独特な焼きそばが着実に広まっていたことをこの店で実感できた。富士宮やきそば、侮りがたし!

具の方も漁港の町だけあって、魚介類が美味しかった。ソースはシンプルなウスターソースだが、かえって麺や具の長所をダイレクトに味わえる。バターの風味もマッチしているし、五目にして正解だった。いつかお好み焼きも食べてみたいな。

お好み焼さか井

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火の車 (静岡県沼津市)

静岡県東部の焼きそば特集。今週は沼津市内から3軒をご紹介します!


沼津の焼きそばと言えば「火の車」はまず外せまい。正確な創業時期を知らないのだが、恐らく創業60年前後。「経営状況、やばいの?」と思わず訊いちゃいそうな屋号だが、長年に渡って沼津っ子たちの胃袋を満たしてきた老舗の焼きそば専門店なのだ。

沼津市 焼きそば専門店 火の車

火の車は沼津市丸子町という市街地からほど近い住宅街にある。近年になって今の場所に移転したらしい。そのため店舗も新しめ。Woodyなカフェ風の造りだ。客席はテーブル6卓。ご家族で切り盛りされていて、持ち帰り注文も多い。

沼津市 火の車 店内の様子

火の車を私が初めて訪れたのは、2011年8月上旬のことだった。このブログを始める直前、静岡県内の主だった焼きそば店を押さえておこうと、あちこち食べながら周っていたうちの一軒だ。その店の紹介が、よもや6年以上経ってからとは……。

沼津市 火の車 メニュー

こちらの焼きそばはソース味の焼きそばと、和風焼きそばの2種類がある。あとはお好み焼きやおでんなど。

初回訪問時にいただいたのは、ソース味の焼きそばの並・イカ入り(450円)。麺はコシのある細い蒸し麺を使っていて、一本一本が短い。具はキャベツの千切りにイカ、揚げ玉。卓上から紅生姜も添えてみた。

焼きそば(並・イカ入り) 450円

味付けはやや酸味勝ちのソースで、あっさりめ。並盛だが、かなり量が多い。たしかこの日は何軒かはしごしていたのだが、予想以上に満腹になってしまった。箸ではなくフォークで食べる点も印象に残った。

和風焼そば(並) 500円

もう一方の和風焼きそばは木製の丼に盛り付けて提供される。器を傷つけないためか、武器はフォークではなく割り箸だ。写真は2015年の9月に食べた和風焼そば・並(500円)。ソース味より50円だけ高い。麺はソースと同じ細くて短い蒸し麺だ。具はキャベツと干しエビ。軽く醤油が掛かっていて、鰹節・海苔・青ネギがトッピングされている。

あっさり醤油風味にコショウが効いてます

あっさり醤油風味と麺の歯応え。コショウも効いていて後を引く美味しさだ。和風ということでシンプルな醤油味だろうと予想していたが、見事にハズレ。鰹節やエビ、油脂の旨味、海苔の風味など、とても多層的な味わいなのだ。そしてやはりボリューム満点。とくにキャベツの量が凄い。

和風焼きそば(大・ミックス) 800円+目玉焼き(50円)

この大盛りも食べたことがある。こちらは和風焼きそばの大・ミックス(800円)。目玉焼き(50円)もお願いしてみた。このボリュームが半端ない。この日はお腹ペコペコでお邪魔したのだが、食べても食べてもなかなか減らない。途中で心が折れそうになったことを覚えている。この和風味がまた目玉焼きと相性抜群なのだ。定番のソースも美味しかったが、和風も捨てがたいんだよなあ。

和風味が目玉焼きと相性抜群

沼津と言うとどうしても海鮮系のイメージが強い。しかし中央亭の餃子やここ火の車の焼きそばなど、地元の方々が愛してやまない非海鮮系の名店も実は多い。沼津を観光で何度も訪れているという人には、海鮮以外の沼津グルメもたまに味わってみて欲しい。きっと鮮魚以上に新鮮な食体験が得られることだろう。

火の車

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あいざわ (静岡県伊豆の国市)

