藤九郎
日本橋高島屋の裏手に「こんどう軒(近藤軒)」という中華屋があった。創業は1916年(大正5年)というからだいぶ古い。麺類や炒飯・丼物が主体の大衆的な店で、そのランチタイムのメニューに上海炒麺があったらしい。軟らかい焼きそばは上海炒麺、硬い焼きそばは肉糸炒麺と名付けて提供していたようだ。
近藤軒は2014年の3月末で閉店してしまったが、神田小川町に移転して『藤九郎』という屋号に代わり、その味を引き継いだ。上海炒麺と名乗ってはいないが「軟らかい焼きそば」もあると知って興味が沸いた。
1月上旬の平日、お昼時に訪問。場所は小川町駅のB5出口を出てすぐ、靖国通り沿いのビルの半地下にある。スタイリッシュなロゴの看板が格好いい。店内も明るく清潔で、いかにも今時のラーメン屋さんという雰囲気だ。
客席はカウンター5脚、 二人から三人がけのテーブルが7卓。ランチタイムなのでサラリーマンで大混雑。当然のように相席になった。混んでいるのにキビキビした笑顔の接客が好印象。
メニューはラーメン類が主体だ。周りも汁麺を食べている客が多い。焼きそばは餡かけタイプのようで軟・硬を選べる。隣にはソース焼きそばも載っていた。
「ご注文はお決まりですか?」
「柔らかい焼きそばを単品でください」
100円プラスで半チャーハンも付くが、今日はやめておこう。待つこと十分余りで配膳。四角い皿が印象的だ。
麺は縮れた太麺。焼き目が僅かに付いている。餡の具は豚肉、モヤシ、玉葱、木耳とシンプルな構成。彩り的にかいわれ大根がトッピングされ、脇にカラシが添えてある。
餡は銀餡で、タンメン的な塩ベースのスープに微塵切りにしたニンニクの風味が利かせてある。豚肉にはちゃんと片栗粉をまぶして炒めるなど、思っていたより丁寧な仕事だ。
シンプルだけど深い味わいの餡で、モチモチの麺にマッチして美味しい。ボリュームも充分で、半チャーハンを付けなくてもほぼ満腹になった。
会計の頃には店内もだいぶ空いてきたので、店員さんにちょっと質問してみた。
「このお店は日本橋にあったこんどう軒さんですよね?」
「はい、そうです!」
「焼きそばの味も昔のままなんですか?」
「麺なんかは変わりましたけど、ベースの味はそのままです」
なるほど、このタイプが上海炒麺として提供されていたと考えて間違いなさそうだ。どちらかといえば広東料理寄りの餡掛け焼きそばだが、こういう展開も中華料理らしくて面白い。機会があればラーメンも食べてみたいな。
5週に渡ってお送りした上海風焼きそば特集、いかがでしたでしょうか?
「上海風焼きそばは明治から昭和初期の神保町で生まれた」という私の仮説から始まって、都内や横浜中華街にある上海料理の老舗を紹介し、最後は例外的なかなり代わった上海焼きそばで締めてみました。興味を持たれた方はぜひ各店を訪れて、実際にご賞味くださいまし。
さて、随分と上海系の老舗中華料理店を取り上げましたが、来週からは中華の王道・広東系の老舗、それも比較的大衆寄りの店を中心に特集したいと思います。お楽しみに。
店舗情報 | TEL:03-3293-6377 住所:東京都千代田区神田小川町2-2-7 レインボービル 1F 営業時間:11:00~翌1:00(日:~14:00) 定休日:無休 → ホームページ |
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主なメニュー | やきそば(軟・硬) 800円 ソースやきそば 800円 ラーメン 700円 チャーハン 800円 |
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