ぴいぷる水上
富士宮焼きそば特集の4週目です。富士宮やきそば学会では麺や肉カスなど、「富士宮やきそば」の特徴・12箇条を掲げていますが、お店によってはその特徴から外れる店もあります。今週はそんな通好みのお店、3軒をご紹介します。
富士宮やきそば学会では市内の4つの製麺所(マルモ・叶屋・曽我めん・木下製麺所)の蒸し麺を公認している。だが中には違う麺を使っている店もある。JR富士宮駅から程近い喫茶店、ぴいぷる水上もその一つだ。
訪れたのは昨年9月中旬の平日、お昼時。富士宮駅の北口から通りを一本入って徒歩2~3分で店舗に着く。富士宮やきそばの幟が無ければ、外観はありがちな田舎の喫茶店だ。
入店すると70歳を超えたという女将さんが「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。フロアの右手に厨房とカウンター、壁際にテーブルが幾つか、そして中央にドーンと鉄板台が置かれている。壁にはとっぽい地元高校生たちの煤けた写真が多数。歴史を感じさせるレトロな喫茶店だ。
テーブルに腰掛けてメニューを確認。焼きそばとお好み焼きと飲み物、生ジュースが並んでいる。こちらのメニューは「富士宮焼きそば」という表記で、他店と同じ麺を使用している。
目的の品は壁に貼られていた。ぴいぷる特製麺焼きそば、これだ。
50年以上続く当店におけるぴいぷる「特製麺」とは、
店主が先代より受け継いだ製法により特別に加工した麺で、
富士宮で当店だけでしか味わえません。
(鍵括弧、句読点、改行は筆者が修正)
特製麺でも値段は普通の焼きそばと同じく450円から。それをミックス(700円)で注文した。女将さんが材料を厨房から運び、鉄板台で焼き始める。
「麺の写真を撮っていいですか?」
「はい、どーぞ(笑)」
聞けばこの麺は、生麺を自家で蒸したものらしい。一般的な富士宮の麺とは色からして全く違う。茶色い焼きそばを謳う石巻焼きそばの二度蒸し麺よりさらに濃い茶色だ。
焼きそばは注文から10分ほどで出来上がり。お皿に盛り付けてテーブルへ。
麺は前述の通りぴいぷる特製の自家蒸し麺。以前の業者がなくなったので、今はマルモ食品から生麺を仕入れているらしい。具は肉カス・エビ・イカ・豚肉・キャベツ・青ネギ。削り粉に青海苔、紅生姜のトッピング。
特製麺は細めで軟らかく、ふんわりと軽い口当たりだ。甘めのソースにだし粉の旨味が効いて優しい味わい。キャベツたっぷりで歯応えと甘味も増している。ミックスの具もアクセントになっていて美味しい。
食べながら女将さんから色々と話を伺う。特製麺は母から伝えられた製法だが、あまりに手間が掛かるため作る量もごく限られている。もう年で混雑するのも困るし、自分の代で終えるつもりだという。富士宮やきそばの流行の陰で、50年も続いた味が廃れるのは何とも寂しいが、こればっかりは如何ともし難い。
店を出てしばらくすると焼きそばの幟を下げた。あれが最後の一玉だったのか、あるいは具が何か切れたのか。数が本当に限られているので興味のある方は早めの時間にどうぞ。
店舗情報 | TEL:0544-24-9161 住所:静岡県富士宮市大宮町30-7 営業時間:10:30~17:00 定休日:水曜 |
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主なメニュー | ぴいぷる特製麺焼きそば 450円 富士宮焼きそば 450円 玉子入り 550円 イカ入り 550円 肉入り 550円 エビ入り 550円 ミックス 700円 大盛り 650円 お好み焼 500円~ |
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