富士市の焼きそばと言えば、思わぬところで思わぬ出会いがあった。今年2月のカラッと晴れた日曜日。バイクで伊豆の山中にある世界遺産、韮山反射炉を訪れたあとのことだ。

世界遺産 韮山反射炉

昼食を食べに向かったのは、伊豆長岡の住宅街にある「あいざわ」というお好み焼き屋だ。韮山・伊豆長岡から修善寺に掛けての狩野川流域は、ネットで調べても焼きそばの情報がほとんどない。この店も口コミはゼロ。でもお好み焼き屋だから焼きそばは提供しているはずと思って訪ねてみた。

伊豆長岡 お好み焼 あいざわ

このエリアにもお好み焼き屋は幾つかあるが、その中でもここ「あいざわ」を選んだのには理由がある。Googleのストリートマップで外観を確認したところ、暖簾の文字が「焼そば」だったのだ。お好み焼き屋なのにわざわざ焼きそばを暖簾に掲げるということは、何かしら特徴があるに違いない。

事前情報が全くないので、定休日も営業時間も分からないまま訪問。午前11時過ぎに通りがかった時には閉まっていた。「日曜は休みなのかなー」と30分くらい時間を潰して再訪したら今度はちゃんと営業していた。ほっとしつつ件の暖簾を潜る。

伊豆長岡 あいざわ 店内の様子

店内はこじんまりしていて、上品な感じの女将さんが一人で切り盛りしていた。客席は鉄板テーブル、4人掛けテーブル、2人掛けテーブルがそれぞれ1卓ずつの合計3卓。開店直後で先客なし。ついメニューの写真を撮り忘れてしまったが、お好み焼きと焼きそば、餃子が売り物だった。注文したのはミックス焼きそばの大、680円。

女将さんが調理しながら、キャベツの焼き加減や玉子の硬さ、ふりかけを掛けていいか、などを訊いてくる。「お好み屋なんだから、お客さんの好みを聞いた方がよい」と息子さんに言われたそうだ。なるほど、確かにお好みで焼くからお好み焼きなんだよな。

ミックス焼きそば(大) 680円

でてきた焼きそばは期待以上の盛り具合。蒸し麺と豚肉、イカ、キャベツを炒めて、脇には紅生姜を添え、目玉焼きと青海苔、だし粉がトッピングされている。静岡ではお馴染みのスタイルだ。

創業以来、富士宮の麺を愛用

麺を引っ張り出してみると、なんとなく見覚えがある。「あれ? これって富士宮の……?」と女将さんに確認してみると、ドンピシャだった。なんとマルモ食品の焼きそば麺を使っているそうだ。店内のマルモ食品の幟にもそこで気付いた。ここからさらに話が意外な展開に進んでゆく。

マルモ食品の幟もある

こちら「あいざわ」の女将さんは、富士市吉原の「さくらい焼きそば店」の実の妹さんとのこと。昭和32年創業のさくらい焼きそば店は富士宮系では最も古い焼きそば専門店だ。昭和61年にこちらのお店「あいざわ」を始める際、その「さくらい焼きそば店」を営むお姉さんから焼き方など教わったという。

それ以来、麺は富士宮のマルモ食品からわざわざ取り寄せているそうだ。B1グランプリで優勝してから、伊豆でも富士宮やきそばを売る店は現れたが、創業から32年間も使っているのは恐らくこちらだけだろう。

お姐さんから譲り受けた暖簾だったとは……

また、当ブログで2015年に「さくらい焼きそば店」を紹介した際、一年半ほど休業していたと書いた。その休業の際に暖簾を譲り受け、屋号の表記だけを差し替えて使っているとのこと。なるほど、それで焼きそばの暖簾だったのか! 数奇な出会いに、焼きそば好きとして一方的に感動してしまった。

富士市吉原の「さくらい焼きそば店」は、残念ながら復帰からしばらくして店を締めたそうだ。無くなってしまったのは寂しいが、その味がこうして伊豆長岡で受け継がれていると知って嬉しくなる。こういうのが地道に食べ歩く醍醐味なんだよなあ。

常連さんの血圧を考えて味付けはやや薄め

油はゴマ油を使っていて、まろやかなソース味。味付けをやや薄めにしているのは、年配になった常連さんの血圧を考えてのことらしい。ソースとマヨネーズを渡されたので、ソースを少し後がけしてみた。爽やかな酸味が、目玉焼きやだし粉に合う。歴史の重みを感じる、味わい深い焼きそばだ。

