揚子江菜館

2018年2月21日

1906年(明治39年)創業の揚子江菜館は神保町界隈で現存する最も古い中華料理店だ。冷やし中華の元祖として知っている人もいるだろう。こちらの創業者も維新號と同じく寧波出身。「神田中華組合」と「寧波同郷会」を創立し、初代会長に就任した。神保町周辺の華僑のリーダー的存在だったそうだ。

神保町 揚子江菜館

昨年8月末、日曜の15時過ぎに訪問。場所は神保町駅のA7出口からすぐ近く。すずらん通り沿いで餃子の老舗・スヰートポーヅの斜向かいに建つ細いビルが店舗だ。

創業明治三十九年 揚子江菜館

京劇の化粧をした派手なお面はこちらの登録商標だとか。入り口に掲げられた額の「創業明治三十九年」という墨痕に歴史の重みを感じる。

揚子江菜館 1Fの様子

一階はテーブル7卓。もちろん上の階もある。半分ほどの入りで一人客も二人いた。店内は適度な高級感で居心地も悪くない。壁には「天下第一味」の揮毫。チャイナドレスの小姐が置いた箸袋にも同じ文字が書かれていた。

「天下第一味」がキャッチコピー

さて、メニュー。焼きそばは『池波正太郎の大好物』上海式肉焼きそば(上海炒麺・1300円)と『栄養バランス満点』五目焼きそば(五色炒麺・1450円)の二種類があり、それぞれ軟らかい麺か硬い麺かを選べる。「上海”風”」ではなく「上海”式”」と名付けてある点も興味深い。(写真は店頭の看板で「上海焼きそば」という表記になっている)

焼きそばは2種類あり

「ご注文はお決まりですか?」
「上海式肉焼きそばの柔らかいのをください」

ちなみに池波正太郎はかなりの焼きそば好きで、ここ揚子江菜館の「上海式肉焼きそば」の他にも、銀座アスター、銀座楼蘭、有楽町・慶楽などあちこちで焼きそばを食べていたようだ。見習いたい。

卓上の調味料類

注文した品は7分ほどで配膳された。麺は低加水の極細麺。表面に焼き目が付いていてパリパリだ。その上に具が山盛りになってる。

上海式肉焼きそば(上海炒麺) 1300円

具は細切りの豚肉と豆と根を処理されたモヤシ、玉葱、木耳。肉絲炒麺の餡からトロミをなくしたような、中国本土や東南アジアでは見かけるが、日本では珍しいスタイルの焼きそばだ。

薄ら醤油系でシンプルな美味しさ

味付けは薄ら醤油系で、油脂の風味も相まったシンプルな美味しさ。案外ボリュームもある。酢を掛けても旨い。池波正太郎の味の好みが分かる気がする。

お会計の際に店員さんにちょっと質問してみた。

「硬い麺だと具にトロミが付くんですか? 」
「はい、上海と五目と二種類あって、硬い麺はトロミが付きます。柔らかい麺でもできますよ」
「そうですか、ありがとう」

今回の特集のために上海風焼きそばを十数軒食べ歩いたが、具と麺を混ぜ炒めていないのはこの店ぐらいだった。両面黄を意識したのだろうか。色々と興味深い。

続いては漢陽楼へ。

揚子江菜館

店舗情報TEL:03-3291-0218
住所:東京都千代田区神田神保町1-11-3
営業時間:11:30~22:00
定休日:無休
ホームページ
主なメニュー上海式肉焼きそば(上海炒麺) 1300円
五目焼きそば(五色炒麺) 1450円
元祖冷し中華(五色涼拌麺) 1510円