おそうざいと煎餅もんじゃ さとう
代々木八幡に「お惣菜と煎餅もんじゃ さとう」という、もんじゃ焼きの店がある。といっても、ただのもんじゃではない。
この店の魅力は、マッキー牧元さんのこの記事に詳しい。ポルトガル料理店やタイ料理店を複数経営するシェフ、佐藤幸二氏が手がける店なのだそうだ。2017年2月のオープン以来、周りの何人かから評判の声が聞こえ、ぜひ行くべきと進められてきた。
ようやく訪問できたのが7月上旬、某日の夜。コナモン好きの仲間と二人で予約して訪れた。店頭ではお惣菜を販売し、その脇の細い通路を抜けると、こじんまりした座敷になっている。天板に鉄板を設えた座卓が3卓。これがこの店の客席だ。
こちらがレギュラーメニュー。価格帯は通常のもんじゃ屋と比べるとかなり高く感じるが、場所と食材を考えれば妥当な価格ともいえる。とりあえずサッポロラガー(800円)、お惣菜3種盛り(1200円)、根菜のカクテキをお願いした。
お惣菜は唐揚げやらポテサラやら、一見みなれた品だが、それぞれ一工夫がなされている。それらをつまみつつビールからレモンサワーへ。レモンサワーは高いの(800円)と安いの(700円)がある。高いほうが甘くなくて自分好みだった。
そして肝心のもんじゃだ。レギュラーメニューには海鮮もんじゃやチーズもんじゃなど、比較的スタンダードな品が載っている。その中から選んだのは発酵羊挽肉もんじゃ(1800円)。発酵羊挽肉? なにそれ、なにそれ?
運ばれてきたカップには千切りのキャベツと赤キャベツが入っており、赤エビや解した干し魚などが出汁に浸っている。発酵させた羊の挽肉というのは、タイ料理のネームのように米に漬けて発酵させたものらしい。さらに干したパクチーほかハーブ・スパイスが多種使われている。らしい。
この店のもんじゃは、店員さんがすべて調理してくれる。月島と違って土手を作らないスタイルだ。出汁を残して固形物を鉄板に落として広げたところに、出汁を上から注いでゆく。
キャベツなどをへらでカンカンっと刻みながら材料を混ぜ、
鉄板の片側に具材を寄せ、開けた部分は小手ではぎ取って煎餅にする。具材にソースをぐるぐるっと回し掛けて出来上がり。
まずはパリッとした煎餅を箸でつまんでいただいた。香ばしく、クリスピーな食感が楽しい。
そしてもんじゃは「剥がし」でいただく。先端で一口分を取り分け、鉄板で表面を適度にパリッとさせてパクリ。ふーむ、美味い。もんじゃなのは確かだが、羊肉とスパイス・ハーブの味わいが斬新だ。エビや出汁の風味と羊が喧嘩せずに調和している。
日替わりもんじゃは、さらにカオスだ。「それいけ!アンパンマンもんじゃ」「アゼルバイジャンニラもんじゃ」「マカンボルディエルバターきのこもんじゃ」などなど、どれひとつとして味の想像がつかない。スタッフによるとオーナーが新しいモノに挑戦したがりで、人気のあるメニューから消えていくそうだ。引き出しがすごいんだな。
注文したのは「フィノキオナソーセージ筍もんじゃ(1800円)」。「もんじゃのメニューは焼きそばに変更できる」とメニューに記載してあるので、これは焼きそばでお願いした。なお、具や味付けによって合う・合わないがあるので、なんでも焼きそばにできるわけではないらしい。
まずは熱した鉄板に麺を広げてじっくり焼く。黄色い角ばった蒸し麺だ。ん……? この蒸し麺はもしや?
「これって富士宮の麺ですか?」
「あ、そうです」
「やっぱり! マルモの!?」
「はい、そうです、よくご存じですね」
「あはは、静岡出身なものでw」
まさかここで富士宮・マルモ食品の麺に出会うとは思わなかった。どんな焼きそばに仕上がるのか、期待が高まる。
焼いた麺を軽く解して広げ、干しエビやキャベツなどの具を乗せ、かつおだしを回しかける。しばらく蒸らしてから混ぜ炒め。ソースで味付けし、しっかり火が通ったところで麺の真ん中に卵を落とし、さらに混ぜる。脇で焼いていた二枚のチーズを乗せ、仕上げにダシ粉を振りかけた。
フィノキオナ(finocchiona)というのは、トスカーナのサラミソーセージらしい。「筍」は使っているチーズを指していたような……名前を失念したが確かイタリアの何とかいうチーズ。良く分からないが、とにかくうまい。麺はマルモでダシ粉が掛かってて具には肉カスも入っているが、富士宮からは遠く離れている。なんかもう発想が凄い。
もう一つもんじゃを食べる予定だったが、先の品で圧倒されたため焼きそばに切り替えた。店員さんのアドバイスもあって、選んだのは「揚げスズキ梅干しタイもんじゃ(1900円)」の焼きそば版だ。
使われているのは一夜干しにして素揚げしたスズキに紀州梅。タイ料理で使うフライドオニオンや揚げた米、各種ハーブやスパイスなどなど。どうしたらこんな組み合わせが思いつくのだろう。
マルモの麺を広げてじっくり焼くなどの手順は前の品とほぼ同じ。スズキは鉄板で温めたあと一口大に切り分けいた。仕上げにパクチーなどタイ風のトッピングをほどこし、レモンを絞る。今度はダシ粉を掛けないんだな。
スズキが白身魚ということもあり、ブラジルで食べた干し鱈のコロッケを思い出す味わいだ。ポルトガル料理では干し鱈(バカリャウ/Bacalhau)を食材に使うが、そこからの発想かなー。梅干しとレモンの酸味がさわやか。揚げたコメのクリスピーなアクセント。この焼きそばも複雑な味わいで大いに驚かされた。
サワー類も何度かお代わりして、お会計は2人で1万数千円。かつてない食体験を得られて大満足だった。食にアグレッシブな人を誘って再訪したいなー。今度はどんな日替わりメニューに出会えるのだろう?
店舗情報 | 住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-9-22 守友ビル 1F 営業時間: 12:00〜14:30, 17:00〜22:15 定休日: 月曜 → ホームページ |
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主なメニュー | 海鮮もんじゃ 1800円 チーズもんじゃ 1200円 たらこもんじゃ 1200円 レモンじゃ 1200円 牛すじもんじゃ 1800円 深町(蛤)もんじゃ 1800円 野菜トマトもんじゃ 1200円 発酵羊挽肉もんじゃ 1800円 日替わりもんじゃ 1800円〜 生レモンサワー 700円 高いレモンサワー 800円 |
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