「昔とおんなじ味だって言われます」と女将さんが笑いながら仰った。良いものは変わらなくて良いと思う。富士と中伊豆を繋ぐ姉妹の焼きそば。今後も末永く同じ味でいて欲しい。

あいざわ

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【TV出演】11/3 ABC朝日放送『おはよう朝日です』

テレビ出演のお知らせです!11月3日、文化の日に大阪のABC朝日放送『おはよう朝日です』で焼きそばが特集されます。そちらにまたちょっとだけ協力させていただきました! 今回も顔写真とコメントが電波に乗るはずです。

ABC朝日放送『おはよう朝日です!』

【出演番組】おはよう朝日です@ABC朝日放送
【放映日時】 2017/11/3(金・文化の日) 6:15~8:00
【公式サイト】https://www.asahi.co.jp/ohaasa/

先日のMBS毎日放送『ちちんぷいぷい』といい、関西の焼きそば専門店ラッシュに大阪のメディアが注目しているんですねー。早朝の情報番組ですので、放送圏の方は早起きしてご覧くださいませ~。

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やきそば 小川商店 (静岡県富士市)

富士市の田子の浦の近くに小川商店という店がある。暖簾にも看板にも「やきそば」を掲げているから焼きそば専門店と捉えても問題ないだろう。女将さんの話によれば、創業は明治で今は4代目という老舗で、焼きそばは60年ちょっと前に3代目が始めたそうだ。

富士市 小川商店

小川商店を訪れたのは今年2月、平日の昼下がり。寒いが良く晴れた日で、実家へ帰省する途中に寄った。

JR東海道線の吉原駅に近いこの辺りは元吉原と呼ばれるエリアで、もともと東海道の吉原宿があった場所だ。吉原宿は江戸時代に2回津波で被災して移転し、もっと内陸の吉原本町と現在呼ばれている位置まで移動した。富士市の吉原という地名はちょっとややこしいのである。

小川商店 入り口

店内では駄菓子や食料品も扱っていて、焼きそばはその奥の飲食スペースでいただける。静岡は駄菓子屋文化が昔から定着しているが、こちらのお店もそのひとつのようだ。

小川商店 店内の様子

店舗はピカピカで歴史を感じさせない。建て替えて10年以上とのことだが、日頃から丁寧に掃除しているのだろう。

小川商店 メニュー

さてメニュー。焼きそば・焼きうどんとも小で400円から。トッピングは肉・いか・玉子が選べ、それぞれ50円増しという価格設定だ。そのトッピングが全て入ったミックスの大(650円)を注文した。しばらくして配膳。

ミックス焼きそば 大 650円

麺は中細の蒸し麺。具はキャベツ、豚肉、イカ。玉子は目玉焼きで乗ってきた。青海苔は最初から掛かっている。さらに、卓上に置かれていただし粉を適量自分で掛ける。うむ、完璧なビジュアルだ。

伊藤商店の麺を使用

麺にはほどよいコシがある。女将さんによると、地元の伊藤商店という製麺所から仕入れていているとのこと。同じ富士市でも、さくらい焼きそば店のように富士宮の麺を使う店もあるが、全ての店がそうとは限らないのだ。

そういえば富士市にはほかにも荒川製麺という製麺所がある。そこの麺を使っている練馬区桜台の「がらくた居酒屋・いっぽん」という店を以前紹介したが、地元の富士市にも愛用する店はきっとあるのだろう。

昔ながらの静岡風ソース焼きそば

味付けはもちろんソースで、昔からカゴメのウスターを使っているとのこと。まろやかな酸味が口の中に広がる。コクがあるので油はラードかと思ったが大豆油だそうだ。目玉焼きを潰して絡めるとさらにコクが増す。静岡ではごく一般的なスタイルともいうべき、昔ながらのソース焼きそばだが、めっちゃうまい。ボリュームも満足できた。

なぜかコカコーラ推し

東京や大阪で生麺を使う焼きそば専門店が増えてきて、自分もそういう店をメディアで紹介する機会が増えた。しかし、個人的にはこういう店がツボなんだよなあ。需要はあまりないかもしれないが、今後もこういうお店をガシガシ推していきたい。

小川商店

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