グランド小池商店
田園調布駅から銀杏並木を南西に歩く。アップダウンの多い高級住宅街を抜けると多摩川、その向こうに川崎市街、多摩丘陵、富士山が見えてきた。河川敷のグラウンドは読売ジャイアンツが長年使用していたが1998年に契約終了。以後、一般市民も利用できる野球場として大田区が管理している。
さて、そのグラウンドから堤防を挟んだ向かい側に「グランド小池商店」というお店がある。商っているのはおでんと焼きそば、あとは飲み物くらいの個人商店なのだが、歴代の巨人軍選手が頻繁に利用してきた。店内には選手から寄贈されたグッズが並べられ、ファンの間でも名前の知れているお店だそうだ。
訪れたのは2012年1月下旬の昼過ぎ。引き戸を開けると「いらっしゃいませ」の声。店主の女性がテーブルのひとつで常連らしきおばちゃんとくつろいでいた。テーブル席が5卓ほどあるが他に客は居ない。
「寒いですねー」と言いながら隣のテーブルに腰掛けてメニューを確認し、おでん(420円)と缶ビール(320円)を注文。やはり店内で目につくのは巨人関連のグッズとサイン色紙だ。
「うわぁ……話に聞いてはいましたが、すごいですね」
驚嘆の声を上げると、おでんを肴に焼酎のお湯割りを呑んでた常連のおばちゃんが話しかけてきた。
「あら? ここは初めて?」
「ええ、野球はあまり詳しくないんですけどね。それにしても凄い」
「私は20年前くらいから来てるのよー」
「20年前っていうと原さんが現役の頃ですね。その頃なら少し知ってます」
「壁にある写真、その巨人がここから去る時の。私が撮ったのよー」
「へー!」
話してる間におでんを盛った皿が運ばれてきた。
ビールはスーパードライ、おでんは大根、昆布、玉子に練り物ひとつ。練り物は餃子巻きだ。関東ではあまり見かけないおでん種である。どれも熱々で味が良く滲みている。じんわりと体の中から温まってゆく。
「(店主の女性を指して)この人のお母さんが亡くなった時は通夜に長嶋さんもいらして……」
「あー、ニュースかなんかで見たような……」
おでんを食べ終わって追加で焼きそば(380円)を注文。手持ち無沙汰でなんとなく立ち上がって店内を見学。左手奥に長嶋氏の現役時代の写真や往年の名選手たちのバットなどが飾られている。王貞治のバットなんて、野球音痴の自分でも貴重だろうと分かる。
店主「良かったらそちらをバックにお写真を撮りましょうか?」
私「え? あ、いえ、いいですいいです!」
常連さん「遠慮すること無いわよ、せっかくだから」
私「はぁ、まぁそれじゃあ」
店主「はい、チーズ」
そんなやり取りの間に焼きそばも出来上がった。
麺は細めの蒸し麺で柔らかさは普通。具はキャベツのざく切り。酸味の効いたソースで味付けされて、青海苔と紅生姜がトッピングされている。東京のオーソドックスな焼きそばで素朴な味わいの美味しさだ。一時代を築いた名選手たちも、この焼きそばを食べたことだろう。
食べ終わってお会計は1120円。店を出て多摩川の河川敷を少し散歩してみた。此岸の高級住宅街と対岸のブルーシート群の対比が切ない。行く川の流れは絶えずして、か。
店舗情報 | TEL:03-3721-3233 住所:東京都大田区田園調布4-46-10 営業時間:10:00~18:00 定休日:月曜、第1・3火曜 |
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主なメニュー | 焼きそば 380円 おでん 420円 缶ビール320円 |
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