会楽園
※長崎皿うどんに興味のある方は、長文コラム『長崎皿うどんの歴史的考察』もぜひご一読ください。
長崎市の新地はもともと江戸時代に海を埋め立てた倉庫街だった。日本が開国した後に外国人居留地となり、唐人屋敷に済んでいた福建出身の華僑が海岸に近い新地へ降りて住み始めた。そして長崎の新地中華街が形成される。横浜や神戸に比べるとこじんまりした区画だが、歴史がギュッと詰まっている。
新地中華街の北側には銅座川が流れている。川に掛かる橋は広場になっていて玄武門に面している。その玄武門を潜ったすぐ左手の大きなビルが今回紹介する会楽園だ。昭和2年(1927年)創業なだけあってファサードも重厚な雰囲気。「會樂園」という旧字の扁額に格式を感じる。
会楽園を訪れたのは11月中旬、日曜のお昼時。新地中華街は観光客でごった返し、どの中華料理店も賑わっていた。入店して「1人です」と告げると、すぐにテーブルへと案内してくれた。ウェイトレスさんたちはみな、メイド服姿だ。かわいい。
着席してメニューを確認。皿うどんは細麺と太麺があり、細麺はあんかけ、太麺はあんなしと書かれている。下に書かれた鶏皿うどんは魚介の代わりに鶏肉を使った皿うどんだとか。これを好むお客さんもいるらしい。
皿うどんとは別に炒麺もある。こちらはいわゆる五目あんかけ焼きそばだ。お店の方に確認したところ中華麺を焦げるくらいに焼き、五目は醤油味、海老は塩味。時々皿うどんと間違えるお客さんもいるそうだ。
注文したのは細麺皿うどん(850円)、蝦吐司(シャートース/1個150円)を2個。それとガラナシャンパン(400円)。ガラナはすぐに運ばれてきた。ガラナといえば北海道の印象が強いが、長崎でも飲まれているらしい。名前の通り容器はがシャンパン風。北海道と違って味はどこまでも甘く、「こどもビール」を思い出した。
「蝦吐司(シャートース)」は「「蝦多士(ハトシ)」とも呼ばれる。「吐司」「多士」は中国語で「トースト」の音訳。エビのペーストでパンで挟んで揚げた料理で、江戸時代から卓袱料理の一品として食べられてきた。サクッとしたはごたえでエビの旨味が濃厚だ。パン生地に油が滲みてるのがちと重い。こちらでは一つから頼めるのが、一人旅には嬉しい。
そしておまちかねの皿うどん。メイドさんが山盛りの皿をテーブルに置き、「皿うどん用ソースを掛けてお召し上がりください」と告げて去ってゆく。
麺はパリパリに揚げられた極細麺。見た限りでは四海楼より細そうだ。餡の具はキャベツ・モヤシ・竹輪・豚肉・紅白はんぺん・キクラゲ・アサリ・イカ。味付けは甘い。旨味より甘さが際立つ。会楽園二代目・林照雄氏のインタビューによると以前は更に甘く、いまの三倍の量の砂糖を入れていたそうだ。ヒィー。
皿うどん専用と告げられたウスターソースを掛けると甘さが顔を引っ込め、全体のバランスがちょうど良くなる。なるほど、これはウマい。美有天のあっさりした味わいに比べるとコクがある。同じインタビューによれば、他の料理には鶏ガラ100%のスープを使うが、ちゃんぽんと皿うどんにはトンコツスープ30%と鶏ガラスープ70%をブレンドさせた専用スープを使うそうだ。別のサイトでは次のようにも述べられている。
スープの黄金比率として定着した「鶏がらスープ7・豚骨スープ3」の配合をはじめて編み出したのが「会楽園」です。
餡の粘度が高めで、最後までパリパリの麺を楽しめた。ガラナ・蝦吐司含めてお会計は1550円。太麺の餡なしもどんな品か興味がある。再訪したらそちらをいただいてみたいなあ。
ところで長崎滞在中に県立図書館で興味深い資料を見つけた。
これは大正15(1926年)年1月1日の長崎新聞に掲載されていた広告だ。「長崎市大徳寺ノ下 支那料理 會樂園(会楽園)」となっている。元日の広告なので大正14年には営業していたはずだから、会楽園は昭和2年ではなく大正14年(1925年)以前に創業していた可能性が高いのではないかと思う。誰か関係者に伝えて欲しい。
店舗情報 | TEL: 095-822-4261 住所: 長崎県長崎市新地町10-16 営業時間: 11:00~15:30 17:00~21:00 定休日: 不定休 → ホームページ |
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主なメニュー | ちゃんぽん 850円 特製ちゃんぽん 1200円 皿うどん(細麺・太麺) 850円 特製皿うどん(細麺・太麺) 1200円 蝦吐司(シャートース) 1個 150円 ガラナシャンパン 400円 |
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