金龍
東海地方で食べ歩いた焼きそば特集。最後は名古屋を離れ岐阜市から。前回・前々回と硬い焼きそばが続いたので、締めは柔らかな中華系焼きそばをご紹介しよう。
岐阜市街の北側、岐阜城を頂く金華山。その脇を流れる長良川からほど近い住宅街に、金龍という中華屋がある。創業60年に及ぶという老舗で、安くてボリュームたっぷりと地元で評判の店だ。
3月中旬、土曜日の昼下がりに訪問。店舗は鄙びた感じの渋い雰囲気。客席はコの字カウンターが15人分ほどと、二人がけのテーブルが何卓か。中途半端な時間帯だったが先客が数組いた。ちょうど入れ違いで客が帰ったばかりの左手カウンターに腰掛ける。
メニューには街中華でおなじみの品々が並んでいる。しかし漢字表記が独特だ。例えば焼きそばは「揚州沙麺」。火偏の「炒」ではなく、なぜか「さんずい(氵)」の「沙」なのだ。店内に人気ランキングが貼り出されていて、焼きそばや両面焼きそばもランクインしていた。一番人気はヤキメシだが、焼きそばのファンも根強いようだ。
「焼きそば(揚州沙麺/800円)ください」
「はい、焼きそばね」
注文を受けた店主は年季の入った中華鍋をガス台にかざして、手際よく調理してゆく。建物こそ古びてはいるが、水回りやフードはちゃんと清潔に保たれていた。ご飯を炊飯器でなく、白木のおひつで保存している辺りに、この店のポリシーを感じる。
「はい、おまたせ」
はやっ! 出来上がるまでに3分程度しか掛かっていない。さすがの職人芸だ。
麺は細めの中華麺。具は豚肉、鶏肉、キャベツ、玉ねぎ、人参、タケノコ、キクラゲ。肉厚なしいたけも入っていた。そして見ての通り、かなりつゆだくなのだ。
味付けは塩ベースで、凾館の鳳蘭を思い出させる風味だ。麺と具を炒め煮しているため麺はかなり柔らかい。デンプン質が溶け出してスープにはトロミもついている。見た目以上に濃厚な味わいだ。
仕上げに白コショウをパッパッと掛けていて、それも良い塩梅に効いている。熱々な上にボリュームもあり、食べてる最中に汗だくになってしまった。清流・長良川のおかげなのか、お冷がまた美味しい。身体を冷やすために2度ほどお代わりしてしまった。
「ごちそうさま、美味しかったです」
「おおきにー」
会計を済ませて店を出る。個性的で満足度の高い一皿だった。それにしても他の焼きそばもどんな品なのか気になる。手打沙麺(特製焼きそば)、廣東焼麺(両面焼きそば)、揚麺(揚そば)……。店主はだいぶご年配のようだったが、いつかまた来れるよう末永く続いて欲しいなあ。
というわけで東海地方の焼きそば特集、いかかでしたでしょうか? 焼きそばのニューウェーブがこのエリアまで広がっていることを実感できる旅でした。まだまだ行ってみたい宿題店がありますので、そのうちまた行かねば。地元の皆さんもぜひ訪れてみてくださーい。
店舗情報 | TEL: 058-232-7247 住所: 岐阜県岐阜市長良桜井町1-15 営業時間: 11:00~14:00 17:00~21:00 定休日: 月曜日(祝日の場合は翌日に振り替え) |
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主なメニュー | 揚州沙麺(焼きそば) 800円 手打沙麺(特製焼きそば) 900円 廣東焼麺(両面焼きそば) 950円 揚麺(揚そば) 900円 |
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