山本まんぼ
関西滞在最後の夜に訪れたのは、昭和25年(1950年)創業の老舗お好み焼き店、山本まんぼ。場所は京都駅北口から東へ10分ほど歩いた辺り。京都を代表するラーメン店、「新福菜館」「第一旭」の両店が並ぶ塩小路高倉、通称・たかばしの脇にある。
店に着いたのは19時半ごろ。左手奥の鉄板台で調理している若いお兄さんが「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。その鉄板を囲むようコの字型にベンチが設えてある。他にもテーブルはあるが、先客はその台のベンチに集まっていて、ほぼ埋まっていた。「すみません、そこお願いします」とお兄さんが声を掛け、どうにか詰めてもらって着席できた。
さて、メニュー。この店の名物は「まんぼ焼」と呼ばれるお好み焼きだ。以前紹介した三十三間堂裏手のお好み焼・吉野もそうだが、京都の古いお好み屋さんでは「ベタ焼」と呼ばれる広島のような薄焼き・重ね焼きのスタイルが多い。ここの「まんぼ焼」も同じく「ベタ焼」タイプで、好みでいろいろトッピングを追加できる。
ちなみに店のオススメはまんぼ焼スペシャル。そば玉に肉・イカ・ホルモン・油かす・玉子・ネギなど、トッピング全部入りで1020円というお得なメニューなのだ。ということで、そのまんぼ焼スペシャル(1020円)と、チューハイドライ生ビール泡のせ(400円)を注文した。
「チューハイドライ生ビール泡のせ」はチューハイに生ビールの泡だけを乗せたという、この店オリジナルのドリンクだ。普通のチューハイより50円高い。8月の京都を一日歩いてカラカラになった胃袋を、炭酸とアルコールが刺激する。あー、冷たくてうめー。しみるー。
飲みながら、眼の前で調理される様子を観察する。肉を鉄板に乗せ平らに伸ばす。それが中心になるよう生地を薄く広げる。紅生姜、タクワン、削り粉、イカ、葱をパラリ。その脇でキャベツと麺を炒め、ソースなどで味付けする。
出来上がった焼きそばを生地に乗せる。油カスを乗せ、ホルモンを焼いて乗せ。生地を垂らしてひっくり返し。玉子の焼き加減を訊かれ「半熟」をリクエスト。鉄板に玉子を落とし、黄身を崩して本体を乗せる。タイミングを見計らってひっくり返し。
今度はソースの味加減を訊かれ「甘辛」を所望。「ちょっと薄めにしときますね」と断りつつ刷毛でソースを塗り、削り粉と青海苔、長ネギをトッピングして完成! ついでにチューハイ泡のせをお代わりした。
麺は細麺。ラードでパリパリに焼かれている。ソースはかなりスパイシー。甘辛といいつつ、辛さが際立っている。油かすやホルモンの味わいもいいが、意外だったのがタクワン。食感・風味の両面で実に良い仕事をしていた。浜松の遠州焼きや熊本のちょぼ焼でもタクワンが使われていたけど、ポテンシャル高いなあ。
それにしても具沢山で贅沢なお好み焼きだ。大阪風の混ぜ焼に対して、京都でこういう「ベタ焼」が主流だったのは一銭洋食の名残なのかな。「まんぼ焼」という楽し気な名前なのも面白いなあ。
コテでまんぼ焼をいただきながら、店のお兄さんや隣に腰掛けていた常連さんと話をする。普段は大将がいるのだがお盆で不在のため、今日はお兄さん一人で切り盛りしているそうだ。そのうち酔いも手伝って、バイク談義で盛りあがってしまった。
ちょっと飲み足りなくて、京風だし巻(550円)とチューハイ泡のせをさらに追加。玉子をボウルに割り入れ出汁で溶き、横長になるように鉄板に広げる。両手に持ったコテで端の方から器用に巻いてゆく。巻き終わったのを一口大に切り分けて出来上がり。
「紅生姜いります?」
「お願いします」
お出汁の効いただし巻玉子。ふんわりした口当たりで優しい味わいだ。あー、落ち着くなあ、この玉子焼き。この日は大将が不在のため特別に8時過ぎでラストオーダー。チューハイ泡のせ3杯とまんぼ焼スペシャル、京風だし巻。40分余りの滞在で飲み代は2770円だった。ごちそうさまでした。
店を出て「新福菜館」「第一旭の行列を尻目に京都駅まで歩き、バスでまっすぐホテルに戻った。翌日は早朝に京都を発って東京へ。楽しい旅も終わってしまった。まだまだ関西には行きたい店があるのだが、次はいつ行けるかなぁ……
店舗情報 | TEL:075-341-8050 住所:京都府京都市下京区高倉通塩小路下ル東側 市営住宅内 営業時間:10:00~22:00 定休日:水曜 |
---|---|
主なメニュー | まんぼ焼スペシャル 1020円 まんぼ焼 大 680円 小 580円 お好み焼 550円 焼きそば 580円 京風だし巻 550円 生ビール 500円 チューハイドライ生ビール泡のせ 400円 |
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません